第251話

 

 俺は、散歩がてらにライムの様子を見に行く事にした。


 アリアーデとイラーザは休ませた。本当は俺ほど寝ていてもいいはずだ。


 広場を見るとテーブルや椅子はまだ片付けていないようだ。よく見ると、ちらほらと宴会を続けている奴らがいる。

 なんて奴らだ。


 その中にウサ耳親父のウーチャを発見する。そんな見た目で結婚できた幸運をないがしろにしやがって。家に帰れ。俺は遠巻きに回り、気付かれぬよう離れた。



 村内をうろうろしながら子供たちを探す。


 新たな広場を発見。公園かな。給水塔みたいな物を見つけて近寄る。大木を途中でぶった切ってその枝と幹を利用し、その上に丸い板を載せたような物だった。それにロープがぶら下がっていて、子供たちが登ったり、捕まったりしている。


「危ねーな…」


 猫耳も、ウサ耳も、犬耳も、子供達にはよく似合う。俺は心が浄化されていくのを感じた。今ならマルーンも許せるかも知れない。



 大分探したがライムの姿はどこにも見当たらない。


 俺は、子供に直接声を掛けるような人間じゃない。そんな度胸はない。見回すと例の猫耳ワイルド姉さんが近くのベンチで休んでいた。いや、寝ている?


 村の門の所にいた戦士の方だ。名はニャー。彼女は、野生美溢れる容貌をしている。

 昨夜アリアーデたちを風呂に案内してくれた方だ。彼女も入ったのか?


 日に焼けた褐色の肌。腹まで届かない短いタンクトップからは深い胸の谷間を惜しげもなくさらしている。ショートパンツにブーツ。筋肉質な太腿がまたエロいです。


 あの腿に、胴を挟まれて苦しんでみたい。



 俺が近寄ると、猫耳がピクリと動く。猫っぽいつり目を眇め、俺を見る。

「よー、お兄ひゃん。楽しんでるかにー?」


 声質が変わっていた。大分酔っぱらっているようだ。なんか気だるそうな様子もエロい。


「ども。ライムがいないんだけど、知らないかな?」


 俺は、ぼんやりしているワイルド猫耳を堪能しながらも、それを悟られないよう平静に話した。


「おーい、おまえりゃー、あの子知らにゃいかー?」



 にゃ!にゃって言った⁉︎

 彼女は言った?噛んだ⁉︎でも、俺はにゃを聞いた!


 その時の彼女の後姿。自在に流麗に動く細い尻尾。質感のある太腿。俺はこの感動を決して忘れないだろう。



 俺がそれらを反芻していると、ニャーに声を掛けられた子供たちが集まって来た。

「ガーの家いったよ。今日はどこにいるか聞かれたから、だからおしえたげた」


 俺は、ガーの名が出たところで、少しだけ、嫌な予感がした。

 でもまだ、ワイルド猫耳に心を半分以上捉えられていた。


 いや。いかん。俺は保護者。気を引き締めた俺は、その後ガーの親を見つけ出し、彼らの家まで一緒に向かった。



 ガーの家も、丸太を使ったログ的な家だ。きっと木を板にする方が手間なのだろう。


 家を調べに入ったガー母さんが、顔色変えて飛び出して来た。ガー父さんも慌てて物置を調べる。


「お父さん、あの子の鞄がないわ。水筒も食料も!」

「ああ、いろいろなくなってる」


 ガーは、二日ほどの旅行の準備と、武器を持って家を出て行った事を知る。




 俺たちは広場に戻り、ウオルフを交えて話し合う。その時、俺はガーと交わした会話を正直に話した。


 獣人たちの捜索は展開が早かった。

 彼らはあっという間に、ガーの脱出経路を探し出し、そこにライムが一緒にいたことを教えてくれた。


 アリアーデとイラーザの準備が整う前に、二人の行き先も、何分前に村を出たかも、大体の事はわかっていた。



 この村の近くに、鑑定の祠というのがあるらしい。二人はそこに向かったようだ。

 彼らが向かった方角は、切り立った崖で、他に行き先はないという。


 俺も思い当る事があった。何の気なしに才の話をしてしまった。反省。



 子供だけでダンジョンに行くなんて、なんて無謀なのかと思ったが、そこは不思議な気が満ちていて低位のモンスターは寄り付かないらしい。


 最下層に古の鑑定盤があるようだが、それは非常に気まぐれで、殆ど現れる事はないとか。

 そんな物は無いと同じという事で、近頃は誰も訪れない遺跡らしい。


 なんだかわからないが、とても疲れるのだと。



 祠までは、ウサ耳親父のウーチャが案内してくれるようだ。酒飲んでたのに大丈夫なのか。村で捜索隊を出すというのは断った。


 森の中の小道を行く。途中で木が折れてる場所を通る。まだ生々しいなと思っていると。


「それは、ガーが折ったな。その後、女の子が触ってる」


 凄いな。この人たちには防犯カメラ要らないじゃん。



「悪い事したらすぐにばれますね?」

「素晴らしい能力だ。ミドウに誰か行ってくれないだろうか」


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