8
塔ぐらいのおおきさがあるデーモン。
私はそんな化け物にむかって、つっぱしっていた。
これはもう死ににいくようなものである。
「さすがにムリだしぃ!」
「グォォォ!」
デーモンの拳が私に直撃する。
うしろにおおきくふっとび、テムズ川にほうりだされる。
「ギャァァァ!」
「あらあら」
水面に頭がつく寸前、うけとめられる。
ヒルダだった。
「まったくなさけなくってよ」
よく見たら、ヒルダは宙にういていた。
「……ッ」
おどろきを察したのか、ヒルダが説明する。
「よく見なさい、足もとを」
ういている金色の鎖が足場になっていた。
それって、のれるんだ……。
「じゃあ下僕」
ヒルダが私をはなす。
私の足もとにも鎖がのび、そこに着地する。
「あのデカブツを殺しなさい」
「わかったし」
金色の鎖が道のように私のまえへのびていく。
私の体はそこをとおり、ふたたびデーモンにむかってはしる。
「グォォォ!」
デーモンは腕をふりまわして、タワーブリッジを破壊しようとしていた。
「させるかッ!」
デーモンの腕が、タワーブリッジにあたる寸前。私はそれをうけとめる。
「こんのッ!」
おもいっきり腕をおすと、デーモンはバランスをくずして、テムズ川にころがった。
おおきな水飛沫があがる。
「いまだッ!」
つかさず、私はそこへつっこんだ。
私の拳がデーモンの胸にあたり、数秒して、おおきくへっこんだ。
「グギャァァァ!!」
口から大量の青い液体をはきだし、デーモンは息たえた。
同時に。あやつり人形の糸がきれるように、私はくずれるようにたおれた。
限界がきたみたいだ。
デーモンの死骸とともに、私はテムズ川にしずんでいく。
にげないと……でも体がうごかない。
このまま私は、川の藻屑となってしまうのかな……。
最後にヒルダとであえたからいいか。
「十花ッ!」
バジャーッという音ともに、私の体はもちあげられた。
10
きがついたら、タワーブリッジのうえにいた。
「へっ……」
状況を確認する。
ヒルダが私にお姫さまだっこをしていたのだ。
いまのヒルダは王子さまみたいでかっこいい……!
「十花」
王子さまがいう。
「あなたに死なれたらこまるわ。だから、死んではダメよ」
死なれたら困るって……。
なんだか、ヒルデに必要とされているようで、嬉しい。
パン……パン……間がひらいた拍手がとんでくる。
見ればパンシーと騎士がたっていた。
「パンシー嬢」
ヒルダがつめたく、つぶやく。
「今回のご活躍。ずっと拝見していました。まさか、魔法陣がかくされていたとは」
言われて目を上に向けると、空の魔法陣はもうなくなっていた。
「あなたもしっていたわね?」
ヒルダがパンシーをにらむ。その視線から、異常なほどの殺意がかんじられる。
「なんのことでしょう?」
「きっと、あたくしたちを試すためにやったんでしょうけど」
パンシーと騎士はワザとらしく首をひねると、わらいだした。
「わたくしが、ヒルダ嬢をためす? そんなわなけないでしょう」
「あらあら、なにがおかしのやら? 下級貴族はツボがあさいのかしら」
うぅ、あいもかわらず、ふたりはなかわるいな。
まったくーー「九念はなにをやってんだ……」
「「くねん?」」
ヒルダとパンシーのことばに疑問符がついた。
「くねんとは……?」
「えっ」私は拍子ぬけしてしまった。
「くねんって……あなたがたの親友、中部九念のことだけど……」
ヒルダとパンシーは顔を見あわせる。
そして、同時に首をかしげた。
「「それって誰?」」
最凶災厄の悪役令嬢の下僕になった私、現実とラノベが融合した世界で無双する。 セクシー・サキュバス @Succubus4443
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