第21話「覚悟の上」
「よし、やってやるぜ!」
思いっきり力を入れて箱状のモノを壊した。すると怪しげな正気がシモヤマを囲った。
「うぐっ!ふー…意外と、なんとかなるもんだな…」
すぐに自分のものにすることができた。
「ならこれで使えるようになったんじゃないか?」
少し前にやってできなかった動作を再びやってみた、すると自身の後ろの方ですべての武器たちが集結していた。
「おぉ、これがあいつの奥義技なのか」
こんなものまで疑似的に扱うことができている、これはすごいなと一人で感動をしていたがそんな場合ではない。
鳴き声とかを上げたりはしないが攻撃は普通にしてくるので油断していると一気にやられてしまう。
「よっしゃ、力を借りるぜ!」
メイス状の武器をぶん投げて魔物の頭部までワープをした。
「声がない魔物もいるんだな、まあそれはそれで遠慮なく殴れるからいいけどなっ!!」
回転しながらメイスを振り回した。あれほどまで多種の武器で殴っても傷一つつかなかったはずがメイス状のものを振り回しただけで頭部に少し傷が入った。
「こりゃすげえな。あいつらや俺でさえも手も足も出なかったのによ」
「す、すごい!あんな自在に武器を操れるなんて!」
「あれが彼の親友の力なのだろう」
怪我も回復魔法で治ったので元通りになったが
「親友ではないがな、見様見真似でも行けるもんだな」
どうも簡単に身につきやすいもののようだが、ここまで確実に再現できるこれも凄い。
「こいつぁ使えるんだろうか?」
全特殊武器を召喚し、名もなき魔物へとめがけて飛んでいった。
「行けるな」
高速で更に斬りつけ、上から剣を振り下ろしトドメをさした…がこの大技を以てしても倒しきれなかった。
「奴がダウンしたぞ!一気に叩き込むんだ!」
「ここまでやってくれたのだから私達も負けてられないね!!」
「お前ら…頼むぞ」
影で見ていただけだったがここまでやったからには倒しきりたいという思いがあってかまた戦線に復帰した。
「これで…どうだ!」
メイスを頭部にめがけてぶん投げ、回転しながら数回ほど殴った。
「奴の…あがきが…止まってということは…やりきったようだね」
「え?私達、あんなんに勝てたの?」
「そのようだ」
「ひええええ、また怪我人が出なくてよかったですーーー」
治癒できるのにも限界があるようであまりにも連続で怪我人が出ると治療が追いつかないらしい。
「ゴホゴホッ!なんとかっ…倒すことができたな」
「ちょっと!貴方は無理しないでよ!!そんなに血を出して、しばらくは療養したほうが…」
「これで拭けばきれいに元通りになるはずさ」
真っ白なハンカチのようなものを渡された。
「もう大丈夫だ、早く渡船場に向かおう」
「本当に大丈夫なんでしょうね?」
先程までの姿を見ていたら心配になるのもおかしい話ではない。
「心配はいらないです、それよりも早めに行ったほうが良さそうな気がする」
「ん?いま一瞬口調が…いやなんでもない。皆、出発しようか」
一瞬だけ変わったことに気づいたが流石にそれはないかと自分でかってに納得して、他の仲間にまた指示を出した。
「ようやく見渡せるようになったな。お、あれじゃないか?」
「きれいですね!」
本当は魔物の売ってしまえば相当なお金になるのだが残念ながらそのような時間がないのでその場で放置という事になってしまっている。
「え?これはどなたが倒されたのです?」
「まずいこのままだと長話につきあわされる…」
謎の声の人物に気づかれぬよう気配を消しつつ静かにその場を去ろうとしたときだった。
「もしや五人組のお方たちが倒してくださったのです?」
「気づくの早すぎじゃないかい?」
バレないように足音もたてなかったのにあっさりと気づかれてしまった。
「だって一般の方ならこのようなものを見たら逃げるのに貴方達は戦ってるのですよ?気づくに決まってるじゃないですか」
「そっか、そうだよね〜。そこに気づかなかったよ」
当たり前の事に全く気付けなかったのが痛かった、こういうやばいものは普通なら放置する。
「これを倒したのを確認するまではハッキリ言って舐めてました」
「でなきゃあんなことしないわな」
シモヤマ達のことを舐めきってなければあのような言動やおかしな行動はしない。
「最近は各地で異形の魔物たちが現れてるのでお気をつけてくださいね」
「そういやこの魔物の名前はなんていうんだ?」
まず魔物自体を見たことがないので名前を知らないためどんなものも魔物と呼んでいるが名前があるのなら折角なら名前で呼んでやりたい。
「これは旧アスパル人の魔改造したものですので名前は存じ上げてません」
「そっか…だが旧っていうのが気になるな」
旧ということは昔いた人たちのことを指しているのだろうか。
「気をつけてくださいね、今やトップが不在のテクノ帝国は簡単に攻められてしまいますよ」
「あぁそうか、いないんだった!」
忘れていた訳では無いがそういやまだ一人で訓練をしているということを今更思い出したのだ。
「一つだけ聞きたいことがあるのだが、ちゃんと船は通っているのかい?」
「夕方頃の便が最後となりますね。これ以上は他の者達を島にいれるわけには行きません」
急いで渡船場に行かなければ一生帰れないことになる。
その発言を聞いてから、全員急ぐように近くの渡船場へと向かっていった。
「おいおいおいそれはやばいって、にしても急すぎるだろ」
「仕方がない。これに関してはあの人が決めたのだからね、あの人はこの島の長なのだろう?」
長なのかはよくわからないが島民から慕われているということはあの子が長ということになる。
「なんだよ意外と近かったな」
「近いだけありがたいと思ったほうがいいよ」
もうすでに夕方になりかけていた、色々な人達がこぞって船に乗り始めたということはこれが最終便だ。
「俺達も乗ろうか」
「まあ君を除いて僕達は帰っても街を守らなければならないからね、本当に忙しいよ」
船の出発の合図が鳴った、その瞬間船が動き始めた。
「結構長い期間いてしまったな。これで俺もようやくゆっくりとした生活ができそうだ」
「なにか言ったかい?それよりも少し椅子に座って休まないか?」
ハルトに呼びかけられシモヤマも椅子がある場所へと足を運ばせた。
「しかしこれほど人がいても全然広いとかすげえな」
広すぎて怖くなってくるが船の上だから何も起こることはないはずだ。
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