第10話:小玉の悲しい過去。

「小玉は昔、母親の形見を持って旅に出たんじゃが、その旅の途中で一人の

男を好きになっての、じゃがその男が病気になって・・・」


「あ、そのくだりはパソコンで調べて読みました」

「なんか治癒力とかってのを使いすぎて小玉ちゃんは自分の世界に帰ったって」


「そこには書かれていない出来事がまだあるんじゃ」


「お互い好き同士のふたりじゃったが、肉体関係はないままじゃった」

「じゃから、ふたりが結ばれる前に男が病気になったのは不幸じゃった」


「小玉は男の命を救うために自分の持ってる治癒力を使って好きな男を救った、

じゃが、そのため小玉は精力も体力も失うことになった・・・」


「小玉は自分の力を使い果たしたため、自分を回復する力すらなくなって

肉体を維持できず自分の世界に引き戻されたんじゃ」


「もし男のマナ「愛」があったら小玉は男の元に止まっていられたじゃろう」


「つまり男が病気になる前にふたりが結ばれていて、そのあとで小玉が

治癒力を使ったのであれば、男のマナ「愛」を体内に宿してるため小玉は

その愛でもって精力と体力は回復してたであろうからな・・・」


「それだけで済んでいたのならまだよかったんじゃが小玉に命を救われた

にも関わらず男は小玉を捨てて他の女のもとに行ってしまったんじゃ」


「小玉は性も痕もつき果てて悲しみを抱えたまま自分の世界に引き戻されて、

蚕の繭に閉じこもったまま五百年眠ったそうじゃ」


「五百年?・・・回復するのにそんなに長い期間が必要なの?」


「自分の治癒力を使うってことはそのくらい大変なことなんじゃろ」

「まあ、たしかに五百年は長いのう・・・よく寝る子じゃからな、

ただ寝てただけかもしれんがな・・・」


「まあ、じゃからこそ、おまえのマナ「愛」が小玉には必要なんじゃ」


「エッチができないと困ると小玉が言ったのは、おまえとこの世界で

ずっと暮らしたいと思ったからじゃろ・・・」

「今のままなら、またいつか自分の世界に引き戻れる日が来るんじゃ

ないかって小玉は心配しとるんじゃよ」


「おまえと出会うまでは、そこまでは深刻には考えてなかったかもしれんが

おまえと言う大事な存在が小玉にはできたからのう」


「おまえとの日々の営みによって、おまえのマナ「愛」が小玉の体に

常に流れこんでさえいれば小玉は自分の力を失うこともない」


「それだけが目的でおまえに近づいたわけじゃないじゃろうがな・・・

小玉は純粋な子じゃから、本気でおまえに惚れたんじゃろう

そしておまえとずっと暮らしたいと思ってるんじゃ・・・」


「小玉の望みを叶えてやるのが、おまえがこの世に生を受けた時から

定まっていた、おまえの役目、運命じゃろう・・・」


「それが本当なら、俺、責任重大だな・・・小玉ちゃんの運命は俺が

握ってるんだ」


「言っとくがな、ただ小玉を抱けばいいってもんじゃないからな・・・

そこにおまえの愛がないと、なんの意味もないぞ・・・」


「そういうのを、ただのヤリチンちゅうんじゃ」


「あと、もうひとつ・・・どんなことがあっても小玉を裏切るなよ」

「もし、もう一度男に裏切られるようなことがあったら、小玉は今度こそ

二度と繭から出て来なくなるかもしれんからの・・・」


「おまえ、人間じゃから何百年も生きられんじゃろ?・・・小玉が繭に

入ったらもう二度とこの子には会えんぞ・・・」


「俺は小玉を裏切ったりしません・・・そんなことしたら俺は俺自身を

絶対、許せなくなります・・・」


猫仙人と大志の間でそんな会話がなされていたことなど小玉は知らずに

幸せそうな顔で寝むっていた。


第11話につづくのじゃ。

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