第9話 不穏
「おい御厨。やっぱり妙だぞ」
夏樹と離れ、涼花は御厨と行動を共にしている。
今日は瞳美が休みだが、涼花は瞳美が今日休みなのは不運だと思った。
「そうね。確かに変だわ」
涼花と御厨は路地裏に入り、お互い背を壁に添わせた。
「亡者が全くいない。昨日まではうじゃうじゃいたのに」
涼花が気味悪そうに吐き捨てる。
今日まだ、涼花達は亡者の姿をみていない。
「そうよね。最近の様子から考えたら明らかにおかしいわよね」
御厨も周囲に気を配りながら言う。
すると、曲がり角から別行動をしていた夏樹が姿を現した。
「あれー。みくりちゃんも涼花ちゃんもこんなところでなにしてるの」
夏樹は軽い足取りで2人に接近した。
涼花は溜息を吐きながら、腕を組んで夏樹を横目で捉える。
「別に何もしてない。ところで夏樹、お前亡者を見たか」
「ううん。今日はまだ見てない。珍しいよね。最近は困るほどいたのに」
夏樹が肩をすくめる。
夏樹は自分の見た範囲に亡者が居ないので、涼花達を探していたのだ。
「じゃあもう今日は帰りましょう。多分このまま探しても無駄よ」
壁にもたれた姿勢を正しながら、御厨が2人に言う。
「そうだな」
「うん。ラッキーだね」
3人は帰るため、住宅地を歩いていた。
「しかし早く終われた今日に瞳美ちゃんが休みなんて、運が悪かったね」
「まあそうとも言えるな」
夏樹と涼花の会話に、御厨の口元が緩む。
「そうね。瞳美は確かに運が悪いかもしれないわね」
談笑しながら歩く3人だが、そのすぐ近くに脅威は迫っていた。
────
「考えてみれば休みができるまではお父さんもびっくりのブラック労働だったんだよねぇ」
10月の初旬、大きな欠伸をしながら、寿磨と学校への道のりを歩いていた。
昨夜、私は休みだったのに、逆に寝すぎて眠たいのか、それとも最近の疲れが溜まっているのか、なぜ今も眠いか思い当たる節が多くてよくわからない。
最近の亡者は手強く、非常に厄介だ。
多くの人型や異形の亡者達が、悪意を持って私達に襲いかかった。
一昨日は今までに比べても数が多く、夏樹さんと涼花さんも途中汗を滲ませた。
「みくりちゃんは今日休みで運が良かったね」
全ての亡者を消滅させ終えると、夏樹さんが言った。
「そうだな。最近は厄介なのが多い気がしていたが、明らかに今日は多かった」
涼花さんは刀を収め、腕を伸ばした。
2人ともいつもと比べて明らかに疲れている。
私が札以外に役立つことが出来たら、2人の負担は減るのだろうか。
そんなことを考えながら札を回収し、私は小さくため息を漏らした。
悪意を持つ亡者と邂逅する度、自分の無力さが身に染みる。
札は正面からは避けられ、回り込もうにも素早く動ける身体能力も無い。
辛うじて壁は作れるので、怪我を負ったりすることはなかった。
だが明らかに効率が悪いし、手間取りすぎている。
もしかしたら、昨夜はそのことを考えていたせいで、眠りが浅かったのかもしれない。
「今日もまた一段と眠たそうだな」
寿磨が道中で口を開く。
「う、うん」
「あんまり夜更かしすると体に悪いぞ」
「睡眠時間はしっかりとってるつもりなんだけどね。如何せん……」
そこまで言いかけて口を閉じた。
寝不足からの不注意か、危うく亡者のことを寿磨に話してしまいそうになった。
「ん、どうかしたか」
「なんでもないよ」
今までも何度か会話の中で口が滑りそうになることはあったが、いつも踏みとどまった。
寿磨に話すと、きっと止められる。
もしくは寿磨なら自分も戦うと言い出すのではと。
寿磨や家族、友人たちは自分の力で守ると決めた。
だから、また寿磨に助けられるわけにはいかないのだ。
学校が終わり、帰る支度を整えていた。
携帯の画面を開くと、いつの間にか御厨さんから電話が来ていた。
電話は3時間ほど前に掛けてこられたようで、学校を出て少し歩いた先の道に立って電話をかけ直した。
しかし御厨さんが電話に出ることは無かった。
私は歩きながら掛け直したが、やはり電話は繋がらない。
そうこうしているうちに家の前まで着いてしまい、家に入った。
「忙しいのかな」
御厨さんがなぜ出ないのか、一体なんの用があって掛かってきたのか気になって勉強が手につかない。
冷蔵庫から母がスーパーで買ったケーキを取りだし、食べ始めた。
ケーキを食べ終えて少しでも勉強しようと筆箱からシャーペンを取り出すと、短くなった芯がポロッとこぼれ落ちた。
新しく補充しようにも、替芯も無くなりかけていた。
こういう時、いつもなら無くなるまでいいかと思って外に出ようなんて思わなかっただろう。
でも私は受験勉強という嫌な現実から逃げるように、文房具屋に行くため外に出た。
夕方の街をのんびりと歩きながら文房具屋まで行き、購入した替芯をポーチに入れて家に向かって歩いた。
夕方の街は帰路に着く人が多い。制服を着た人、スーツを着た人、はたまた子供の手を引いたり、自転車の後ろに子供を乗せる母親など。
目の前に、人々の中で異質な男の人が現れた。
鼠色と黒の法衣を着たお坊さんで、身長は平均くらいだろうか。
そのお坊さんは目が合うと、前から足を早めて接近してきた。
まさか私に用があるのかと、目を逸らしながら歩き続けていると、私の前で足を止めた。
ぶつかると思って一歩後ろに下がり、その顔を見上げる。
スキンヘッドでありながら、お坊さんは威圧感を感じさせることなく、柔らかな雰囲気で口を開いた。
「苧環瞳美さんだね」
私は瞠目して身体を反らした。
目の前のお坊さんに会ったことは無いと思う。
時々父方の祖父が眠る墓にはお参りに行くが、その墓がある寺でも、この男の人は見たことがない。
「ああごめんね、御厨の知り合いって言えば分かってくれるかな」
ふと笑みを浮かべながら、その人は私を安心させるように優しい声色で言った。
「御厨さんの⋯⋯御厨さん、どうかしたんですか」
咄嗟に私は、御厨さんがこの人に私を探させたのではと考えた。
理由は分からない。でもこの人は、私になにか伝えに来たのだと思う。
「その事については、歩きながら話すよ。時間は大丈夫かい」
「はい」
この見知らぬ人に私はホイホイとついて行ってしまった。
自分でもチョロすぎるとは思うが、私の名前を知っていて、御厨さんの名前を出されては仕方がない。
それに御厨さんがなんの用があって電話をかけてきたのか気になる。
ただ要件を伝えるだけなら、メッセージでもいいはずなのに、それをしなかったのは何か訳があるはずだ。
「俺は
隣を歩きながら司城さんは口を開いた。
超克寺は少し離れたところにある大きなお寺だ。
霊園が広く、私は行ったことはないが、確か寿磨は何度もそこに墓参りしていると話していたことがある。
「御厨とは昔からの悪友でね。一緒に戦ったりもしてた。君が今使ってる霊全想真の札は実は俺が作ってるんだ」
司城さんの目が私のポーチに向けられるが、残念ながら今札はポーチには入っていない。
この人に聞きたいことは沢山ある。御厨さんは今何をしているのか、昔はどんな人だったのかとか。
でも1番聞きたいことは、あの日の会話の中で現れた人の事だ。
「あの、じゃあ美希恵さんという人をご存知なんですか」
「ん? 美希恵は俺の奥さんだよ」
「ええっ!?」
てっきり私は御厨さんの口ぶりからして美希恵という人は亡くなっているか、そうでなくてももう遠くに行っていると思っていた。
「御厨から聞いたのかい」
「はい⋯⋯私と同じく札を使えた人だって」
そう言えばと、私は疑問をそのままこの人にぶつけた。
「御厨さん、使えたって言ってたんですけど、今は使わないんですか」
何気なく聞いて後悔した。
司城さんはあの時の御厨さんのように俯いてしまうと、物悲しげに瞼を下げた。
「ごめんなさい⋯⋯」
「ああ、謝らなくていいよ。ごめんね変な雰囲気にして」
慌てて謝る司城さんの声は、無理をしているのがはっきりと分かった。
「君の言う通り、あいつはもう札は使えないよ。それどころか霊力も持っていない」
「⋯⋯どういうことですか」
「色々あったんだよ。昔ね」
それ以上は話したくなさそうなので、私は黙ってこの人の足取りを注視した。
どこに向かっているのかと思っていると、目の前には小さな総合病院が現れ、司城さんは足を止めた。
草臥れたコンクリートで出来たその病院には、入院病棟もあり、私の母も世話になったことがある。
シンプルな構造の病院を見ると、嫌でもネガティブな思考が湧き出てくる。
「御厨さんはここにいるんですか」
「ああ、話は通してあるから、受付に見舞いに来たと言えば皆に会えるよ。じゃあ、俺はこれで」
「えっ、ちょっと」
私が引き留めようと手を伸ばすが、司城さんは離れていってしまった。
司城さんの言葉に違和感を覚えつつも、私は病院の自動ドアを通過し、受付に見舞いに来たと伝えると、すぐさま病室を教えてもらった。
細い廊下の端にある階段を上り三階にあがり、そこから更に廊下を進む。
病院のなんともいえない懐かしさを感じさせる匂いが鼻腔を刺激する。
なぜ御厨さんが入院しているのかは分からない。
電話したり、あの人に伝えたりできるということは、意識不明という訳では無い。
それでも、不安から背中に冷や汗が滴る。
受付で聞いた番号を呟きながら、開きっぱなしのその部屋に入ると、4人部屋の左奥で夏樹さんがベッドに腰掛けていた。
「夏樹さん?」
夏樹さんのおでこには包帯が巻かれている。
何故夏樹さんがいるのか。さっき言っていた司城さんの言葉を思い出す。
「皆に会えるよ」
あれはすでに御厨さんの見舞いに来ているという訳ではなく、皆入院しているという意味だったのだ。
その証拠に、夏樹さんの向かいの右奥に涼花さん、そして入って左の手前に御厨さんが横になっている。
御厨さんの向かいは無人になっていて、ちょうど3人が同じ部屋になっている。
それぞれのベッドを囲む橙色のカーテンが開かれ、皆の姿がよく見えた。
「瞳美⋯⋯来てくれたのね。たまにはアイツも役に立つのね」
「早かったね瞳美ちゃん」
御厨さんと夏樹さんが声をかけてきた。
涼花さんは右肩を下にし、背中を向けながら眠っているようだ。左肩に三角巾が見える。
「御厨さん」
私は御厨さんのベッドへゆっくりと近づいた。
御厨さんの右腕も三角巾で固定されている。
左頬や首筋にガーゼが当てられ、頭に巻かれた包帯が出来事を物語っている。
御厨さんは左手でベッドを押しながら、上体を起こした。
「大丈夫ですか!?」
咄嗟に私は御厨さんに駆け寄り、身体を支えた。
「ああ、いいのよ。ありがとう」
そう言った御厨さんだが、無理していつも通り振舞っているのが簡単に分かるほど、声がか細い。
「そこに座ったら」
御厨さんはそう言ってベッドの傍の座椅子を目で指した。
私はそれに腰かけた。
「何があったんですか」
御厨さんの目を見据えると、御厨さんは俯き、目を閉じた。
その顔には苦痛が映し出されている。
いつにもなく弱々しい、見たことのない御厨さんの姿が目の前にある。
私の目頭が徐々に熱くなる。
「あっという間だったわ。あなたが居なくてよかった」
「皆さん一緒に居たんですよね」
「ええ」
「なのになんで」
御厨さんは答えない。
俯いたまま口を閉じている。
「術者が僕らの前に現れたと思ったら、急に目の前で亡者が湧いて出たんだ」
御厨さんの代わりに夏樹さんが答えてくれた。
「数も多くて、あれだけ多くの亡者に一斉に襲われたことなんてなかったから動揺したけど、亡者自体はすぐに倒せたんだよ。けどすぐに術者に迫られて、僕はそこからの記憶が無い⋯⋯」
悔しさ恐怖が混合した声を震わせながら夏樹さんが教えてくれた。
「それは、夏樹は気を失ったのよ。あの男の一撃で」
御厨さんが付け足して説明した。
夏樹さんが一瞬で無力化されたなんて信じられないが、事実なのだろう。
「それから私と涼花で戦ったけど歯が立たなかった。それだけよ」
御厨さんは天井を見ている。
私も天井を見たが、当然何か映ってるわけでもない。
ただこの重い空気の中、私の顔を見たくなかっただけなのだろう。
「瞳美」
「なんですか」
御厨さんが私の名を呼ぶ。
「今日からしばらく亡者退治なんていかないで。放置しておけば人に被害がでるかもしれないけれど、あの男がまた現れたらあなたまで⋯⋯」
私は黙って聞いていた。
御厨さんの言うことが最もであり、私のためであるとは自分でも分かっていた。
御厨さん達が3人で勝てなかった相手に、私ひとりで遭遇したらそれこそ命が危ういだろう。
ひとりで敵討ちをするといっても、それはただの蛮勇でしかない。
それでも私は、目の前に亡者とそれによって傷ついた大切な人達がいるのに、大人しくしているのも、耐えられる気がしなかった。
それと同時に、見たこともない相手を恐れている自分が存在している。
「大丈夫だ⋯⋯必ず私が倒すから⋯⋯」
呻き声とともに、聞こえたそれは涼花さんから発せられたものだった。
涼花さんは私に背中を向けたまま、寝息を立てているかのように体を膨らませたり縮ませたりしている。
「瞳美⋯⋯わかった?」
御厨さんの無事な左手が私の手を握りしめた。
御厨さんの心情が
「嫌です⋯⋯」
それは無意識のうちに出ていた。
本心なのかは分からない。身体はがたがた震えているし、悪寒までしてきた。
「皆さんが傷つけられて、私だけ逃げるなんてそんな⋯⋯」
御厨さんの左手が握る力を強める。
少し痛いくらいのその手のひらから、熱い意思が伝わる。
「だめよ! たとえあなたがあの札を使いこなせても。ひとりじゃ勝ち目がないどころか、本当に命を落とすかもしれないのよ!? 私と涼花がふたり掛りでもどうにもならなかったの。あなたが戦ったところで何も出来はしないの」
御厨さんに声を張られ、私は口を結んで何も言えなかった。
初めてこの人に怒られている。
それもこの人は、私の庇護者として説得しようとしている。
御厨さんの言うとこが正論だということは頭で分かっているはずなのに、まだ私は守られる立場でしかないという事実に、涙と共に思いが溢れ出した。
「いいんです⋯⋯死ぬとかそんなこと大した問題じゃない⋯⋯私はもう⋯⋯大切な人が亡者に傷つけられるのが嫌なんです。傷つけられてるのに⋯⋯また見てるだけしかできないなら死んだっていい!」
自分の悲嘆の音が病室に響き渡る。
こんなものは幼子の駄々と同じだ。
御厨さんも夏樹さんも狼狽し、涼花さんは身体を仰向けにして目を見開いて口を半開きにした顔を私に向けた。
御厨さんは怒るだろう。御厨さんだけじゃなくてふたりとも。それでもいいと思った。
この人達は、もう私の中では由貴や寿磨と変わらない大切な人達なのだ。
この人達のために何も出来ないなら、そんな自分は必要ない。
「瞳美⋯⋯あなた⋯⋯」
御厨さんはいつの間にか私の手を離していた。
私は涙を拭いながら、鼻をすすった。
「ごめんなさい⋯⋯変なこと言って⋯⋯でも、もう嫌なんです。守られるだけの存在でいるのは」
御厨さんが瞬きしながら長いまつ毛をたなびかせた。
私はいつまでも止まらない涙を拭いながら、ぼやけた視界の中、御厨さんをずっと見つめていた。
「もしかしてそれは、人が亡者になることに関係しているの?」
私は息を飲んだ。
「どういうことだ瞳美」
「瞳美ちゃん⋯⋯」
涼花さんと夏樹さんが唖然としながら口を開く。
「一体何があったんだ。術者に会ったことがあるのか?」
涼花さんが続けて放った問に黙って頷く。
もうあの出来事を話さなければならないのだろうが、息が整わず言葉が紡げない。
「話してくれるかしら瞳美、あなたの身に起きた事を」
御厨さんは身体を捻りながら私の頭を撫でた。
動くだけでも痛いはずだ。一瞬顔をしかめたのを見逃さない。
1度大きく深呼吸すると、随分と整った。
目を閉じると、笑顔を向けるあの頃の由貴と寿磨が瞼の裏に現れた。
「幼馴染の男の子がふたりいるんです。ひとりは寿磨、家が隣同士で、いわゆる腹の中からの幼馴染ってやつです。もうひとりは由貴、幼稚園で出会いました。昔からあんまり友達は多くなくて、いつも3人で遊んでたんです。本当にほとんど毎日⋯⋯」
思い出話をしているだけなのに胸が痛むのは何故だろう。まだ楽しかった頃のことしか考えていないのに、涙がまた溢れ出したのは何故だろう。
「でも小学四年生のある時、由貴が行方不明になったんです。あの時は私も寿磨も泣くこと以外何も出来ず、ただ毎日由貴の家に行ってどんどん憔悴していく由貴の両親に帰ってないか聞くことしか出来なくて。そして由貴が居なくなって1ヶ月くらいして、いつもの公園に現れたんです。フードを被った不思議な男の子が由貴の肩に手をかけながら。私も寿磨も、その人が由貴を見つけて私達の前に連れてきてくれたんだと疑いませんでした。でも、そこに居たのはもう私達の知る由貴ではありませんでした」
皆が喉を鳴らす音が聞こえる。
大方何が起きたのかは予想出来ているのだろう。
長々と話す必要は無いだろう。
「そこからはあっという間です。自我を失った由貴は背中を押されるとまず寿磨に襲いかかりました。寿磨を組み伏せ首を絞めると、抵抗した寿磨に蹴り飛ばされて⋯⋯。その様子を男は嘲笑いながら見ていました。そして由貴は次に私を狙いました。血走った目で人間にあるはずのない牙を剥き出しにしながら。私は足がすくんで動けなくて⋯⋯」
思い出すだけで吐き気を催す。
「気がついた時には、寿磨は左腕から血を流して蹲っていて、無機質に寿磨を見下ろす由貴と高笑いする男が⋯⋯すぐに人が駆けつけてきて、由貴と男は姿をくらましたんです」
随分と端折った気もするが、要点は伝えられただろう。
「要するに、由貴は亡者になって私達の前から消えて、寿磨は一生消えない傷を負ったんです」
またこの場で何度目かの涙が滴る。
怪我をしたばかりの人達にこんな話はするべきではなかったと、今更後悔の念に苛まれた。
だが反応は私が想像していたものと違った。
3人とも表情を曇らせず、むしろ私に向かって顔を綻ばせた。
「ありがとう瞳美、お前の気持ちはよく分かったよ」
涼花さんが寝転んだまま言った。
「うん、ごめんね辛いこと思い出させちゃって」
「あなたの想いは伝わったわ」
夏樹さんが続き、御厨さんも言った。
「でもだからこそ、あなたひとりに無茶をさせるわけにはいかないの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます