第236話
村内に入ると適度に残された緑の中に、丸太小屋風の武骨な住居が立ち並んでいる。
俺は、この前来た時はろくに見ていなかった。文化レベルは低そうだ。これはしょうがないだろう。スタンドアローンなんだ。ほぼ自給自足なのだろう。
住民は耳も鼻も良いのだろう。近付くと戸口から次々と顔を出す。ガーが俺をいち早く見つけたのもそれなんだろう。俺はどんな匂いなんだろう。あまり知りたくはないな。
後ろからぼそぼそと非難の声が聞こえて来る。ライムとイラーザだ。
「…なんでやってくれなかったんだろ?」
「…小さいからですよ」
聞こえなかったんだ。仕方ない。
村長宅が見えて来る。手前には大きな広場があった。祭事はここでするのだという。
勿論、俺だって手ぶらではない。こんな事あろうかと、飛行系モンスターを荷車に一匹出しておいた。百キロぐらいはあるだろうか。
重力を操作して持ち運ぶつもりだったがアリアーデが軽く荷車を引くので驚いた。
なんか不思議な絵だったよ。今は獣人たちが手伝ってくれている。
村長宅は一際大きなログハウスだった。テラスのような物もついている。大きな丸太がそのまま建材として使われている。
建築機械もないのに驚きだ。獣人は体力的にずば抜けた能力者が多いと聞くが、ガチのようだ。
館の前の広場には知らせを聞いて集まったのだろう。既に結構な数の獣人が集まっていた。老若男女だ。
皆の前に出て、迎えてくれたのは村長のじーさんとその息子だ。
村長の息子は、確かウオルフという名だったはず。
彼の名を知った時ホッとしたのを俺は覚えている。まともな名前だと思ったんだ。ガーの名が特殊で良かったと。
村長の息子は狼の獣人だという。狼も犬も俺にはわからんが。
そういえば、獣人の種別は特徴のようなものらしい。しかも天運のようだ。犬と猫の獣人がウサギの獣人を産むこともあるという。
そして、容姿と能力はちゃんとマッチングしているようだ。
村長の名は覚えていない。前髪で顔が隠れた犬系の獣人で、若い息子がいる割に年寄りだ。フガフガというばかりで、何を言ってるのかわからないんだ。
「ふがふふがふがふ、ふがが、ふっふふぁふ、ふふぁふぁ…」
相変わらずだ。
背の曲がった村長が最初に口を開くが、やっぱり何を言ってるかわからない。
「ようこそいらっしゃいました。我らの友、トキオ殿」
ウオルフが村長の後を続けた。
青光りするような髪艶を持つ、精悍な青年が爽やかに述べた。まるで淀みなかった。
照れなく人を友といえる、自信に満ちた青年だ。
眉のきりりとした男前で、文句なく恰好いい男だが、裏表ある俺は彼のような日向の人間をあっさり信頼できない。
というか、どう接していいかわからない。
だから疑う事にする。実は心の中で小ばかにしてるんじゃないの?俺だって別に信じてないよ?
よし、軽目の態度で行こう。
「あ、どもー!久しぶりぶりー」
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