第268話



 オチがついた所で鑑定の儀の発表は、ここまでとする。

 ガーの両親とか、村の皆が心配してるだろうし、帰るよ。



「じゃあ行くぞ。忘れ物ないなー」

 そんなセリフをいって振り返った俺に、忘れ物があった。二人共、服はボロボロ。一人は靴を片方しか履いてない。


 俺は靴と、服を適当に見繕って出してやる。



「うわ-、ピッカピカだねー!」

「ありがとう」


 マルーン様々だな。

 俺は、邪な考えでガー用に、ちょっと女子っぽい服を出した。


 やめておけばよかった。

 なんか、えも言われぬ、可愛さがあったからだ。後戻りできない気がした。


「これ、ちょっと女の子っぽくない?」

ガーは自分が着てみた服を見る。恥ずかし気な様子がたまらない。


「いや、めちゃ似合ってるぞ」


「…なら、いいけど」


 ちらっと俺を見て照れた様子が良い。おい、かわいいじゃないか…。

 可愛すぎるじゃないか。っていうか、このメンバーの中で女の子として、一番可愛いじゃないか。


 何だろう。俺にはこんな領域があったのか。知らない事ばかりだ。



「このブーツ。おしゃれで、気に入っていたんだけどな…」

 ライムは新しい靴を履いてクルクルと回って見せた後、片方になってしまったブーツを惜しげに眺めていた。


 片方になった靴ほど使えない物はない。それは惜しくても捨てるしかないな。この世界では売れないこともないのだが。


「それは父ちゃんに買ってもらったのか?」

「ううん、あの館でファナが持って来てくれたの」


 ファナ…あのよくわからない女だ。今は女子か。彼女についてはよくわからないのだが。今度会ったら娘の名前を教えてやろうかと、思っていた。


「そうか」

「……」


 ライムの目付きが急に変わる。濃い緑の目が少し光り、明るくなった。

 超レアギフト、鑑定眼って奴を使っているのか。ブーツに付いた紐の先端の飾りを凝視している。値段とか出るのかな、便利だな。


「…これ、なんか感じる」


「なにを?」

「なんかのアイテムだと思う。あの時の腕輪に付いてた石と同じだ」


 ライムがイラーザの方を向き、ブーツを差し出す。彼女は手早く受け取り確かめる。

紐の先端の飾りに、小さな石…魔石が付いているようだ。


「彼らは魔封じの腕輪を偽装するために、集合の護符も付けていました。

 この色…それに付いていた石と同じようです」


「どういうことだ?」

「この石には、相方と引き合う力があるようです。つまり、これの相方を持っている人間には、このブーツの位置がわかります」



 俺は、祠を楽に昇れるよう皆の重力を軽くしてから、超速をかけ階段を駆け上る。階段が一直線なら楽だったが、百段ぐらい毎に、踊り場がある。


 俺はそこにだけに、足をつくようにして跳んだ。地上まで、そんなに足は着かなかった。


 祠前の草地を踏んで、風を放ちながら高度を上げる。辺りを見回す。もう日が暮れかけている。遠くヨウシ市の全景が見える。反対側はどこまでも山脈が続いている。



 見つけた。

 飛んでいた亜翼竜を怒らせ、その口にライムのブーツを放り込んだ。


 俺は地上に戻って、亜翼竜が飛び去るのを見守った、是非ともあいつを探してほしい。

 もう遅いかも知れないが。


 くそ、マルーンの奴、卑怯な真似を。奴に対する警戒レベルを二つ引き上げる。


 安心出来ない。仲間も増えたけど、俺にとっては弱点が増えたって事だ。早急にあいつにあっさり勝てる手を考えなければいけない。


 あの、殺しても死なない所さえクリアできればなんてことはないんだが。

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