第13話「激戦の末」

「くたばれやドラゴン!!」

 三発殴りそのあと両こぶしで押さえつけ、自分の膝へと打ち付けた。


「グ…グゴゴ…」

 断末魔を放ちながら魔導竜の命が尽きた。


「はあ、はあ…やったか?」

「あんたってすごい人間なんやな」

 大苦戦したが、なんとか撃退することができた。しかしハルトや下山はぼろっぼろである。


「ゴホッ…この竜を…おびき寄せた原因は…君だ…」

「ヒメナが!?そんなわけないだろ!」

 剣の矛先がヒメナの方に向いていた、この子がおびき寄せた原因なんてあり得るわけがない。


「君のそのあふれ出る魔力に反応したってわけさ」

「なにぃ?」

 ゆっくりとヒメナの方へと近づいていった。


「申し訳ないが…ここで処刑させてもらう…また同じことが起こる可能性がある」

「近づかないで!!」

 刃物を持たれながら近づかれたら誰でもそういう反応になる。


「近づくなと言われても近づくさ、君はここで終わりという事だ」

「させるかよ!!」

 腹部への鋭い痛みさらには何となくだが刺された部分が熱い。


「カ、カイト?なんで君が…」

「この子がそんな理由で殺されるなんて不憫すぎるだろ、こんのド阿呆!」

 張り手打ちでハルトをその場に倒した、そのあとに下山もその場に膝をつけてしまった。


「このくらい大丈夫だ…それよりもなんだか急に眠くなったな」

 段々と意識が失われつつある。


「これで…最期…か?」

 ゆっくりと目を閉じた、実際は死んだというよりかはただ気を失っただけである。


「今すぐ運べ!まだ息はある間に合うぞ!」

「とりあえず包帯とか巻いた方がいいんじゃないですか?」

 傷口を広げたまま放置は余計に悪化してしまう、ハルトが刺したときに使った武器はいつの間にか消えていた。


 街中で大騒ぎとなっている、どこでも陛下をかばって刺されて倒れたという話題で持ち切りとなっている。

「女王陛下は彼の病室でお待ちになりますか?」

「ええ。それとほかの人は入らせないようにして頂戴ちょうだい


「かしこまりました」

 深々と頭を下げると一人の兵士がその部屋から出て行った。

 そしてこれから侵入されないようにこの建物を見張るという任務もある、だが任せられることは名誉あることとなっているのだ。


「わたしって本当に運が悪いのよね。あきれてくるわ」

 ヒメナは過去に実の両親を失った経験がある、それもかなり小さい頃の話だ。


 五歳のころに父と母が突然暗殺されるという出来事があった。それも目の前でそういうことが起きたのだ。

「もうあなたまで失いたくない」

 大切なものを失うという悲しみはこれ以上体験したくない、そう感じてしまうくらいには下山のことを想っている。


「でもあなたが生きていると確認さえできればわたしもすぐに立ち直れる気がする」

 彼女の精神状態はかなり不安定だ、いつ崩壊するかもわからない状況だ。


「ん?あれ死んでなかったのか」

 あの時が最期かと思っていたが全然そんなことなかったことに驚いていた。


「いたたた…傷が治るまでは安静にしないとな」

「よかった!!」

 ヒメナが飛びついてきた、顔をよく見たら泣いてはいるがどこか嬉しそうな表情だった。


「意外と俺もしぶとい人間なんだな」

「そんなことない、目が覚めてよかった…」

 自分で最期とか言ってたから目が覚めないかと思うのは当然である。


「これはしばらく安静にしとかないといけないな」

「傷が治ったらまたどこかに行くの?」

 やるべきこととかはとくにはないがこの街以外にも拠点があるはずだ、そことかに行ってみたいという気持ちもある。


「うーん、一度俺の家に戻るかな」

「なんで?あなたの家は私の家じゃないの?」

 急にとんでもない発言をしてくるようになった、いつもは冗談で言ってたが今回は全然違った。


 なんというか冗談を言うときの顔をしていない。

「い、いやあ流石にそれは申し訳ない気がするぜ」

「あなたもわたしの前から消えるの?」

 そんなしょぼんとされるとやっぱり一緒にいるべきだなとなってしまう。


「まあでも数日したらまた様子を見に戻るよ」

「約束してくれる?」


「もちろんだ、だが緊急なこととか起こったら様子を見に戻れないかもしれないがな」

 あらかじめそう言うことは言っておかないといけない、でないとまたどっかに失踪しっそうされたって思われてさっきと同じ目に合うかもしれないからだ。


「ちと傷は痛むが帰るとするぜ」

「目が覚めたばかりなのに早いのね」

 傷が治るまでここにいてもなんだか妙な感じがするので、一番見慣れている自分の家で療養することにした。


「じゃあな」

 手を振って病室から出て行った、かつてはずっと病で病院のベッドから出られなかったが今はそんなことはない。


「髪をおろした彼も素敵ね…」

 普段は髪を全部後ろにセットしているのだが病室に運ばれてそこにいたのだから当然セットなどできるはずがない。


「やっぱり痛いな、無理して出てきたがなんとかなるか」

 刺された場所を抑えながらじゃないとまともに歩くことができない。


「下山様!!やっと見つけました」

「ん?ああお前らはあの時の…どうしたんだ?」

 逃亡してきたエルフ族の者たちだった、それほどまでに急いで下山を探していたという事は何か情報でもあるのかもしれない。


「下山様たちのおかげであの王国軍の勢力が弱まって私達の故郷が帰ってきたんです!」

「それはよかった、ということはお前らは帰るのか?」

 占領されていた領地を取り戻せたという事は帰国以外にはないと勝手に思っている。


「もちろん帰りますが下山様も招待しようかなと思いまして」

「ちょっとした旅行気分になれるな」

 となると数日で様子を見に戻るとか言ってはいたが普通に無理となってしまった。


「いたたた…無理に動くと傷が痛むな」

「私が治療します!」

 下山には理解できない言葉でなにやらブツブツと唱えている。


「すげえな!一瞬で治っちまった」

「下山様に褒められるとなんだか照れちゃいます…」

 下山にとっては魔法は全部すげえもんだと思っている、扱えたらいいが魔力など全くない。


「じゃあお前らの住む場所へ案内してもらおうか」

「任せてください!」

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