赤色の空

ポワワ

第1話

西暦1999年12月31日—————


 来たるべき2000年代に向け、街中ではが湧き上がる若者や過去に振り返ってしみじみとする旧世代の者達もいた。

日本中が新時代の到来に胸を高鳴らせていた。

そうこの時までは。



ジリリリリッ



「うるさいなぁ、、、あと10分」

再び閉じそうになるまぶたの隙間から見えた時計には10時30分の数字が表示されている。

完璧に遅刻だ。

早々と寝室から出ると即座に学校へ行く準備を進めていった。

「ってかさぁ、起こしてくれても……」

初めて違和感に気づいたのはそう言いかけた時だった。


親がいない。


 仕事がある父親はともかく、主婦である母親も書き置きすらなく何処かへと行ってしまった。

 いや、そんなことはどうでいい。とりあえず学校に行かないと————



玄関を出ると外は夕方のように赤みがかっていた。空にあるはずの太陽は消え、空は青では無く赤に染まっている。

「なんだよ、これ」

とりあえず友達の電話番号を携帯に打ち込む。

少しの待機時間の後、親友の優斗は電話に出た。

「フッ、、お前なら真っ先に俺にかけてくると思ったよ」

電話の先の声色は同じだが、口調は普段の親友とは明らかに違う。何かおかしい。

「なんか知ってるのか。教えてくれよ」

そう聞いた途端、一瞬の静寂が訪れた。

そして電話口からゲラゲラと笑い声が聞こえる。

「プッ、なにも知らないのかよ。それはかわいそーに」

見下したようなに言い草に腹の底から怒りが湧き上がる。電話口の優斗もそれを感じ取ったのか笑いが止まった。

「まあいいや、もう話は終わりにしよう」

その声とともに炎の塊が眼前に落ちる。

中から出てきた人影は自身の携帯を握りつぶし、待ちきれないと言わんばかりの口調で言い放った。

「“ゲーム”の始まりだ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤色の空 ポワワ @ka3327ufe56

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ