第4話 桜井家の歴史

清二は薫との茶道のレッスンが終わった後も、桜井茶屋に通い続けた。彼は薫の指導のもと、少しずつ茶道の技術を習得し、茶道の奥深さに魅了されていた。ある日、清二は薫にお願いして、桜井家の歴史について詳しく聞かせてもらうことになった。


「今日は桜井家の歴史について教えていただけますか?」清二は薫に尋ねた。


「もちろんです。お父様もお話しするのが好きですので、きっと喜ぶと思います。」薫は微笑みながら答えた。


その言葉を聞いて、清二は期待に胸を膨らませた。桜井家の茶屋は歴史ある建物であり、その背後にはどんな物語が隠されているのか興味深かった。薫に案内され、清二は茶屋の奥にある広間に通された。そこには薫の父・修蔵が座っていた。


「山田さん、ようこそ。」修蔵は重々しい声で挨拶した。


「お邪魔いたします。桜井さん、今日は桜井家の歴史についてお話を伺いたくて来ました。」清二は深々と頭を下げた。


「それは興味深いですね。座りなさい。」修蔵は手で座る場所を示し、清二はその指示に従った。


修蔵は少し考えるように天井を見上げた後、話を始めた。「桜井家の歴史は、江戸時代にまで遡ります。当時、我々の祖先は茶師として名を馳せ、武士たちに茶を供していました。」


清二はメモを取りながら、修蔵の言葉に耳を傾けた。修蔵の話は詳細で、桜井家がどのようにして茶の道を極め、名を高めてきたのかが伝わってきた。


「明治維新を迎えた頃、我々は新しい時代に適応するために茶屋を開業しました。この茶屋は、その時から続くものであり、我々の誇りでもあります。」修蔵は自慢げに語った。


「素晴らしい歴史ですね。」清二は感嘆の声を漏らした。「桜井家の伝統を守り続けることは、大変な努力が必要だったのでしょう。」


「そうです。伝統を守ることは簡単ではありません。しかし、それが我々の使命であり、誇りなのです。」修蔵の目には、誇りと決意が宿っていた。


薫は静かに父の話を聞きながら、時折頷いていた。彼女もまた、桜井家の一員としてその誇りを共有していることが感じられた。


「薫さんも、お父様の教えを受け継いでいらっしゃるんですね。」清二は薫に向かって言った。


「はい。私はまだまだ未熟ですが、少しずつ学んでいます。」薫は謙虚に答えた。


「薫には才能があります。彼女がこの茶屋を引き継ぐ日が来ることを、私は楽しみにしています。」修蔵は優しい目で娘を見つめた。


その光景を見て、清二は桜井家の強い絆と伝統に対する深い敬意を感じた。彼はこの家族の一員として少しでも役立ちたいと思い始めた。


「桜井さん、私もこの茶屋のために何かできることがあれば、ぜひお手伝いさせてください。」清二は真剣な表情で申し出た。


修蔵は少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になった。「その気持ちだけでもありがたい。山田さんのような若者が我々の伝統に興味を持ってくれることは、大変嬉しいことです。」


薫もまた清二の言葉に感激し、彼に感謝の気持ちを伝えた。「ありがとうございます、山田さん。あなたのおかげで、私ももっと頑張ろうと思います。」


その後、修蔵はさらに詳しい桜井家の歴史や、茶道の哲学について語り続けた。清二はその一つ一つを真剣に聞き取り、メモを取りながら理解を深めていった。

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