第141話


 イラーザが、木の棒を振り上げたのが始まりだった。


 なんで自前の打撃杖を使わないのか。一瞬だけ思ったがすぐ納得する。


 イラーザは棒を振り回し、彼らのあそこを打った。何度も、何度も、あそこだけを狙って打っていた。フルスイングだ。身体が傾くほど振り回す。

 黒く長い髪を振り乱し、暴れる姿はまるで夜叉だ。


 怖い…。

 後ろ手に縛られてはいたが、やられる方も無論、素直に打たれたりはしないので、なかなかストライクしない。泣き叫んで逃げる。


最初に打撃を食らった大男が地に伏したまま泡を吹いていた。

 


「お姉様、私も手伝います!」

「あなたは動くと倒れますよ。座っていなさい」


「…この子は病気なのか?」

「いえ、この魔封じの腕輪が…体力減退の呪法がかかっているようで」


 イラーザは説明しながらも、恐怖に震える男達を睨む。


 ああ、二人を拘束するのに使ったんだな。イラーザはそれを、どうやってか外して、係の旅に出たと。


 俺は若干怯えていたので、よくよく考えないでライムのそれを収納にしまってしまった。

 彼女は途端に飛び出した。元気よく走って森に飛び込み、棒を見つけて戻って来た。ライムが加わり、男たちの叫び声が岩山に響いた。



「ぎゃあーーー」「ひー」「うわ、やめてくれ…」

「助けっ…」「「ぎゃっ」「ぎゃあ!」


「私は覚えねーよ!おまえの最後が、どうだったかなんてーーー!」


「アクス、てめーコラー!」

「ヒィー…」

「待って」


「ぐわあ…」

「やめてくれ。本当に潰れちまうよ」


「本気なんだよーー!」


 アクス、てめー…ってセリフ、ライムだよ。お金持ちのお嬢だよね?

 顔も般若みたいだったよ。顔ってそんなに変わるもの?

 

 あわわ…夜叉と般若だよ…。


 俺こそ、おしっこちびりそうになった。同じじゃ…なくない?

 …しょうがないけど。



 イラーザが散らばった焚火から、赤々と燻る薪を持って来て、彼らの股間を焼こうとした時は、流石に止めに走った。


「トキオ様、男の味方なんですか!」

「ち、違うよ…」


 なんか怖いんだよ。

 あと臭い。そこが焼ける臭いとか覚えたくない


「世の中からいらないチン〇は無くしてしまえばいいのです」


「そうですね、イラーザお姉様!」



 …怖かった。

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