4.アドスという男。
「タクト……アンタのテイムは、いったい……?」
「あー、説明は後でするとして。こいつら、どうする?」
シルヴィアがどこか呆けた顔で俺に訊ねる。
しかし今は、それよりも相手の処遇を考えるのが先だった。簀巻きにした三人の男たちを親指で示しつつ、俺は喧嘩の張本人である少女に意見を求める。
すると彼女は、少し考えた後に首を左右に振るのだった。
「ううん。元々はアタシが吹っ掛けたせいだから、こいつらは悪くない」
「……そっか」
だとすればこれ以上、男たちを拘束する必要はない。
ただ、一つ気になることがあった。
「なあ、アドスっていつもこんな馬鹿なことしてるのか?」
「ア、アドスの兄貴……?」
俺は彼らの拘束を解きながら、テイムした奴に訊ねる。
すると細身の彼は、おっかなびっくりに視線を泳がせながら言うのだ。
「ば、馬鹿なことかは分からない。だがオレたちは、アドスの兄貴には逆らえねぇんだ。逆らおうものなら、間違いなく――」
そこには、恐怖の色が浮かんでいる。
テイムによる使役などではなく、より純粋な支配だった。
「……こ、殺されちまう……!」
◆
――一方その頃。
王都の外れにあるアドスの屋敷。
「ほう、そいつは面白れぇな」
配下の冒険者からの報告を受け、彼は手に持っていたボトルに口をつけた。
そして、一気に中身を煽った後に口角を歪める。
「人間が人間をテイム、か。……おおよそ、普通のテイマーじゃあり得ねぇ」
くつくつ、という笑い声。
彼は先ほどまで歯牙にもかけなかった男に、たしかな興味を抱いていた。
アドスという男は、とかく物好きだと噂されている。珍しいものや興味を持ったものは、是が非でも己の手中に収めるのだ。たとえそれが人間であっても。
もっとも男色の気はないが、しかし確実にアドスの興味は掻き立てられていた。
「だったら、俺様の『コレクション』に加えてもいいなァ……!」
そして、そう口にすると屋敷中に轟くような哄笑を上げる。
その姿はまさに、悪魔といっても過言ではなかった。
もっとも、配下の冒険者にそれを口にする者は誰もいないが。
彼らは異様な主の姿に、ただただ怖れを抱くのだ。
「いいぜ。だったら、あのガキ諸共……俺様のものにしてやる……!!」
――アドス・ガイゴール。
この男がいったい、何を考えているのか。
その答えは、きっと本人にしか分からない。
――――
ここまでオープニングです。
次回から第1章です。
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