第5話「ふざけるな」
「悪いな、もう行かせてもらうぜ」
用意されていた
「昨日帰る前に居場所だけ教えてもらったんだったな」
テクノの街の北側の屋敷で俺たちは構えて待っているという紙だけが頼りの品だ。
だが初めて見た場所なのでどういう道順かは教えてもらわないといけない。
「おや?どうしたんだい、道にでも迷ったのかな?」
「ああ、この屋敷までの道を教えてほしいんだ」
音もなく後ろから話しかけてきたのはうさんくさい男だ、服の高級な質感を見ると相当なお偉いさんなのかもしれない。
「名乗るのが遅れてしまったね、僕はハルトだよろしく」
「ん?あぁ俺は下山だ」
全身をくまなく観察していた、あまりいい気分ではないがこんなところで拒否しても別にいいことはない。
「君…この世界の人間じゃないな?でも深追いはしない事情があるのだろう、僕も同じだからね」
「そうなのか、お互いの格好を見るとこの世界の人間じゃないってすぐにばれてしまいそうだがな」
ほかの人たちは布製の服だったりお金持ちの家とかだと質感のいい絹でできた服を着ている。
「雑談はここまでにしよう、屋敷までは僕が案内しよう」
「それは助かるな」
行き方を言うのではなく案内という一番めんどくさい方法をとったこの人はすごくいいやつなのかもしれない。
「ハルトは今は何をやってるんだ?」
「僕かい?僕は今は…冒険者をやっているよ」
冒険者といわれてもいまいちピンと来ていないが、有名な職業というのは何となくだがわかっている。
「僕以外にもほかの仲間が三人いるんだが、みんな朝起きるのが遅くてね」
「お前も苦労してるんだな」
同じく苦労してきた人間だからそういう苦労ごとはわかってしまう。
「でもみんなめっちゃ強いよ、僕なんかよりもはるかに強い」
「ふっ、一度手合わせしてみたいものだな」
ただ下手をすると殺されてしまうかもしれないというリスクがある。
「気を付けたほうがいいよ、屋敷にいる人の数軽く千人は超えている」
「雑魚がどれだけ集まっても変わらん」
どれくらいの広さかは予想できないがそれにしても千人以上と考えたらとんでもなくギチギチになっているはずだ。
「僕の案内もここまでだ生きて帰ってくることだけは約束してくれ」
「もちろん、自分のできる範囲で頑張ってみるさ」
あったばかりだがそんなこと言われるとさすがに約束しないわけにはいかない、相手が全員武器とか持っていたらだいぶ不利にはなってしまう。
「借金取りとかやってた時はドア蹴飛ばして開けてたがさすがに礼儀がよくないからちゃんとした開け方で行くか」
ゆっくりと扉を開け、中へと入った。
「ん、なんだ!?てめえどっから来やがった!!」
「屋敷といえど扉開けたらもう大広間なのか」
複雑で入り組みが激しいのかと想像していたがそうではなく扉開けたらだだっ広い空間があるだけだった。
「ちょうどいい感じだったのによお」
何で殴られ続けたのかは想像はつかないがかなりの傷ができている、それも前見た時よりもさらに痛々しい感じになっている。
「お前ら、まだ
「前もいいところでてめえに邪魔された記憶があるぞ」
顔をよく見たらちょっと前にぶん殴ったガラの悪い男だった、しぶとさに特化している。
「今回は容赦しねえぞ」
「このためだけに仲間を集めたんだぞ、それも雑魚じゃない、特殊な訓練を受けた精鋭ばかりだ」
ガラの悪い男よりかは強いかもしれないがどこまでの強さレベルかは実際に戦ってみないとわからない。
「かかってこい!」
ざっと数えて百人くらいの特殊な精鋭部隊が隠れていたのか、ズラズラっと姿を現し始めた。
「たった一人のおっさんのためだけに俺たちを呼んだのか?まあいいどうせすぐ終わるだろうし」
「ふっ、そうかもな」
一部の人間だけが特殊な刃物を持っていてそれ以外は素手だったのでまだ何とかなりそうと感じた。
「野郎ども行くぞ!計画通りで動けよ!!」
「よっしゃあ!!」
全員が連携しているため誰から狙えばいいかわからなくするという作戦なのだろうが下山にとっては関係のないことだ。
「なぜだ?もう俺たちの奥義が見破られちまったのか!?」
「そんなんじゃないさ冷静になれば対処できることだ」
冷静な状態ではないときは見破ることはかなり難しいが、冷静になればどういう動きをしているかが見えてしまう。
一人一人確実に倒していくというかなり地道な作業だがその集団奇襲技は人数が少なくなればなるほどくらますのが難しくなる。
「くそ!まあ問題ない、こんなこともある程度想定できていたからなだからこそ九百人隠しておいたんだ」
「ほう、なら全員倒すまでだな」
補充されようが有限の数だからもう倒し切ればこっちのもんなのだ。
「補欠部隊なら来ないよ」
「どういう意味だ!」
どこかで聞いたことある記憶に残るようなしゃべり方、もしかしなくてもあのハルトという男が来た。
「外に隠れていた補充部隊は全員僕が倒したよ」
「なんだとお!?」
「ん?お前、そんな恰好だったか?」
禍々しいマントに顔には仮面をつけており、黒で統一された服と靴になっていた。
「ハハハッ!僕も参加していいかい?」
「ふっ、これほどありがてえ助っ人はねえよ」
こんなに強い人間が味方になってくれるほど心強いものはない。
「お前…まさか!あの有名な冒険者か!!」
「最後の言葉はそれだけかい?」
やる気であふれかえっている、ただものじゃないというオーラを放っている。
「ふん!二人になったところで戦況は変わらん、なにしろこっちにはまだ八十人残ってるからな」
「おや?あの短時間でもう二十人もダウンさせたのかい?」
たった数十分で二十人を再起不能にさせた、あまりの速さに少しおどろいた顔を隠してきれていなかった。
仮面越しであまり見れなかったが何となくで察した。
「ま、残りは君に任せたよ。言っただろう?僕は見とくだけだって」
「今の流れ的には一緒に戦ってくれる雰囲気だったじゃないか!」
あえて上げてそのあとに下げて相手の反応を見るのが好きな特殊な趣味を持つ人間なのかもしれない。
「俺一人でも十分だ、お前はみときゃいい」
一瞬でどっかに言ったと思ったらただ空中に浮かんでいただけだった。
「仲間殺されて無性に腹が立ってきたわ」
「そうかならちょうどいいな」
相手が怒ることで本気を出してくれるから下山にとってはかなりの好都合。
「俺もちょうど体があったまってきたところだぜ」
「死にさらせえ」
いつの間にかガラの悪い男まで加わっている、急にやる気になったのか。
「くたばれやこのボケェ!」
集団奇襲技以外は全員単調な攻撃しかしかけてこない、もしかしたらこの技しか極めていなかったからと予想できる。
「ったくこいつらは…同じ手は通用するわけないって言っただろ」
「そんなお前はどうなんだ」
逆に指示しか出してないこの男はどんな実力を持っているのか、それが気になってしまった。
「大将が一番最初に出てどうするんだ、こういうのは弱い奴を出して相手の体力を削るっていうのが戦法なんだぜ」
「そうか…だがもう数が少ないみたいだぜ?」
下山という男はしゃべりながら相手を倒すことができる才能?を持っている。
「どういうことだ!?なんでそんな早いんだ!」
「だから準備運動は終わったって言っただろ」
ウォーミングアップが終わった、そのままの意味だったのだ。
全盛期の気合い程ではないがある程度の気合いのおかげで攻撃の威力は上がっている、だからこそ敵をねじ伏せる速度が上がっている。
「本当にこんなもんなのか?俺はもうちょっと手ごたえがあるのかと思ったが」
「ふ、ふざけるなよ!!俺だけはそんなもんじゃないってことを証明してやる」
ただのうのうと立ってみていただけの男だったのにいつの間にか余裕な表情ではなくなっている。
「いいぜ準備ができたのならいつでも相手になってやる」
「後悔するなよぉ…おっさん!」
すっと武器を取り出したがいったいどうやって出したのかは不明である。
「へぇ面白いことになってきてるねぇ…おや?」
上で観覧していたハルトが怪しい動きをする人物を一人見つめていた。
「く、くそお舐めやがって…」
武器を拾ったかと思いきや一人の少女に向かって走り始めた。
「そうさこれが俺の狙いだ、お前をこっちに引き寄せることだ」
「何が言いてえ」
よく見てみると刃物を持って全力で少女に向かって突っ走っている一人の男がいた。
「なんだと!?まさか!!」
「行かせるわけがないだろう!」
そう言い放って殴って吹っ飛ばした、もともとの作戦がそうだった。
「死ねやああぁぁぁぁ!」
「させないよ」
刃物を持っていた腕がストーンっと空中を舞っていた。
「うぎゃああああ」
「僕はそういった試合が嫌いでね、止めるべきだと判断したのだよ」
斬られた腕を抑えながらのたうち回っているが見るからにとても痛そうに見える。
「そんな危ない作戦を考えるとは、しかも幼い少女にだ…お前は生かすわけにはいかないな」
「ク…クソゥ」
全身から汗がだらだらと流れている、今の下山の姿を表現するとすれば怒った龍である。
「ハハハッ!まさか君の本気が見れるとは今日はツイてる」
呑気に言っているのはもうハルトだけだ、ほかの人たちはぶっ倒れてたりビビり散らしてたり怒り状態だったりする。
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