第235話




 いきなり村に船で降りて神格化されてはかなわないので、村の近場に降り立ち、必要な物を出して荷車に乗せた。これもマカン邸産だ。庭仕事用だろう。


 道の向こうから土煙が見える。こちらに何かが迫って来るようだ。



 なんと、それはガーだった。

 どうやって察知したんだ。もろ手を挙げて走って来る。その姿は相変わらず女子だった。


 髪色は青っぽい黒。頭の上には犬耳がある。

 嬉しい。可愛い犬耳の女の子が、両手広げて走って来る。俺は、彼女のあの勢いを押し止められるよう気合を入れる。


 実は少年だが。そうは見えない。子供だ。背はまだ低い、イラーザより低い。改めて確認していると、まともに突っ込んで来る。



 ふごっ!とか言わされると思ったが意外と当たりは柔らかい。ちゃんと寸前でブレーキをかけて、飛び上がってくれたようで顔の高さも近かった。


「よー、元気だったか、ガー!約束通り遊びに来たぞー!」


 俺の小さい所が出た。

 言い訳だ。約束したよね。大丈夫だよね。これだけの勢いで迎えに来てくれたのに、本当に小さい。俺の呪文には、小さいをもう一つ重ねるべきだろう。


「トキオ、待ったよ!もう、来ないかと思ったよ!嬉しい。来てくれて嬉しいよ!」


 あああ、尻尾が!尻尾がちぎれんばかりに振られている!これは便利だ。感情がわかる。喜んでくれてる。小さい俺も安心できる。


 超嬉しい!


「あははははは!」

「あーはっはっはは!」


 それに男の子は良い。遠慮なく脇に手を入れ持ち上げグルグルと回った。

 ガーは嬌声をあげ、はしゃいだ。俺も、彼の尻尾が目に入り、心底喜んだ。脳波が止まっていたんじゃないかな。



 その仲間に入りたかったのかな、ライムは。

 彼女が視界の端で、腕を広げて盛んにジャンプしていた。


「トキオさん。わたしも!わたしも!」

 聞こえない事にしよう。



 踏み均された土の道を行くと、木製の柵が見えて来る。高さは三メートルぐらいだ。先端は尖っていて、村をぐるりと回りを囲っているようだ。


 門の所にいた獣人の姉さんは、ガーといる俺たちを笑顔で迎えてくれた。

 彼女は猫耳女子だった。

 マジか!タンクトップか!


「よー、おまえがそかー。入れ入れー!初めましてだに、お兄ちゃん。歓迎するに」

「えっと、トキオだよ?」


「知ってるに。村長のとこ行け。もう、知らせは行ってるに」

「いや…そんなつもりじゃ…」


「客人は村長の所に行くものだに」



 とりあえず村長の家に向かう事になった。俺はそんなつもりなかったのだが、猫耳のナイスバディに言われては仕方ない。


 彼女の姿を事細かに描写できなかった。

 女子たちの目が気になって、俺は彼女を堪能できなかったんだ。


 ショートパンツだった。太腿ムキムキだよ。


 日に焼けた系の、すっごく強そうなエロいワイルド姉さんだったのに…。

 タンクトップ短くて、腹見えてた。キューっと細くなっててね。


 隣で手を引いて案内してくれるガーは女の子みたいだし。後ろに並んだ三人の女子の目が気になるでしょ。まじまじとは見れないよ。


 不自然なほど目を向けられなかった。ほんのり茶色っぽい黒髪だったね。

 また、視姦していたと言われてはかなわないからな。


 琥珀の瞳だった。


 悔しい、じっくり見たかった。

 腹筋割れてたよ。でも血管が浮くほどバッキバキじゃなかった。適度に脂肪がのってて、実にいい感じだった。



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