第23話「変わりつつある世界」

「奴らは城のところでおかしな装置を組み立てていたんだが、その装置が起動すると瞬く間に雲が現れ始めたんだ」

「何だその無駄な技術力」

 そのような腕前があるのなら他のことですればいいのにと思ってしまった。


「今はのんびりとしている場合じゃないね」

「なんだよ、せっかく満喫できると思ったのによ」

 昔とあまり変わらなくて、全く同じ人生を歩んでいるんじゃないかと感じてしまう。


 だが徐々に明るさが消えていってしまうのは農業とかをしようにも日光語りなさすぎて植物が育たない。


「だが俺にはどうしようもねえぞ、ハルトはなんか策を持っているのか?」

「とにかく彼女の帰りを待とうじゃないか」

 つまり彼女…ヒメナが帰ってくるのを待たなければいけないのだ、それまでは自分たちでは何もできないと。


「だったら少しでも荷が降りるように他のことでもやればいいんじゃねえか?」

「仕方がないさ、僕達はあくまでも一般人なのだからね」

 ここでそのような障害が生じるとは思っても居なかった。


「なんかねえのかあ」

 少し考え事をしていると後ろの方からガサガサという音がした。


「なんだ同じ世界に来てたのか」

「誰だ!………って須江さんか、まさかあんたもこんなところに居たとはな」

 同じ場所と言う割には森の奥深いところから出てきたが、辺鄙へんぴな場所で生活でもしていたのだろうか。


「お前にこの前見せたこの子が、空間を移動できるような力を持ってるみたいでよ」

「神様かなにかか!?どういうことだよ」

 どんな領域に達したらそんな魔法を習得できるのだろうか。


「アナタから…瘴気が出てる気がする」

「ああ、これのことか?」

 とりあえず個人的に扱いやすい武器を召喚した。


「へえ、一つでも召喚するとそのようなオーラをまとうんだね」

「その特殊な形状の武器は全部で何種類あるの?」

 一応彼が使っていた武器の本数は十三本あったと言うことを説明した。


「瘴気が出ているとか言いながら普通に近づくのはおかしいんじゃないか?」

「それ俺も言おうと思ってた」

 興味津々のようでじーっと見つめられていたが、何を考えているのかがわからなくて怖い。


「まあいいわ、そしてここの世界は本当におかしい」

「カイトちょっといいかい?その男の人はだれなんだい?」

 ずっと話について来れていない人が一人だけいた。


「ああ紹介するよ、この人は須江さん。俺の親友なんだ」

「初めまして金髪のお方、俺は須江ノブユキって言います」

 ここまで敬語でペラペラと喋っている姿を見るのも久しぶりだなあと懐かしんでしまっている。


「さてと僕も仲間を呼ばないとね、ほら隠れてないで出てくるんだ」

「キミが警戒しとけっていうから隠れてたのにその言い方はないんじゃないか?」

 他の三人も草むらからスッと飛び出てきた。


「ふうむそれにしても困ったもんだな、こんなに大勢いるなら俺はいなくてもいいんじゃないのか?」

「これから大変な作戦を実行するというのに一人でも欠けたらかなりしんどいんだよ?」

 その言われ方をすると抜けようにも抜けれない。


「じゃあ僕の今さっき思いついた事を説明するよ」

 まずは活動拠点場の確保をするためにある程度の街の占領を外さなくてはならない、そこには最低でも二人は必要らしく、活動拠点にするための場所が一番敵兵が多いようだ。


「なるほどな、そら確かに大掛かりなことだな」

「俺達もできる範囲でやってみるよ、そういえばこの世界にも魔法…みたいなのはあるん?」

 魔法みたいなものというかそもそも魔法そのものが存在している。


「ならみんなの役に立てそうだ」

「よし、カイトと須江君とお嬢ちゃんに任せよう」

 あっさりと決められてしまったが別に反対とかそういうことはないので、そのまま次の話へと移った。


「他のことといえば…監視だね、どういった動きをしてくるかが全く予測がつかないからね」

「その分野なら私達は得意だもんね」

 得意不得意をお互いで補っていくという作戦となっている。


「須江さんとそこのお嬢さん、一緒に行こうか」

「言うて俺らはサポートぐらいしかできんがな、一応一瞬隙をついて攻撃することも可能だけども」

 一瞬隙をついてってだけでも十分な気がしてしょうがない。


「俺が最前線に立てばいいんだな」

「そうなる、でもアナタがどれ程までなら耐久できるのか気になる」

 まともに戦える人間が一人しか居ない時点でその人の体力が尽きたら終わりなのだ。


「できるだけ頑張ってみるしかねえなこりゃ」

 意外と耐久戦とかはいける方ではあるが、相手が全員近接攻撃のみの想定ではある。


「というか門の外にも大勢いるのかよ」

「それだけ警戒心が強いってことだろう、少しだけ時間を稼ごう!!」

 そう言うと辺りの時間が止まったように見えた。


「ふっ、そういうことか。その数秒でまとめて倒す!」

 時間を稼いでくれたおかげで誰にも見つかることなく門の外に居た敵兵全員を殺すことに成功した。


「どうせここまでは序の口なんだろうな、ここを入ったらアホみたいに出てきそうだな」

「案外中は普通にいつも通りの光景が広がってるかもしれないよ?」

 それだととてもありがたいのだが、上手い話などあるわけがない。


 門の扉を開け、辺りを見渡したが色々な建物から火が出ており、住民たちも戦火に巻き込まれ怪我をしていた。


「最悪な光景だな、マジで見たくねえ」

「これは治療が大変…」

 さすがなんでも魔法が使えるだけあって回復魔法も完璧に使用できるらしい。


「し…シモヤマさん…よかった…」

「お前は…カリンか!ひどい怪我じゃねえか、今すぐ治療を…」

 だがカリンはもうすでに手遅れだということを察してか治療を拒んだ。


「もういいんです…それに…他の人も苦しんでいます…その人…たちを…優先…」

「おい!目を開けろ!!それにまだ俺はお前にありがとうすら言えてねえ…」

 楽しい生活を送らせてくれたカリンという少女には感謝してもしきれない。


「ああっそんな…バカな!!」

 まだまだ若い子の命がここでなくなってしまうなどあってはならないことだ、そのようなことをした奴らは決して許してはいけない。


「しばらくそっとしておくか」

「いや…もう大丈夫だ。この俺が直々に一晩でアスパル軍を消し炭にしてやる」

 自分の治療よりも他者の治療を優先しようとした彼女の思いを無下にはできない。


「須江さんとお嬢さんは街の人の治療に回ってくれ、こっからは俺だけで行く」

「分かった任せてくれ!」

 ここで一旦二手に別れ、各々自分にできることをやる。


「本気で行く」

 ハルトから教わったものだが、出力というものがあるらしく、大体はしょぼい出力に抑えられていると説明された。


 全開放するとその攻撃の一発一発の威力が格段に上がる、だが自分自身というものがおかしくなってしまう恐れもある。


「あいつの説明からすると切り札のようだ。ならここで使う以外ねえだろ」

 いい機会だし全力の威力というのも知っておきたい。


「しかしすげえな浮くこともできるのか」

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異世界でスローライフのつもりが活躍しすぎて有名になりすぎていた 須江暢之 @deppaman

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