第17話「人口の洞窟?」
「俺に一つ考えがある」
「聞かせて」
今回は話を聞くまでの間がかなり短かった、普段だと少し間があく。
「敵意がないってことを証明するために俺一人で…」
「それはダメ!!」
最後まで言い切る前に止められてしまった。
「わたしは一人で待ちたくないわ」
「それはすまなかったな、じゃあ二人で行くか」
一人になりたくないその思いに配慮できていなかった、だれがどう見ても下山が責められるだけだ。
「しかし嫌な雰囲気だぜ。急に島のやつらが俺たちをにらみつけてくるんだからなあ」
「本当は早く帰りたいけどこの感じだと帰ることは不可能よね」
唯一の船着き場だから、問題を解決しないとそもそも船を出してもらうことすらできない。
「おいなんだありゃ、洞窟…に見えるが」
「前見た時はあんなのなかった気がするのだけれど」
いかにも入ってみてと誘っているような感じで謎の空洞が現れたのだ。
「これは…塹壕だったものか?生活していた跡があるしな」
「隠していたんじゃないのかしら」
塹壕とは戦いの被害から身を隠すために作られるものだがこうもあっけなく見つっかってしまっては本当に終わってしまう。
「ということは島民は全員生き残ってるってことになるな」
「エルフ族の者たちを見るとわかるわ」
軍隊が撤退してからまた元通りの感じになっているようだから誰一人として死んでいない。
「じゃあ俺たちを連れてきた目的っていうのは何なんだ?」
そこだけが納得いっていなかった。
「さてと中に入ってみるとするか、どうせ最深部で待ち構えてんだろ」
「寄り道したくはないけどここしか他に行ける場所ないし行くしかないのね」
ここはあえて策略に乗るしか方法がない。
「中は結構明るいんだな」
塹壕跡にしてはだいぶ豪勢な造りとなっている。
「きゃっ!」
「うお!?なんだ?」
大きな揺れが起きた、あまりに急だったので驚いたヒメナがこちらにくっついてきた。
「魔物がいないといえど揺れとかがあるとさすがにビビっちまうなぁ」
揺れによってこの空洞が崩れてしまっては元も子もない。
「ただ長い道が続くだけなのか?」
まだ一回も大広間に出ていない。
「お?分かれ道か、どうするどっちから…」
「こっちが怪しい気がするの」
先に進んでいってしまった、一体何かがあるのだろうかと思い進もうとしたときだった、突然天井が崩れてヒメナの行った方向へと進めなくなった。
「くそ!こっちからいってもそのうち一緒の場所に出てこられるだろう」
あいつ一人で大丈夫なのだろうかと心配しながら先へと進み始めた。
「急に薄暗くなったな、何か起きなければいいが」
暗くなったとはいえど視認できない暗さではないので特には影響はない。
「勝手に行動してしまった罰なのかしら、一人になってしまったわ」
自分の選んだところがとても怪しく感じて突発的に行動してしまった、その結果彼がこちらに来るのが間に合わず分断された。
「でも生き埋めになりたくはないわね」
長く続く道を慎重に進んでいった。
「一人だと怖くて何もできない…」
この雰囲気だと何もいないということはほぼありえない、何かしらの厄介なものが住み着いていることがある。
それでもここで立ち尽くしていては誰も助けてくれるわけがない、どんなに怖くても前に進むしか選択肢がない。
「やっと広い場所に出られたわ」
「ようこそ、私達に用があってここまで来られたのでしょう?」
突然明かりがついて、目の前にはあのときにいた女が現れた、
急に姿を見せたが敵意などは特になくのんきに椅子に座って待っていた。
「ええ、わたし達をこの島から出してほしくてここまで来たのよ」
「それはお好きになさってください、でもやっぱり貴方だけはこのまま帰したくないですね」
そういったあとに怪しげな笑顔を見せていた。
「わたしだけはここに残されるというの?」
「今の貴方は王としては弱すぎます、そのためにこの扉の奥に潜む魔物達と戦い、鍛えてもらうというわけです」
普段は側近だったりシモヤマが守ってくれていたので自分自身が戦うことなどがなかった。
それでもいつも一緒にいて守ってくれるわけではないのでやはりある程度の実力はつけておかねばならない。
「なんとか…してみるわ!」
「その意気込み、素晴らしいです」
勝手に感激したかと思えばすぐに元の表情に戻り、話を勧めた。
「ご自身の手でこの封印を解除なさってください」
「封印とはまた物騒に表現するのね、でもどうやって解除するのかしら?」
「これを使ってください」
鍵を渡された、どうやらこれが扉のロックを解除するものらしい。
「すごい技術力ね」
「途中で逃げ出さないように頑張ってください」
逃げ出すこと前提で話してくるのもなかなかにいやらしいが、彼女の性格を見てみると何かあれば逃げ出すという考えに至るのも仕方がない。
「彼から技を教えてもらえばよかったわ」
「あの豪快な攻撃を使えるようになるにはだいぶ時間がかかりそうですけどね」
魔法も使えばどうにかなりそうなものでもあるが魔法無しでやってるのは相当な運動能力を持っているとしか言いようがない。
「雑談はここまでにして早くお行きなさい」
「わ、わかったわよ」
扉の向こう側に足を踏み入れた瞬間空気が重くなった。
「うっ…きもちわるい…」
「頑張って耐えなさいヒメナ」
これも強くなるための訓練らしい、どんな重圧にも屈せず前に進み続けるべきだということなのかもしれない。
「はあ、なんだよ遠回りさせられただけじゃねえか」
「もうここに到着したのですか!?」
疲れ果てた姿でやってきたシモヤマカイトだった。
「なにか見られちゃまずいもんでもあったのか?」
「そういうわけではありませんが…」
言いづらそうに視線を違う方へと向けていた。
「ん?これは扉か、誰かいるのか?」
いたのは重圧に耐えようとしている一人の少女だ、その少女が誰だかすぐわかった。
「うう…どうにかしないといけないのに、どうしても歩けない…」
「なるほどな、そういうことだったか」
怯える少女に近づき、背中をさすった。
「どんなに長くなろうともまたどこかでヒメナと出会えるはずさ、そしてお前に俺の戦闘スタイルを譲渡しよう…」
そう言うと驚いてしまっていた、どうやって譲渡するのかという疑問の眼差しだ。
「譲渡位は俺にだってできるさ、これがありゃ大抵の圧力じゃあ屈しなくなるぞ」
「それだと訓練の…意味が!!」
「力をもらうのも訓練の一つなんだぜ」
納得行ったのか頷いた、そしてシモヤマが二回叩いて扉の向こう側へと戻っていった。
「なんとかなりそうか?」
「お陰様でね、さっきまでの怯えが嘘のようになくなったわ」
元気な姿を見て一安心できたが、一人だけずっと考え事をしているものがいた。
「貴方はそのスタイルを扱えなくなったってことですか?」
「全く覚えていないな」
最初にここの世界に来たときと似たような感覚で何をどのようにやっていたのかわからない状態となっている。
「んじゃあ俺は外に出るわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます