第3話
「この世界の外には、他にも数多の世界が存在しています。それらを監視、場合によっては一目につかないように手を加え平穏を保つ事が私達の仕事となります」
とても信じられないような内容。たが既にあり得ない事が起きている最中、信じない訳にはいかないのだろう。理解が追いつかない頭で彼はぼんやりそう思った。
「例えば……そうですね。先程平穏を保つと言いましたが、居場所を無くした者たちを私たちの世界に移動させることも仕事内容となります。
ですので、今虐げられている魔族達を集め、避難させる事も可能でしょう」
「本当か!?もしそれが本当なら……」
どんな条件を飲んででも魔族達を救いたい。人間達は自分がいなくなれば自然と平和に暮らして行けるだろう。そう考えた彼は、一も二もなく答える。
「その仕事とやらを引き受ける。だから、今も辛い目に遭っている魔族達を救ってくれ!」
「……貴方ならそう言うと思っていましたよ」
しかしそこで、笑みを崩し無表情になる。
「ですが良いのですか?私は半永久的に、と言いました。それは不老不死になり、誰にも感謝されず、永遠に世界のために尽くす、と言う事です。
場合によっては今のように人間や魔族、亜人達から敵視される事もあるでしょう。
それでも本当に、良いのですか?」
確かめるように何度も念を押す。だが覚悟は決まっていた。
「俺は……平和を守りたい。この思いは変わらない。俺の身一つで魔族達が助かって、尚且つ他の世界の平和も守れるなら……それは願ってもない事だ」
「……いい答えです。やはり私の目に狂いはなかった」
男は立ち上がり、パチンと手をならす。次の瞬間、空間に人間代の真っ黒い穴と彼そっくりの死体が現れた。
「この死体は?」
「人間達はわざわざ裏切り者を滅す為にここに来たのに死体がないのはおかしいでしょう。その為のカモフラージュです」
「じゃあ、この穴は?」
「この穴ですか。これはポータル。世界間を行き来する為の魔法……と考えて下されば良いでしょう。
厳密には違うのですが、それは仕事の研修の際に」
男はポータルの手前まで進み、手招く。そして微笑みと共に口を開いた。
「私達の同類となれば話は別です。
先程は大変失礼致しました。私はアスト・リンガーストン。貴方の名前は?」
その問いに彼は────勇者と呼ばれ、今は数多の世界の管理者になろうとしている彼は、答えた。
「ジコウ。ジコウ・アルスカルだ」
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