第143話



 夕闇の時が過ぎ、街は闇に包まれる。上空から街を見下ろす。藍色に染まった世界に揺らめく白が見えた。


 イラーザが大きな白い布を窓から振っている。目が見開かれている。半目じゃない。結構かわいいじゃないか。



 俺は彼女に宿を取っておいて貰ったんだ。久しぶりにベッドで寝るチャンスだったからだ。


 ライムは家に帰ったはずだ。悪漢達は牢獄に行ったはず。彼らの口は塞げなかったが、俺は大して能力を見せてないし。見たことを話されても、自分たちの間抜けを罵られるのが落ちだろう。



 音もなく俺は窓の前に降りて行く。


「がっ、かっ恰好いい…痺れるぅ、本当に飛べるんですね。窓辺に降り立つとか…おしっこ出そうです」



 だから、しっこいうな。俺は突然冷めた。

 直前までハグしちゃうくらい高まっていたのに。


 自分の身体を抱きしめ、グネグネと身体を震わせるイラーザを無視して、俺は尋ねる。


「おいおい、なんでダブルなんだよ。ツインって言ったよな?」


「だって…約束したので、お礼を貰っていただきませんと」

「いらん!」


「なんでですか、あんなに視姦してたじゃないですか。私の身体に興味があるんですよね?」


 それを言われると弱いな。確かにそれは興味あるんだけど…。


「おまえはそんなことしたら、一生涯付いてきそうだ」


「大丈夫ですよ。そんな事ありせんよ。約束じゃないですか。やってもらわないとすっきりしません」

 


 やって…って。

「ちょっと待て。おまえは…俺が約束だからと、弱みにつけ込むような男だと思っているのか」


 キリリと眉を引き締める。五%くらいは男ぶりは上がるはず。ちょっとかっこつけてみる。


 イラーザは顎に手を当て、いつものしわをおでこに作る。目もいつものあれに戻った。よく考えているようだ。

 


「思います」


 またかよ、おまえもかよ。見切ってんじゃねーよ。

 即断するな!


 その通りだけど。そういう奴だよ。それこの前、口にしたばかりだよ!

 けど、ムカつくー!


「残念ながら俺は違う。俺はおまえの思うような人間じゃないんだ」


「そう…ですか。わかりました。失礼しました…」

「……割とあっさりだな?」


「私も分をわきまえています。自分が女として、魅力に乏しいことは知っています」



  イラーザは俯き、元気がなくなった。獣は失せ消え、儚げな少女が現れる。


 俺は言葉を失った。そんなつもりは無かった。違法性のあるボディではあるが、付き合いにより年齢は証明されている。


 俺の中では女の範疇に入っている。


 イラーザは床を見つめ、しばらく押し黙っていたが、突然床に這いつくばった。

 何をするのか見ていると、ベッドの下に潜ろうとしている。


「おいおい、何してんだよ?」

「申し訳ございませんでした。お疲れでしょう!私めにはここで十分です。どうかゆっくりお寛ぎになって体を休めてください」


「大丈夫。大丈夫だって、おまえには十分魅力あるよ。そういうつもりで言ったんじゃないから」


 床との狭い隙間に無理矢理入ろうとするイラーザ。面白い娘だが、その姿は結構あられもなかった。


 上半身が半分入って、小さなおしりをフリフリと揺らす。膝を立てたままでは腰が入らないので股が開いていく。


 おい!待て、なんかヤバイぞ!

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