第13話 強行

薫と清二が互いの愛を誓い合い、修蔵もその決意を認めたが、全てが順風満帆というわけではなかった。許嫁の破談を聞いた藤田家は、この決定に激しく反発した。


藤田隆一の父・藤田重治は、地域の有力者としての面目を潰されたことに怒りを覚えた。彼はすぐに修蔵の茶屋に向かい、話をつける決心をした。


その日、薫は店の片付けをしていたが、重治の突然の訪問に驚いた。重治は修蔵を呼び出し、茶室で話をすることになった。


修蔵は重治を前にして頭を下げ、「藤田さん、今日は突然の訪問ありがとうございます。」と丁寧に挨拶した。


重治は冷たい視線で修蔵を見つめ、「桜井さん、これは一体どういうことですか?薫さんと隆一の見合い話が突然破談になったと聞きましたが。」と問い詰めた。


修蔵は深いため息をつき、「重治さん、申し訳ありません。薫が清二という若者に心を寄せていることが分かり、彼女の気持ちを尊重することにしました。」と説明した。


重治は怒りを抑えきれず、「ふざけるな!そんな勝手なことが許されると思っているのか?我々藤田家の名誉をどうするつもりだ!」と声を荒げた。


その時、薫が茶室に入ってきて、父親の隣に立った。「藤田さん、申し訳ありません。しかし、私は自分の気持ちを大切にしたいのです。清二さんと共に生きることを望んでいます。」


重治は薫に向かって冷たい視線を送り、「君の気持ちなど、どうでもいい。我々の家同士の約束が何よりも大事だ。君はそれを理解していない。」と吐き捨てた。


薫は涙を堪えながら、「藤田さん、私は清二さんを愛しています。彼と共に未来を築きたいのです。」と訴えた。


重治は薫の言葉に耳を貸さず、「そんな戯言は聞きたくない。桜井さん、あなたは娘の将来を考え直すべきだ。この破談は許されない。」と修蔵に迫った。


修蔵は重治の厳しい態度に悩みながらも、薫の気持ちを守る決意をしていた。「重治さん、私は娘の幸せを第一に考えています。彼女が選んだ道を尊重することが、親としての務めだと思っています。」と強く言い返した。


重治は呆れたように笑い、「ならば、この地域での協力はもう期待しないことだな。君たちは自分たちの力でやっていくことになる。」と告げ、茶室を出て行った。


薫は修蔵の手を取り、「お父様、ありがとうございます。」と涙ながらに感謝の言葉を伝えた。


修蔵は深い息をつき、「薫、お前のためだ。これから先、困難もあるだろうが、お前と清二君が一緒に乗り越えていけることを願っている。」と優しく言った。


その夜、薫は清二に重治との対立を話し、二人でこれからのことを考えた。清二は薫の手をしっかりと握り、「薫さん、僕たちが一緒にいれば、どんな困難も乗り越えられる。絶対に諦めない。」と誓った。


薫もまた、「はい、清二さん。あなたと一緒なら、どんなことでも乗り越えられます。」と微笑んだ。


二人は強い決意を胸に、新たな試練に立ち向かう準備を整えた。

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