第3話「出発だ」

「そうだケガの手当だけしとかないとな」

 いつも常備していた包帯などを使ってひどい場所を巻いた。


「こんなもんかな、よし早速出発だ」

 二人を外に連れ出し、日が暮れないうちに元の家に戻す。


 ここから東に行けばつくといわれたので二人の歩くペースに合わせながら東方面へと向かい始めた。

「そういえばまだ年を聞いてなかったな」

「今年で十六歳」

 そんな年齢であんな扱いを受けていたとなればかなりひどい話だ。


「しかし十六かあ、俺もいつの間にか年を取ってしまったもんだな」

 時間が流れるのはかなり速いと感じてしまった、もういつのまにかおっさんの年齢だ。


「あなたはいくつなの?」

「ん?ああ俺か?俺は三十六だ」

 そりゃほかの人からオッサンやらおじさんやら言われてもおかしくない。


「しかしこんなところまで走ってくるなんてかなり体力があるんじゃないのか?」

「あの時は逃げるのに必死で疲れなんて感じてる余裕がなかったの」

 それでも距離はかなりあったはずなのに必死になってやっとここまでたどり着いたというわけか、これは見習わなければならない。


「テクノの街につくまでは襲われても大丈夫だ」

「あなたのことは信頼してるわ」

 いつモンスターに襲われるかもわからないし、もしかしたら盗賊にだって襲撃される可能性もある。


「しかし不思議な感じだぜ、まさかここにきて人助けをするとは思ってもいなかった」

「あなたに助けられてなかったら今のわたしはいない」

 目の前であんなことされていて引き下がるほどのくずではない。


 東側の街に近づくにつれて少しずつ肌寒くなってきた、もしかしたら雪原にある街なのかもしれない。

「む、ヒメナお嬢様こちらにいらしてたんですか」

「っ!…」

 驚くや否や下山の後ろに隠れてしまった、もしかしたらただの人も知りなのかもしれない。


「それにそのお怪我もしやそのおっさんにやられたんですか?」

「おい集まれ、こいつを逃がすな!」

 そういうとほかの兵隊らしき人物がずらっと下山たちを囲った、おおよそ数百人ぐらいはいる。


「冗談にしてはふざけすぎてないか?」

「お前らは囲っとくだけでいい、この俺がこいつをぶちのめす」

 群れの中から出てきた一人の大柄な兵隊だ。


「本気で言ってるのか?」

 何も言わせずにただいきなりぶちのめすとか言われたらさすがにイラっと来てしまうのだろう。


「はよ殴らせろや」

「まあ落ち着けって、俺も少し準備運動だけしないとな」

 腕や肩などを慣らすため少しだけストレッチを始めた。


「お望み通りお前をぶっ殺してやるよ」

「アァン?いい度胸じゃねえか」

 生意気な兵隊は鞘にしまってあった剣を抜いた、兵隊というだけあって武器は常備してあるらしい。


「この即殺の突き技で殺してやるわ!」

 かなり速い突き技も目に見えないくらいのスピードで華麗にかわした。

 なぜかこの時だけ全盛期を取り戻している。もしかしたら怒りのあまり感覚的に扱えているようになっているのかもしれない。


「な、なんだと!?俺の突き技が回避された!?」

「さっさと来い」

 得意の挑発で余裕な感じを見せつける。


「んだとお!!」

 挑発に乗ってしまったのか、雑に剣を振り回すだけの単調な攻撃になってしまった。


 しかし下山はその攻撃を回避スウェイするだけで反撃を一切していない。

 回避スウェイのキレは今までのものよりもはるかに上達している。


「はあ…はあ…なんで斬撃が当たらねえんだよ」

「それはお前の技量が足りてないからだ」

 完全にその兵隊はバテてしまっている、何も考えずただ剣をふるうだけだと無駄に体力を消耗してしまう。


「くそぉ…野郎どもかかれー!」

 ただ囲っていただけの兵士が一斉に下山を攻撃し始めた。


「ちっ、めんどくさい」

 一発殴ったり蹴ったりするだけでたかる兵士たちはどっかに吹っ飛んで行ってしまった。


「なんなんだこの化け物は」

 さすがにぼこぼこにされすぎてまだ殴られていない兵隊たちは一目散に逃げて行った。

 いつのまにか疲れ切ったでかい兵士のみとなっていた。


「おかげで少しだけ疲れが取れたぞ」

 立ち上がりはしたもののかなりふらふらとしており今にもぶっ倒れてしまいそうな状態だ。

「そんな状態で戦えるとでも思っているのか?今楽にしてやるよ」

 見たらわかる汗だらだらと流して息もだいぶ荒くなっている。


「ふぅ…ふぅ…やれるものならやってみるといいさ…この鎧誰でも着れるもんじゃねえんだぞ」

 ちょっと自慢気に質感のいい鎧を見せびらかしていた、だがその金属は見たことのないものだった。


「高級な鉄なんだろうがそこら辺の鉄と変わらんだろ」

「違うわボケェ!鉄じゃねえオリハルコンだよ!この世界で一番硬いの金属だ!!」

 オリハルコンと呼ばれる金属が一番硬いとされている金属と説明されたがどれくらい硬いのかは殴ってみないとわからない。


「くそ…さっき大声でしゃべって…また体力がなくなってしまった」

 ただ自分の首を絞めただけの行為だ。


「ふっ、その様子じゃもう戦いはできそうにねえな。じゃあ俺がとどめを刺してやろう」

 腹部を三発殴りそのあと両こぶしで頭を挟み、少しジャンプして自分の膝に打ち付けた。


「グホェ!」

 血を吐きながらその場で倒れてしまった。


「やっぱりあなた強いのね」

「ん?ああ、なんでか知らんがすべての技を取り戻せてたな」

 彼女の体力の限界というものすらも忘れて走ったという話を聞いてただひらめいただけ。

【習得】限界知らずを覚えたおかげなのかもしれない。


「さて邪魔者もいなくなったし行こうか」

「うん」

 そこらへんで気絶してしまっている兵隊たちは完全に無視をしている、いつかは目が覚めるかもしれないという考えがあるからだ。


「しっかし驚いたもんだぜ、お前お嬢様だったのかよ」

「そうよだからわたしを狙うやからも多いの」

 傷だらけのお嬢様をそばに連れている男が一番怪しまれるのも無理はない。


 でも助けなかったらどのみち命はなかった、あの時の選択肢は一つしかなかったのだ。

「せっかく見たことのない街に行くんだ少し案内してほしいんだ」

「いいよ、でも夜になる前には帰りたい」

 あの戦いがなければもうとっくの昔に街についてた頃なのに、あの邪魔したやつら許せないなと内心思った。


「困ったな、そもそも持ち合わせがない」

「心配ご無用ですよ私一応お金持っていますので」

「ふっ、さすがだな」

 しっかりと準備するという面も見習わないといけないな、いつかはお金を稼がないといけない。


「そういえばお前女の子だったんだな」

「あら気づかなかったの?」

 もともとズボンはいていたし今も下山と同じ格好をしているから気づくわけがない。


「本当にその服着続けるのか?お嬢様なんだしもっとこう…いい服があるんじゃないのか?」

「わたしはこういったシンプルなものが好きなの」

 赤のシャツにグレーの上着とズボンだからシンプルといえばシンプル。


「それにしてもあなた…いい顔してるわね」

「自分の顔見たことないからわからんがそうなのか?」

 たまに鏡でパッと見るくらいで自分の顔かっこいいと思ったことは一度もない、というか一般人はそう思わない。


「わたしあなたとだったら結婚してもいい」

「おいおい冗談はよそうぜ、それに十六って言ったら未成年じゃないか。今度こそ俺が捕まっちまうぜ」

 いきなりそんなこと言われちょっと驚いてしまったが冷静になる必要がある、そもそもこの子は未成年者である。


「何を言ってるのかしら。この国では十五歳からは成人よ」

「なんだと!?」

 この国はくるってるのかとなってしまった、十五から成人とかどういう精神してたらそうなるのやら。


「でもそんなんじゃ驚かねえぜ。それにお前には婚約者がいるだろう」

「そんな人はいないわ」


「まじかよ」

 元居た世界とは常識が違うんだなと改めて痛感した。


「それにまず歳の差を考えてみよう、俺とヒメナ…二十も離れてるんだぞ」

「わたしにとって年齢の差なんて関係ない」

 いきなり攻めた発言ばかりされすぎて焦り始めてしまった。


「ほ、ほら…もっといい相手がいっぱいいるはずだぜ」

「この街にいる人たちは全員弱くてお話にならないわ」

 こいつ強ければ何でもいいのかよという言い方ではあった、弱い奴はお話にならないそう。


「言い合いしているうちに到着しましたよテクノの街に」

「意外とすぐ着くもんなんだな(ふぅ…助かったぜ)」

「わたしはまだ諦めてないから」

 ちょっとこの怖いなとなった、あそこまで言われて諦めないのがすごい。


「でも案内してもらうからには態度を改めないとな」

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