第12話決意の時
薫と清二の関係が進展する中、藤田隆一との見合い話が現実味を帯びてきた。薫の心は混乱していたが、彼女は自分の気持ちに向き合う決意を固めていた。
その日、薫は修蔵に呼ばれ、茶室へと向かった。茶室に入ると、修蔵は厳しい表情で座っていた。薫は緊張しながらも、父親と向き合った。
「お父様、お呼びですか?」薫は静かに尋ねた。
修蔵は薫を見つめ、「薫、藤田家との見合い話を進めることにした。今週末に会う準備をしておけ。」と言った。
薫の心臓が高鳴り、冷たい汗が流れた。しかし、彼女は覚悟を決めていた。「お父様、申し訳ありませんが、私はその見合いを受け入れることができません。」
修蔵の顔が一瞬険しくなった。「何を言っているのだ、薫。これはお前の将来を考えてのことだ。藤田君はお前にふさわしい相手だ。」
薫は目を閉じ、深呼吸をしてから続けた。「お父様、私には心に決めた人がいます。それが清二さんです。」
修蔵の顔がさらに険しくなった。「清二君だと?あの東京の新聞記者か?彼とは何の未来もないぞ。お前の幸せのために、藤田君との結婚が最善なのだ。」
薫は父親の厳しい言葉に心を痛めたが、引き下がるわけにはいかなかった。「お父様、私は清二さんと過ごす時間がとても幸せです。彼は私の心に響く存在です。私は彼と共に未来を歩みたいのです。」
修蔵はしばらく黙り込み、やがて重い声で言った。「薫、お前の気持ちは分かった。しかし、家族の名誉と伝統も大事だ。お前が本当にそれを理解しているのか?」
薫は涙を堪えながら、「お父様、私は家族のことを大切に思っています。しかし、自分の気持ちも大事にしたいのです。どうか、私の決意を理解していただけませんか?」と懇願した。
その時、茶室の扉が静かに開き、清二が姿を現した。彼は修蔵の前に深々と頭を下げた。「桜井さん、失礼します。私は山田清二です。薫さんと共に未来を歩む覚悟があります。どうか、私たちの気持ちを認めていただけませんか?」
修蔵は驚きながらも、清二を見つめた。「清二君、お前も本気なのか?」
清二は真剣な眼差しで答えた。「はい、薫さんを心から愛しています。彼女の幸せを一番に考え、共に未来を築いていきたいのです。」
修蔵はしばらく沈黙した後、重い口を開いた。「分かった。お前たちの決意が本物であるならば、私も考えを改めよう。しかし、薫の幸せを第一に考えることを誓ってくれ。」
清二は深々と頭を下げ、「誓います。薫さんの幸せを一番に考え、共に生きていくことを。」と答えた。
薫は感動し、涙を流しながら清二に微笑んだ。「ありがとう、清二さん。お父様、感謝します。」
修蔵は静かに頷き、「薫、お前の幸せを願っている。お前たちが本当に幸せになるなら、それが私の望みだ。」と告げた。
薫と清二は手を取り合い、互いの愛を再確認した。彼らの決意が固まったことで、未来への道が開かれた。これからの困難を乗り越えながら、二人は共に歩むことを誓ったのだった。
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