第4話 後のベストパートナー

 マリアはアゲハの後をついていく。その道中の道もメルヘンチックな見た目で、飾られてる絵はクマのぬいぐるみやお菓子をポップな絵柄で描かれてるものばかり。

 絵画ではなくポスターの様だ。


 「ここにある絵とかもビビアンの趣味なのよね。でもあんたってこういうのより美術館にあるみたいなお堅い…なんか意味をめり込ませてくるような絵の方が好きっぽいわよね」

 「めり込ませるって…。まぁ確かに合ってますけど…」

 「へぇ?つまり貴方はそこに何かあったりしたら意味を求めてしまう様なタイプなの?そこら辺にある意味のない物に価値を見出せない。

 そんなタイプに見えるわ」

 

 アゲハのズバズバ言ってくる物言いにマリアは少したじたじになっている。

 だがどれにしても的を射ているのでタチが悪い。実際マリアは意味を見出してしまうタイプだし、意味がなければない成り立ちや歴史を知りたくなる。


 もし歴史が浅い。意味がない。成り立つ必要性がない物は切り捨ててしまう。そんなタイプである。


 マリアはグッと言い返すのを我慢しながらアゲハについていく。



 ◇



 「此処が二階よ」

 「何か…雰囲気が変わりましたね?」

 マリアの部屋は二階にあるらしくアゲハと共に二階にやって来た。

 途中荷物を持つのに苦労はしたが、マリアは戦うタイプの職業であるエクソシストなだけあり細身ながらもそれなりに力は並の少女よりはある。


 そして上がった先。一回が悪く言えば子供っぽい少女趣味でよく言えば可愛らしい甘いロリータ風なのに対して、二階は赤や黒、紫が基調となっていて、少しダークな雰囲気。

 一階のロリータ風に対して二階はゴスロリ風だ。


 飾ってある飾りもマリア好みの絵画が飾られていたり、薔薇の花が活けられた花瓶が置いてある。

 「此処は私がリメイクしたのよ。正直一階は甘すぎるわ。人生には少しの苦味や辛味のスパイスが必要なのよ。この二階みたいにね。どう?気に入った?」

 「えっと一階よりこちらの方が好みです」

 「あらそう?それならよかったわ。貴方のお部屋は端っこにあるの。ついて来て」


 マリアの素直な感想にアゲハは素っ気なく返して案内を続ける。マリア的には目の前の女性の全てを見透かすような感じがどうも苦手に感じられた。



 ◇



 そして

 「此処が貴方の部屋。どう?分かりやすいでしょ?」

 マリアが案内されたのは寮の二階の端っこにある部屋である。ドアには紫の薔薇のステンドグラスが嵌め込まれており、全体的に黒いシックなドアだ。


 「はい…でも端っこの方が落ち着くので…」

 「あらそう?ま。そういうタイプに見えるもんね。此処からは一人の方がいいでしょう?

 分からないことあったら下に来て頂戴。教えてあげるから」


 そう言ってアゲハが立ち去っていった。マリアはその背中にありがとう御座いますと声をかけた。恐らく彼女の事なのでマリアの性格を見透かしているのだろう。

 若しくはマリアのアゲハに対する苦手意識を読み取ったのか…。


 しかしマリアは早いところ自分の城をきちんと自分色に染めるために突入した。



 ◇



 部屋に入りマリアはホッとして胸を撫で下ろしていた。

 「よかった…中は普通だわ…」

 マリアは少し警戒していた。部屋の中まで甘々か…若しくは良くてゴシックなデザインになってるのでは?と。


 しかし入ってみるととてもシンプルな部屋であった。優しい色合いの木の壁や床はナチュラルで自分好みの部屋に染めやすそうである。

 ベットの方はカバーのついてない真っ白な布団でこちらもデザインのしがいがあるというもの。


 家具はそのベットの他に大きめな洋服ダンスにドレッサーに机と本棚に時計。水回りもしっかりしていて、小さなキッチンもあるしトイレやお風呂まで完備という好条件の部屋である。


 「寮は…廊下とか外観はアレだけど個人部屋は合格かしら」

 とマリアは無意識に上から目線で評価していた。そして早速自分の荷物を解き、綺麗なアイロンがけされた洋服をタンスに入れたり、お気に入りの本を本棚へ整理して、そしてベッドのシーツは今後買ってこようと作戦を立てていた。


 そして少し休もうと何となく窓をのぞいていた。

 「ふう…第一に比べて静か…。個人的にはこっちの方がいいかな…外観はどうにかして欲しいけど」

 とため息を吐くマリア。


 すると

 「ねぇねぇ!君が新人のエクソシスト!?」

 マリアはいきなり聞こえた声にピクリと肩を揺らした。男の声…。女子寮で聞こえるのはおかしいと恐る恐る前を向くと…


 「わぁ…君凄い綺麗な子だね。初めまして俺はキリアだよ!天使なんだ」

 「い…」

 「い?」

 「いやぁぁ!覗き!」

 「ちょ!?俺は不審者じゃないよ!カーテン閉めなくてもいいじゃない!」


 マリアは恐る恐る締め切ってカーテンから片目を覗かせて窓の外を見る。

 そこにいるのは自身と同じ年頃の少年だった。少年は黒い癖っ毛の髪に黒と白のモノクロの服装である。

 そして金色に輝く爬虫類の様な…猫の様な不思議な目をしている。


 そしてその背中には真っ白な汚れのない美しい翼が…そしで頭上には輝く光輪。何よりフワフワ飛んでるのに、周りで騒ぐ人がいないのが天使である証拠である。


 飛べるのもそうだが、天使は普通の人では肉眼では見ることが出来ないのである。唯一羽が抜け落ちた一瞬のみ抜け落ちた羽を視認はできるがすぐに消えてしまう。


 エクソシストはこの天使という生命体を視認出来るかどうかが重要視されていて、所謂霊感の様な…未だ解明されてない感覚である。

 感受性の強い人が特に見えやすいとされていて、幼い子供なんかは見える時があるとか…


 しかしマリアにとっては相手が天使とかよりも…

 「…幾ら天使でも人の…それも女性の部屋を覗くのは如何なものかと…」

 「え!?誤解だよ!俺は今日くる新人ちゃんをみに来ただけなんだ!」

 その言葉にマリアはえ…と声を漏らした。そして聞いてみた。


 「…ま…まさかと思いますが…貴方第七の守護天使ですか?」


 マリアが恐る恐る聞くとキリアと名乗る天使はニコニコしながら大きく頷いた。


 「その通り!今日から仲間としてよろしくね!所でさ?君って彼氏いるの?どんな人がタイプ?

 いやぁ君結構タイプだか…」

 ペラペラ喋るキリアを無視してマリアはシャッとカーテンを閉めた。


 すると窓の向こうで

 ええ!少しお喋りしようよ!と喚く声が聞こえるが、マリアは


 「…ハァ…」

 ため息を吐き幸先が不安になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る