第20話「とんでもない場所」
「そういやお前からもらった服のポケットの中に紫色の立方体のものが出てきたんだがこれはなんだ?」
「ああ、君の役に立つだろうなと思って入れておいたんだ」
ただ使い方が全くわからないので持ち腐れみたいにはなっている。
「君の思い通りに形状が変わるものさ」
「便利だな、今度やってみるよ」
今ここで試しても特に意味はないから後回しにしてしまった。
「でも一回やってみてはどうかな?」
「そこまで言うならやってみるか」
どういったものができるかはわからないがひとまず使ってみたいものを考えてみた。
「おお、これ行けるのか」
「なんだいその
ハルトは刃が振動している姿を見てなんだこれはという感想になってしまった。
「これはな俺が昔見たことある武器なんだが一応全部で13本あるんだぜ」
「それほどまでに多くあるなら君になら使いこなせそうだね」
どうやらこの謎の箱は人によって向き不向きがあるらしい、シモヤマは使いこなせることができる方の人間だとハルトが説明をした。
「じゃあこれはいけるのか?」
「何をするつもりだい?」
右手を横に広げても何も起こらなかった。
「なんだ一本ずつしか使えねえのかよ」
「そうだよ次のを使うには一回しまわないといけないのさ」
不便すぎて逆にどこで使えるかが全く思い浮かばない、私生活とかなら意外と使えるかもしれないと感じた。
「うーん、見た感じだとこれ自分に取り込むこともできそうな感じだな」
「上手く行けばそれ以上の力を手に入れることができるが失敗すれば最悪……」
何かを言いたそうな顔をしていたが言いにくいのか途中で黙り込んだ。
その発言的には失敗すると死んでしまうような雰囲気を感じてしまったが実際にどうなるかはハルトしか知らない。
「ま、言いにくいなら言わなくていい。どうせいつかはこいつを俺の自由自在に使える道具として取り込む日が来るからな」
「なっ!?」
驚いた顔をしていたが特に止めようとはせずただ呆然と突っ立ったたまま固まっていた。
「一本ずつだとこの武器たちの本領を発揮することができねえ」
「へ、へえ。そういう言われ方すると気になってしまうね」
歩きながらどういった特性があったのかをわかりやすいように説明をした、とはいえどシモヤマ自身は使ったことはない。
使っている人を実際この目で見たことがあるだけだった、だがそれだけでどれだけの数の武器があるかを瞬時に確認していた。
「すごい技のものなんだね、それだけのものを扱えるなら余程の人物なのだろうね」
「ん?お前もそれぐらいできるんじゃないのか?」
一回だけハルトの本気の戦闘を見たがその腕前は確かなものだ、どれくらいの期間鍛え続けたらそうなるのか教えてほしいくらいだ。
「やっと戻れるのか、俺はとりあえずゆっくりと生活を満喫でもするか」
「ちゃんと船が通っていたらね」
普通に通っていなかったらそれはそれで終わりな気がするが、自力で戻ることもあの力を使えば可能なのかもしれないと一瞬頭によぎった。
「何か良からぬことを考えているようだね」
「バレちまったか、まあそれは最終手段だからな。お前が気にするほどのことじゃねえ」
本当のことを言えば最終手段ではなく今すぐ試してみたいと思っているが今度こそ止められてしまいそうで中々いい出せそうにない。
「だいぶ広い場所だな」
「ここなら港町が見えるかもしれないね」
海が近いのかいきなり木々が消えて辺り一帯小さい草が生えている草原に出てきた。
「見渡せるとは思ったがでけえ岩みたいなのがあって見れねえぞ」
「本当だ……ってこれ岩じゃなくてクソでかい魔物じゃないか!」
岩肌のように見えたものはただの背中だった、それにしてもでかいというレベルではない。
「二人でどうにかできるようなレベルの相手じゃねえ!!」
「こうなったら、来い!」
その呼びかけに応じるかのようにハルトの仲間たちが瞬く間に姿を現した。
「どーなってるんだ?」
「これでなんとかなりそうだが油断はするなよ、僕も君にかまってられない!」
声色的に本気のようだ、確かに仲間にいろんな指示を出したりしなければならないのでシモヤマにまで構っていられるほどの余裕がない。
「俺の事は気にするな。なんとかする」
流石にこれほどの相手に拳は通用しない、1本ずついろんな武器を切り替えて戦っていくしか今は方法がない。
「なんて不便なアイテムなんだ」
結構斬っているつもりでも、相手は傷一つついていない。
「ありえねえ硬さだな!!おかしいんじゃねえのか!」
だが硬いのはこの背中部分かもしれないが皆、焦りに焦ってしまい正しい判断が不可能な状態だ。
「クソ!というかあいつらどこに行きやがった!?」
あたりをキョロキョロとしてみたがどこにもあの四人の姿が見えなかった。
ようやく姿が見えたが四人とも膝をついていた、あの攻撃でも食らってしまったのだろうか。
「おい!お前たち大丈夫か!?」
「大丈夫じゃないさ…まさかこれほどまでに強力だとは思わなかったよ」
「もう頼れるのは貴方しかいない、何か策があるのならそれを使ってくれる?」
「お願いしますー」
「ひえええ!!」
一人だけただ怯えてるやつもいたが全員、
「分かった、お前の言う通り俺の最後の策をやらせてもらうよ、どうなるかはもう俺も知らん!」
「シモヤマさん…」
ポケットに仕舞ってあったものを取り出した、そうちょっと前にハルトからもらった謎の箱である。
「これが策だ、まさかこれ程のの強敵が今ここに現れるとは思ってもいなかったからな。お前たちがまだ戦える状態なら使うつもりは一切なかった」
「そ、それはまさか!?」
そのまさかだがこいつだけは結構ピンピンとしてるなと感じた。
「ゲホッゲホッ!やっぱり…急に立ち上がるものじゃないね…」
「ひえええ!なにか嫌な予感がああ!!」
「お前はビビり過ぎだ」
すうっと息を吸い、はあっと吐き出した。
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