第11話:キャンプに行くか?

その日、大志はまた熱を出した。


風邪じゃないと思うが、原因が分からず・・・でもそれも小玉ちゃんの

ヒーリング効果によって熱は下がった。


昔から手当てって言うよね。


お母さんが子供が痛がってるところに手を当てる。

病人の体の悪いところに手を当てる・・・小玉ちゃんはそうやって

手から気のような治癒パワーを出して怪我した人や苦しんでる人を救ってきた。


小玉ちゃんは右手で大志のおデコに手を当てて、左手心臓にも手を当てて

そうして愛しい彼を治した。

最終仕上げに小玉ちゃんは大志の唇にチュってキスした。


大志は小玉ちゃんの手当てで熱が下がったんじゃなくキスで熱が下がった

んじゃないか、って思うね。


熱が下がったことをイイことに大志は、そばにいた小玉ちゃんの

両腕を掴んで自分のほうに引き寄せた。


「あん・・・もうダメだって・・・病み上がりなんだから」

「大人しくしててね、私朝食作ってくるから・・・」


小玉ちゃん大志に釘をさしておいて朝食を作りに台所へ。

ご飯に味噌汁・・・キュウリとナスの漬物がちゃんとついていた。


大志は小玉ちゃんが来てから楽をしていたし、おかげで外食が減った。

まだ小玉ちゃんはひとりでは買い物には行けなかったけど、

冷蔵庫に食材さえあれば定番的な料理は普通に作れるようになっていた。


タマちゃんも小玉ちゃんの作るご飯を楽しみにしていた。

神社にいたら参拝客が備えた腐ったような魚だったり、

正味期限が切れた肉まんとかカビが生えたカチカチのおにぎりとか、

そういうのしか食べてなかったから小玉ちゃんの料理はありがたかった。


だから、とうぶんと言うよりタマちゃんは一生、大志の部屋から出る

ことはないんじゃないかと思うね。


「なあ、小玉ちゃん・・・猫仙人もだけど・・・最近キャンプってブームじゃん」


そう言ったってブームかどうかなんて小玉ちゃんもタマちゃんも知るわけがない。


俺、仕事早めに片付けるかたさ、天気だし、昼から三人でキャンプにでも

行ってみないか?」

「たまには太陽の下で日光浴ってのもよくないか?」


「私、行く、ダイちゃんの行くとろならどこだってついてく」

「だけど、ダイちゃん病み上がりだよ?大丈夫なの?」


「だから、体を日に当てて体力つけなきゃ」

「なあ、タマちゃんどうする?」


「わしは・・・どうしようかの・・・」

「って言うか、猫仙人って呼ばれ方は、どうもすかんのう〜」

「わしはそもそも猫じゃありゃせんでのう」


「え?猫じゃん・・・どこからどう見ても猫だけど」


「猫という生き物はわしの後に微生物から進化して生まれた生き物じゃて」

「たまたまわしに似てしまっただけじゃ」

「わしが猫に似とるんじゃなくて、あっちがわしに似とるんだ」

「まったく迷惑な・・・おまけに招き猫のルーツだと」


「ねえ、行くなら早く行こうよ」


ほおずえをついて退屈そうにふたりの会話を聞いていた小玉ちゃんが

しびれを切らして催促した。


第12話につづくのじゃ。

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