第194話
女の子みたいだぞ、は失礼だったな。
彼女は十七歳、この世界では成人とされているが、まだ少女だった。
どういうことだろう。アリアーデの頬は何故か染まっている。テーブルに乗せた手は子犬の足のように握られていた。
なんか、かわいいじゃないか。一体どうしたんだ。
それにしてもその目、そんなに開くんだ。実は普段が半閉じなのか?
俺がじっと見てる事に気がついたのか、身体を傾け、耳元に手を寄せて来た。
『女性を…凛々しいと思ったのは初めてだ』
「なんですか!こそこそ、やめてください!」
顔を寄せ合う様子を見たイラーザが口を尖らせた。
「いや、彼女おまえを、りり…」
グキッ…!
首の骨が折れるところだった。
ちょっとーー!気を付けて。エタニティリバースしちゃうトコだったよ?
アリアーデが俺の首を掴んだ。はた目には力が入っていないように見えるだろうが、彼女には岩を爆発させるような力がある。
彼女に目を向けて、もう一度驚いた。
そういう表情もできるんだ。明らかに不機嫌そうな目を俺に向けている。
オコだ。言うなって事ね?全然意味わからないが理解する。
「…コホン」
アリアーデが咳払いする。
「そうだな…受け入れよう。過ぎた事を話しても詮無い。これからの事を話そうか」
アリアーデが、話を終わらせたので俺もそれに乗る。
「そうだ。おまえの所、ミドウ領でひっそり暮らすっていうのは?」
「無理だな。名を変え、匿ってもいずれ知られる。それに、命令があれば私はお前たちを討たねばならない立場だ」
緩みそうだった空気が戻る。
イラーザが乗り出していた身を引く。剣士と戦う魔法使いの常として距離を取ろうとする。ライムにもそれが伝わったのか、立ち上がって後ずさる。
「落ち着け二人とも。アリアーデは俺たちに立位置を教えている。それを確認させようとしているだけだ。
彼女は今回の事で俺たちに切りかかったりしない。そういう立場だと話しただけだ。こいつはそんな人間じゃない」
俺が、自由な世界から来たと思って憧れていたような娘なんだ。
してやったりの気持ちで、ちらりとアリアーデを見る。
思った反応は無かった。結構良いこと言ったつもりなのに…。
イラーザに見せたような顔を俺にも見せて欲しいものだ。
しかしおかしいな。どうしてこうなる。
ウハウハ、ハーレム的な話になってもう大変。みたいな展開になってもおかしくはないんじゃないか。
いや、待て。図に乗るな。俺はこの娘にパンツ洗って貰えるところだった。
十分幸せじゃないか。
「それで、トキオ。この子をどうするつもりなのだ」
「責任は…取るつもりだ」
そこで女三人の視線が交錯する。またもや空気が変わった。
突然の非難だ。
皆の目に剣が宿っている。えっなんですか?
「トキオ様、あなたはライムも…範疇なんですか?実は狙っていたんですか?」
「トキオ…お前は、この子にも、全てを差し出させる気だったのか?」
「えええー、変態!」
女子が瞬時に団結。いきなりの三対一だよ。セクハラ発言した男子を責める体だよ。
どういう誤解なのか考える。
責任取る=嫁に貰う。嫁に貰う=やらしい事する=狙ってた。
違うだろボケー!
どういう曲解だよ。なんで俺がライムの身体を狙っていたみたいになるんだよ。
「ライムが安心して暮らせる場所を見つけてやるって言ってるんだよ!
それまで責任をもって守る。そう言ったの!」
「なんですか、最初からそう言ってくださいよ」
「言ってるだろー!」
「では、私は、それを手伝うとしよう」
アリアーデは珍しく抑揚を込めて述べた。しっとりとした艶があった。
「身体を差し出す、代わりにな」
明らかに上の階級の者が、下をからかって来るようなその感じ。
迂闊だった。アリアーデ様には実はSっ気があったようだ。
いや、俺は全然困らないけど。
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