第6話:絨毯と会話する女神様。

「どこでも好きなところに座ってくれていいから・・・」

「ソファに座るほうが楽かも」

「俺さ、仕事しなくちゃいけないから小玉ちゃんの相手はできないからね」


「いいよ・・・お仕事して・・・私、後ろから見てるから」


「見てたって退屈だよ・・・」

「それよか小玉ちゃん料理とかできる?」


「できませ〜ん・・・そういうのまったくできないの、興味もないし」


「そうなの?さっきも言ったけど、ずっと昔からいるのに料理もできないの?」

「ごめんね、役に立たない彼女で・・・」

「料理はできないけど、お腹からお米は出せるよ・・・」


「ああ、農耕に特化した女神様だからね?」


「それってお母様の形見なの・・・」


「米が形見?」


「バカにしてる?」


「いやいやいや、バカになんかしてないよ・・・お米が出せるなんて便利だなって

思っただけ・・・」


大志は小玉ちゃんのお腹からお米が出てることを想像した。

ちょっとしたホラーかもしれない・・・。


「そうか、もし料理ができるんだったら何か作ってもらおうかなって思った

んだけど・・・そしたら暇つぶしにもなるだろ?」


「いい・・・退屈になったら寝るから・・・」


「ああ、テレビでも見てれば?」


「分かった」


小玉ちゃんがそう言ったから大志は彼女をほうっておいて仕事にかかった。


そしたらしばらくして自分の後ろで小玉ちゃんのブツブツ言ってる声が聞こえる。


「なに、ブツブツ言ってんだよ・・・集中できないだろ気になって・・・」


そう言って振り向くと小玉ちゃんが絨毯に向かって、ひとりごとを言ってる

じゃないか。


大志はいぶかしく思って、もう一度声をかけた。


「なに、ひとりブツブツ言ってんの?、しかも絨毯見つめて・・・ちょっと

怖いよそれ・・・」


「あ、ごめん・・・知り合いと話してたから」


「話してたって?・・・絨毯とか?・・・他に誰がいるんだよ?」


「たぶん、ここからそう遠くないところにいる人」

「お互い心で話せるからね」


「なにそれ?・・・テレパシーかなんか?」


「よく分かんない・・・分かんなけど、私親しい一部の人とは話せるの」


「スマホもないのに?」


「スマホ?・・・」


「ああ・・・もういい・・・でも気持ち悪いから絨毯に話しかけるのやめて

くれる?・・・できたら黙って話してよ・・・誰と話してるのか知らないけど」


「心の中で話したら余計なことまで伝わっちゃうから言葉に出したほうが雑音が

入らないで要件がちゃんと伝わるの・・・」


「あのね、お友達にね、私が島根から引っ越してきたから遊びにおいで〜って

言っといたから・・・」


「こっちに知り合いがいるのか?」


「長く生きてるからね・・・」


「あ、それっていろいろ使えそうだな・・・」


「たぶん、そのうちその人訪ねて来ると思うから・・・お茶とかコーヒーとか

飲まない人だから、出さなくていいからね」


「分かった・・・」


大志はまた小玉ちゃんみたいな神様でもやってくるのかって思っていた。


(こっちに知り合いがいるなんてけっこう顔が広いんだな)

(長く生きてるから・・・ってことかな?)


第7話につづくのじゃ。


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