第7話「島の外から来た者」
「いろいろありすぎたがようやく落ち着ける空間に帰ってこれたな」
「そうですね、私はあなたやハルトさんがいなかったら死んでいました」
ほぼハルトの手柄だが、急に僕が来ていた時にはこうなっていたとか言い出したおかげで下山という名前が街中で通じてしまうようになった。
「やっと落ち着けるな、ただどうやって食料をゲットしてたんだ?」
「魔法ですよ」
魔法が使えるか使えないかで利便性が大きく変わるのが魅力的だが残念ながら下山は扱うことができない。
「ちょっと海に行こうぜ、いい景色が見れると思うんだ」
「賛成です!気分転換は大事ですからね」
近くにある海へと向かうことにした、景色を見ることも疲れを癒すっていう面ではすばらしい。
「海に近いのはいいな」
「海と森の間に私たちの拠点があるんですよね」
木を伐採することはないとは思うがそれでも使いたいときに何本か切り倒した後に運びやすいのも利点。
「やっぱりいいな、気持ちが晴れやかになる」
「シモヤマさん!何かが流れ着いてきます」
そういわれ見てみると波に流されながらこちらのほうに向かってきているのがなんとなく分かる。
「た…助けてください…」
「とりあえず水と食べ物を持ってこよう」
「何を言ってるんですか、私はいつでも出せるんですよ?」
そういうと四人分の食べ物と水をパパっと出した、しかもすでに調理済みのものばかりだ。
「あ…ありがとうございます」
そういうと同時にものすごいスピードで食べ始めてすぐに完食してしまった。
「しばらく食べてなかったのか?」
「ええ、逃げてきたものであまり持って出なかったの」
元住んでいた場所が侵攻によって逃げざるを得なかったのかもしれない、その状況となると必要なものをたくさん持っていくことができない。
「いろいろと大変だったんだな」
「大変どころかもう今や国すらないと思います」
どこかの国が侵略したのか、それほどまでに資源が豊富だったのだろうかと頭をかしげてしまった。
「問題はお前たちが住む場所だな、ちょっと申請だけでもしてみるか」
「どこで申請をするのですか?」
辺りを見てそういわれたがそれはもう仕方のないこと、本当に何もないだ。
「この先に街があるんだ」
「でも異国民の私たちでも大丈夫かな?」
そこが心配のところだが、あの街はいろんな人がいるから変な目で見られたりはしないはず。
「このわたしという人がいながらも別の子に手を出そうとしてるのね」
「(どこかで聞いたことある声だな…)うお!?」
後ろを振り返ると笑顔ではあるがちょっと怒ったような顔をしていた、つかむ力が強い。
「いやそういうわけではないな、俺は漂流してたこの子たちの住む場所を考えていたんだ」
「あらそういうことだったのね…住居なら任せなさい」
すぐに納得してくれてホッとしていた、あまり怒らせないほうがいいなと次からは気を付けようと心の中で決意をした。
「わたしについてきてちょうだい」
「ありがとうごいます!下山様も助けてくださってありがとうございます」
「おう、気をつけろよ。後助けたのは俺じゃないぞ」
少し疑問に感じた。なぜこの子たちはカリンのことが見えていないのか。
「何を言ってるの
「なんだと!?」
まさかの巻き沿いを食らってしまった、ここでお別れかと思ったら全然違った。
「なんで俺まで」
「何を言ってるの、
そういうところは真面目だった、でもここでさようならもおかしな話ではある。
「しかしまたテクノの街に行くことになるとはな」
「お二人は行ったことがあるんですね」
つい数日前までその街に少しだけ旅行気分で行っていた。
「なによ不満なのかしら」
「いやそういうわけではない」
不満があればずっと嫌な顔しながら同行している、あの街並みはいつ見てもよいのだ。
「あなたたちの住居を教えるわね」
「結構いい部屋じゃないか、じゃあな俺はこれで帰るぞ」
どんなもんかだけ見てささっと帰るただそれがしたかっただけだ。
「おやおやこんなに人が集まってるなんてパーティでも開くのかい?」
「うお!?ハルトか、驚いたぜ。ちなみにパーティを開くわけではない」
急に現れるから毎回驚かされているがもしかしたら後をつけてきてるだけなのかもしれない。
「ん?君たちのその特殊な耳…エルフ族かな?」
「隠していたつもりなんだけど見つかってしまいましたか」
毛量が多いのかと勝手に解釈していたがそういうわけではなくわざと隠していたという。
エルフ族なんて聞いたことも見たこともない下山はかなり興味津々ではあるがあまり深く探りすぎると疑われてしまう。
「少しお話してもいいですか?」
「なんだか重要な話をしようとしてるみたいだね、ほらほら下山も聞くんだよ」
「ちっ、わかったわかった」
やけにグイグイと押してくる、それほどまでに重大なことなのだろうか。
「アスパル大陸の王国軍が攻めてきまして、それで滅亡の危機に陥ったわけです」
「どこだその大陸」
初めて聞く大陸の名前に首をかしげてしまった、いろんな場所に王国というのがあるんだなという事を今初めて知った。
「聞く限りだととんでもねえ国なんだな」
「まあ今の国王がそういう人間という事だよ、そして次の標的がここさ」
「わたしもゆっくりはしてられないわ」
何やら知らぬ間に大事になっていた、となると今の下山たちの
「実は僕はその大陸出身なんだ、でもいろいろあってこっちに来たってわけさ」
「いきなりだな!」
突然すぎてギクッとなってしまった。
「もうじきに来るよ王国軍が大量に…その時は下山、君も協力してくれるかい?」
「なぜ俺に聞くんだ」
他にも聞くべき人たちはいるはずなのになぜか下山だけだった。それもそのはず彼はどこの国にも属さないかなり珍しい人だからだ。
「俺は形式上だけどヒメナと結婚してるんだ、裏切るわけにはいかないだろ?」
「下山君…」
嬉しかったのか顔を赤らめていた。
赤らめながらもその顔には笑顔があった、安心したのだろう。
「ハハハッ!そうだったのかい?じゃあ僕も頑張らないとね」
「私たちにもできることがあれば!」
その話を聞いてやる気になったのかエルフの四人たちは立ち上がった。
「いや、あんたらは最後の生き残りでしょ?ここは待機するだけの方が安全だと思うよ」
「うお!?また人が増えた」
こんだけ人が集まっても全然余裕なスペースがあるのは逆にすごい、相当な広さの部屋だという事が改めて認識できる。
「すんませんねあたしたちはこいつを連れ戻しに来たんです」
「ほんま、どんだけうろうろすんねん」
ハルトの仲間の人たちがドカッとやってきてハルトだけを引っ張って連れて行ってしまった。
「なんだったんだ一体、でも俺もこうしちゃいられねえな」
「あらもう帰るの?お父様とお母様は孫の顔を見たいって言ってたわよ?」
一斉にええ?みたいな顔をしながら見てくるがたまに冗談を言ってくるのでもう慣れてしまった。
「まったくとんでもねえこと言ってくるな」
「わたしはいつでも本気で言ってるわよ?」
彼女からすると冗談ではないらしい、という事はさっきの発言も本当に言われていたという事になる。
「さて更に余計なことに言われないようにさっさと帰るぜ、行くぞカリン」
「カリンってあのカリンですか?」
もしかしなくても目の前にいるのは至って普通のカリンだ。
「まさか私達の神様が現世におられるなんて」
「なんだと!?神様なのか?」
つまり下山が普通に接していたこのカリンという女性は神様だったのだ。
「こんなところで正体が見つかってしまうなんてね」
「ん?この姿どっかで見たことあるような気がするな」
白色のドレスを着たこの女性は忘れるはずがない、あまりにも美しすぎて記憶に残るのだ。
「まあ感動の再会を楽しんでくれ、俺はこれにて失礼する」
邪魔をしないように物音を立てずに静かに部屋を後にした。
「やあ」
「今度はいったい何の用だ?」
外でハルトが待ち構えていたが何度も同じような場面に直面したからか急に現れたりしても驚かなくなった。
「君に提案なんだが少し飲まないかい?」
「なんだこの世界にも酒があるんだな」
酒を飲むのもかなり久しぶりだ、病院にいた間から今日この時まで
「ついてきてくれ」
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