第86話
それで、行き先なのだが。
このところ連続で山中に一人ぼっちで過ごし、なんか癒しが欲しかった俺は、ガーに会いに行くことにした。
会いに行く約束をしておいて良かった。
約束していなかったら行けなかっただろう。友達でさえ、暫く会わないと人見知りしてしまう。俺はそんな男だ。
エタニティリザーブを刻んだ消耗から回復して、荷物を整理しながら考え事をしていたら大分遅い時間になってしまった。
でも、ちょうど良い。夜は飛んでも目立たない。
重力と魔法を操れば、鳥のように飛べると知った俺は、怪鳥のように羽を伸ばし、夜空を行く。
「きえーーー!」
奇声を発し、人の力が及ばない領域で、襲い掛かって来た飛行系モンスターを次々と撃ち落とした。飛ぶ事を覚えた俺は、テンション爆上がりだった。
一匹落とすと次々集まって来る。数も大きさも上がって来るが、問題なかった。
こいつらの優位は空から襲う事だった。俺は垂直に移動できる。奴らの攻撃は直球だ。かわしてしまえば無防備甚だしい。
お土産大量ゲットだ。大体は墜落が死因だった。
テリトリーを犯されたとか思っているのだろうか、しつこいなあ。などと思いながら、俺は拾っては飛び立つを繰り返す。実はウハウハだった。
でかいのは亜翼竜って奴だろうか。これは結構なお宝だって噂だ。こんなに一度に稼いだことはない。
札束に羽が生えて飛んで行く、古の散財シーンの逆さまだ。次々と金貨に羽が生えて飛んで来る。幸せだ。
ガーの村はもう近い。そこの山脈を越えた先にある。剣のように尖った山々の向こうだ。空が藍色になって来たけど地上はまだ暗かった。
「きえーーー!」
ノリノリだった。
獲物を回収して空に上がる。前方に近づいて来る岩山のシルエット。真っ黒に見えている広大な森の領域に、チカッと光の点が灯るのが見えた。
俺が炎で落としたけど、見落としてしまった飛行モンスターかと思った。山火事よくない。でもちょっと違うようだ。
上空からなので、ごく小さな点に見えたがあれは魔法だろう。こんな人里離れた所で誰がなにをしているのか。
もしや、ガーが攫われた時のように野盗が集まってなんか悪い事しているのか。俺はなにか気になり降りてみる。
少女が木に登り、亜翼竜と戦っていた。十二歳くらいだろうか。
周りに仲間はいないようだ。何故こんなところに一人で?
仲間は、すでに倒されてしまったのか?
炎の球が彼女の手元から打ち出されると、少女の姿とモンスターの姿がくっきりと暗闇に浮かんだ。
一瞬ドキッとした。俺のよく知っている人間に見えてしまった。
やけに見覚えのある体つきだけど、そんなわけない。彼女はここから遥か彼方、カンガ領ナアシンにいるはずだ。
きっと、新パーティの皆で仲良くやっているはずだ。
談笑したりしてね。
彼女の動きは断然良い。あのパッツン娘とは違う。
いやお見事、頑張ってるなー。
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