第四章 安寧を求めて

第22話「ようやくゆっくりできるのか!?」

「見えたあれが僕達の活動拠点のテクノ帝国だ」

「結構近いな、もし船がまた通るようになったら観光にいつでも行けるだろうな」

 考え事をしていたらいつの間にか帝国に着いていた。


「まあしばらくは何も無いんだろうから、ここで一旦お別れだな」

「そうなるね、まあ用事があればすぐに君のいる場所へ姿を現すからね」

 どうやってすぐに居場所を見つけてるのかが怖すぎて聞けなかっった。


「随分と荒れているな」

 少し前に見たときよりも明らかに廃れているように見える。


「ん?あの旗は…もしや!」

 なにか知っている国の旗なのだろうが、それを見た瞬間にハルトの表情が怒りへと変わったのだ。


「一旦落ち着こうぜ、だが建物に火が出ているということは襲撃に遭ったんだろうな」

 王が不在の時に一気に襲いこむとは秘境にもほどがあるが、今は個々から離れなければならない。


「だめだ色んな場所が封鎖されてやがる、どういう技術力を持ってるんだ?」

 まず入口の扉すら封鎖されていた。


「私達はこいつを落ち着かせるから、シモヤマさんも早めに準備だけしといてね」

「ああ、わかった」

 四人と別れたあとふと一つだけ思い立った。


「あいつらが居ないってことは俺はようやくゆっくりできるってことでいいのか!?」

 色々バタバタしすぎて、休みというものができていなかった。


「自然を満喫する醍醐味だいごみといえばキャンプだな」

 思い返してみれば、自分ひとりの時間を過ごすことが全く無かった、だからこそ一人で何かをするのにワクワクしてしまうのだ。


「まあメニュー表は持ってるから、飯の心配もないしな」

 報酬金の袋の中に食材もたんまりと入れられていたため、食材がないということにはならなそうなので一安心だ。


「故郷の飯でも作りてえよなあ」

 何かあったかなと考えてみたものの沢山ありすぎて逆に決めきることができなかった。


「肉もあるし普通に焼き鳥でいい気がしてきたな」

 串がなかったのでそこら辺に落ちていた枝で代用することにした。


「調味料買っときゃ良かったな…」

 残念ながら調味料は持っていなかったので素材本来の味を楽しむこととなった。


「普通に美味いな、まあ肉が不味くなるわけ無いか」

 ご飯も最近はまともに食べれていなかったので久々にガッツリと食べた感じがした、しかし塩くらいは持っておけばよかったという後悔はいまだ消えない。


「さてとあの子からもらったテントを張るとするか」

 見た目はかなり小さくてコンパクトだが中はかなり広くて過ごしやすいようになっている。


「こんなんでいいか、久しぶりに張った気がするな」

 そもそもテントを張っている場合ではなかったので使う機会がなかっただけでもある。


「しっかり休んで疲れを取っとかないと後々大変になってくる」

 ちゃっかり用意もされてある布団の中へと入り目を閉じた。


「おーい、大丈夫か?」

「うお!?あんたは須江さんか」

 突然呼ばれて少し驚いてしまったが、すぐに目の前の人物が誰か分かった。


「その感じだと大丈夫そうやな、というかこの空間で会うのは2度目だな」

「久しぶりだな」

 1回会ったときと比べてだいぶ穏やかな雰囲気に変わっていた。


「今度は変なモン吸収したみたいだが大丈夫なんか?」

「使うたびに激しい痛みが出るが今のところは特に問題がない」

 使うたびに耐え難い痛みに襲われるがまだなんとか耐えれるような痛みではある。

 しかし一度だけ使ったあの状態だけは体力がごっそりと持っていかれたような感覚に陥った。


「ちょっと座って話そう、俺はちょっと疲れちまってな」

「椅子まで用意されてあるのか」

 全く見れていなかったが椅子がぽつんと2つ置いてあった、この場所だと欲しがったものは何でも出てくるような仕様らしい。


「お前も一本どうだ?これ好きだったろ?」

「須江さん…あんた俺の吸ってたもの知ってたんだな」

 これを見るのも久々に感じてしまう、最近は吸っていなかったので吸わなくてもよくはなっていた。


「ふぅー、んーやっぱりいいなあ」

「まあこうして話せたんだ、俺も少しは元気出さないとな」

 手をパチンと叩いて立ち上がった。


「須江さんも元気そうで何よりだ、だがどういう原理で話せてるのかが気になってしまうな」

「さあ?俺もお前に呼び出されたからこうやって出向いてるだけだぞ」

 どうやら自分自身が話してみたい人と話したいと思ったときに出会える原理となっているようだ。


「あんたも今仕事中だろ?呼び出してしまってすまねえな」

「いいや?俺は今違う場所に居るぞ」

 今は違う場所にいるぞと言われてありえないぐらい気になってしまった。


「俺もようわからんところに来ちまってよ、釜の掃除していたところまでは覚えてるんよ」

「釜の掃除?なにか作り終わった後に変な場所へ来ちゃったってことなのか?」

 須江さんも大変だったんだなと同乗する気持ちが勝手に芽生えた。


「写真撮ってみたんだけど、こんな場所だよ」

「へえ、しっかし須江さんも隅に置けないな、こんな可愛いと一緒に日々過ごしてるなんてよ」

 ケータイ電話のバッテリーがまだ残っているから使えているようだが当然その世界でも充電とかはできるわけないのでゼロになったら終わりだ。


「俺もそういうの持っておけばよかったなって今更後悔しているが、死んでるから手荷物関係ないか」

「お前もどういう人と出会ったか気になる」

 そう言われても投影機能というものもないのでどうやって見せればいいか全く想像がつかなかった。


「ほらお前は何でも作り出せるんだろ?それでやってみればいいんじゃないか?」

「いやちょっときびしいかも」

 物は疑似的に扱うことができるが人間などの動物はどうやら疑似的に作り出せないようだ。


「いつかはまたこうして二人で話せそうだけどな、そん時になったら見せてくれや」

「ああ、忘れないようにするよ。須江さんも元気でな」

 昔からの友人と話すのは心が落ち着く、だがあっち側にも都合というものがあるためあまり長くは会話できない。


「さてと俺もそろそろ頑張らないとな」

「じゃあな」

 そういった瞬間その空間とやらが無くなり、パッと目が覚めた。


「妙に薄暗いな、明け方か夕方のどっちかか?」

 外に出てみると昼間ではあった、だが全体的に雲がかかっているせいで薄暗くなってしまっていたのだ。


「な、何が起きているんだ??」

「おや?ようやく出てきたか、君が全く出てこなくなってから四日経ったよ」

 あの少しだけの会話だけでかなりの日数が経ってしまっていたようだ。


「なんでこんなことになったかって気になっているようだね」

「そうだな、一体何が起こったのか聞かせてほしいもんだ」

 そして周りが妙にうるさい。


「じゃあ軽くだけ説明するよ、あまり長く話していると周りの怪しげな魔物に襲われてしまうからね」

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