第5話
元々私は明るい子だったと思う。
両親はいるけど物心がついたときには私のそばにはいなかった。
だから私は幼少期からの記憶はお祖母ちゃんと一緒に暮らした記憶しかない。
両親には年に1度会うか会わないかの親戚の人ぐらいの認識しかない。
お祖母ちゃんは両親が一緒にいない分、私のことをいっぱい愛していっぱい甘やかしてくれた。
みんなには才色兼備で完璧な女の子というイメージがついているけど、本当の私は甘えん坊のかまってちゃん。
でも中学校に入ったあたりから男の子から告白されたりした。
恋愛に興味を持つ時期だからこそ仕方がないことなのかもしれないが、私は恋愛に興味がなかったから全部断っていた。
それに私は人見知りが強く人とのコミュニケーションが苦手で緊張して顔が強張ってしまう。
告白を断るるときも緊張して強張った顔でお断りしていたから不愛想な女って思われていたと思う。
気づけば周りからの評価は「高値の華」扱いになっていてさくら以外の女の子も話してこなくなった。
それから徐々に尾ひれがついていき、嶋野愛は「才色兼備で完璧な女の子」というイメージがついていた。
私は物事をよく知っているほうではなかったから「才色兼備」が最初はわからなかった。
ネットで調べてみると
才色兼備・・・すぐれた才能と美しい容姿の両方をもっていること
自分が思っている嶋野愛と周りから見た嶋野愛の評価は全く別物だと思った。
運動も勉強も人並みにはできたけど、あくまで人並みで天才でもなんでもない。
でもこの時から「才色兼備」という言葉は私に呪いのように付きまとってきた。
みんなに失望されたくないと思って予習も復習もやったし、家でも勉強はしていた。
運動もランニングなどをして運動部についていくぐらいの努力はした。
中学の段階で身長は平均よりも高かったので、バスケやバレーは部活生ぐらい活躍した
でも高校生は中学よりも甘くなくて、勉強も運動もレベルがあがっていて、同じ中学の子たちが私のことを話したのか、レベルは上がっているのに私に対する評価は中学以上になっていた。
なんとか一年間は頑張ることができていたけど、2年目は無理かなと思っていた。
「なんでそんなに頑張るの?」
今まで頑張って当たり前のように思っていた私は隣の男の子の言葉の意味が理解できなかった
「何がですか?」
「隣で見ていて嶋野さんってすごく努力家なのに、それを周りの人たちって天才とかで片付けているでしょう?嶋野さんはなんのために頑張っているのかなって、もし周りの人の評価を裏切りたくないみたいな気持ちで頑張っているなら馬鹿らしいなって」
「馬鹿らしい?」
「もしそうだったらの話だよ?今言われて嶋野さんはどう思った?自分が頑張っている理由について」
「まぁ少しはがっかりされたくないなとは思っているかもしれません」
「それが馬鹿らしいなって思うんだよ」
初めて馬鹿らしいといわれた
「あなたにはわかりません」
「何が?」
「私だって最初は周りに期待されることが嬉しくて頑張ってました。でもずっと頑張っていると、がっかりされることが怖くなるんです。高校生に上がるといつの間にか才色兼備で完璧な女の子というところまで私の評価はあがってしまっていて。自分じゃどうしようもなくなってしまう感覚があなたにはわかりませんよ」
自分が今まで思っても言えなかったことを彼にぶつけていた。
これは完全に八つ当たりだ。
「そうだね。全くわからないね」
ほらねこの人も結局わかってくれない
「なら馬鹿らしいなんて言わないでください」
「普段ならこんなことは絶対に言わないし、今でも嶋野さんに対して自分が話しているのが不思議な感覚だよ。でもいいたくなったんだよ。嶋野さんの努力は誰が認めてくれるの?」
「何をいっているんですか?」
私の努力・・・
「他人に期待されることはすごいことだと思う。だからその気持ちに応えたいと思うことも自然なんだと思う。でも、期待に応え続けた先になにがあるの?嶋野さんの努力はいつ認められるの?そういった場所がないといつか疲れてしまうし壊れてしまうよ」
「自分が認められる場所・・・そんなところない」
「そういった場所になれるとは思っていないけど、俺は嶋野さんの努力を本当に認めているよ。普段から予習復習はちゃんとしているし、板書もノートに綺麗にまとめている。大きな消しゴムが半分以下になるまで使っている人の努力を認めないのがおかしい」
「松岡くん。。。」
「だからさ、頑張りすぎなくていいんだよ。途中で休憩することも大事だと俺は思う。きつくなったら弱音を吐けばいいし、疲れた休憩すればいいんだよ。それでまた頑張ればいい。期待されることは幸せなことだし、期待に応えることも素敵なことだと思う。実際期待されるのは一部の人間で、俺みたいな陰キャは特に期待すらされていない。だから嶋野さんはもっと堂々と私は天才じゃなくて努力の天才なんです!!って胸をはっていいんだよ」
初めて私の頑張りを認めてもらえたような気がした。
周りから常に「才色兼備」と過剰評価されていてハードルはどんどんあ上がっていくばかりだった。
だからそんな風に認めてくれる言葉をかけてくれたのが本当に嬉しかった。
この人になら私の本当を見せてもいいかもしれないと思った。
嶋野愛は決して「才色兼備で完璧な女の子」ではなくて「甘えん坊のかまってちゃんで失敗が多い女の子」
お祖母ちゃんにしか見せれなかった本当を松岡くんになら見せることができるかもしれないと思った
人と付き合った経験はないし告白はされる側でしたことは一度もなかったけど、これからこの人と一緒にいたいと思った時に
「私とお付き合いしてください」
自然に自分の口から出ていた言葉
実際松岡くんとはちゃんと話したのは今日が初めてで急に告白なんてされたから松岡くんにひかれたかもしれない。
それでもこの気持ちを松岡くんに伝えたかった。
みっちゃんは私の告白を受けいれてくれた。
「みっちゃんよしよしして」
「はいはい。よしよ~し」
思った通り、みっちゃんは本当の私のことを受けれてくれた。
私の失敗も全部受け入れてくれる、
みっちゃんは嶋野愛を「甘えん坊でかまってちゃん」としてみてくれる。
私はみっちゃんと出会えて付き合えてよかった。
だから私はこれからこの場所を絶対に守ってみっちゃんを支えて一緒に生きていくんだ。
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