第16話
前世で、ハートレスと言われた俺でもさすがに納得いかない。
俺はここまで事態を、隠れて傍観してるような卑怯者だ。
正義感なんてものはない。見知らぬおっさんが、どうなろうと大して心が動かない。多分流す涙だってない。
ただ、おっさんは、動揺してその隙もなかったのかもしれんが、俺の方を見なかった。
助けを求めなかった。俺を巻き込まなかった。
ここは、勇気あるおっさんとしておく。
その、勇気あるおっさんが、ロリコン呼ばわりされ、その家族までもが、ロリコン家系と侮蔑されるのは酷い。
もう我慢できないな伝家の宝刀を抜く時が来た。
俺は、前にエタニティリザーブを刻んだ場所を思い返す。
大丈夫だ、何の問題もない。保険は機能してる。ここで俺の最大のチートを披露する。
『ショートリザーブ』
俺の脳内に、タイマーのイメージが現れる。制限は一時間。
さあ、ここからは仕切り直しができる。俺はわざと音を立てて立ち上がった。
従者達が一斉に目を向ける。
「なに奴!」
弓兵が弓を向ける。俺は戦意のないことを手で表し、ゆっくり丘を降りる。
イケメンとアリアーデ様の前にひざまずき、考えられる限りの低姿勢で、この先の道が危険であること。村人が善意で行動したことを説明した。
返事は想像通りだった。
「下司が。たわけた言い訳を。そんなのが通用すると思っているのか!この少女恋野郎が!」
イケメンが吠えた。
それ、おまえが作った設定だろ?それに、それ俺じゃねえだろ。
彼は、何故か本気で俺をロリコンとして憎んでいる匂いがした。
こいつはバカなのかもしれない?
俺は、銀髪銀眼のアリアーデ様に目を向ける。
美しい毛並みを持つ黒馬の横に立つ、その姿は、二度見どころか三度見するほどの神々しさがあった。
染み一つない白い顔、赤みの淡い唇。光を纏い揺れる白銀の髪。童話に登場して然るべき魅力ある容姿だが、相変わらずである。
貴族にありがちな冷淡な瞳で見下ろしている。
心の無い銀の眼は、色をなさない。何の意思も見えない瞳を向けている。
つまらない物を見る目だ。家畜が夕餉のネタになりたくなくて、何をか鳴いているとでも思っているのだろうか。
どうやら、彼女の今回の出演は童話の悪役のようだ。
まるで戸惑いが見えない。
少しは耳を傾けていいと思われる説明をしたと思うが、話が通じていない。
異星人のようだ。
人を人だと思っていない。先程からずっと俺と目が合っているのに微動だにしない。見えていないようだ。
澄ました顔しやがって、私は間違ってはいないとでも思っているのだろう。
銀色の瞳は作り物のように感情がこもっていなかった。すぐにでもこう言いそうだ。
『下郎、私が間違ったとでもいうのか?
この私がか?
私が間違うわけないだろう?
お前が間違えたのだろう?
お前が生まれたことが、そうして息をしているのが間違いなのだよ!
おほほほほほほ!』
イケメンはこうだな。
『です、です!そうでございます!
流石、流石です!
アリアーデーーー様あぁあぁ!しゅきーーー!』
俺は若干下を向き、ため息をついた。再度アリアーデ様に目を向ける。
「ばーーーーーか!」
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