第3話楽しい楽しいダンジョン攻略!!
ダンジョンとは。一般的にモンスターが恒常的に溢れていて魔力石などの資源に満ち溢れている構造物のことをそう呼ぶ。この世界にはそういうダンジョンと呼ばれる建物が無数にあり、資源獲得を目的として人々は競ってそれを攻略している。
ただ、当然危険度が高いモンスターがいる可能性もあるわけで死ぬ可能性は十分に高い。
だからこそ、冒険者などというモンスターと戦う専門の職業が生まれているわけだ。
「どこのダンジョンに行くの?」
俺はウキウキしながら前を歩いているアリスに聞いてみた。
「学校の地下のダンジョンよ」
「学校?!え、うちの学校の地下にダンジョンがあるの?」
「あんたねえ」
はーっと大きなため息を彼女はついて俺に教えてくれた。
「普通だったら授業で何回か行ってるはずなんだけど……うちの学校の地下にはダンジョンがあって、生徒の訓練用に使われているの」
へー、そうなのか。
俺たちは図書館にやってきていた。懐かしい場所だ。13歳の時に、学校の授業で紹介されて以来きていない気がする。実際来ていない。こんなに本がたくさんあるのか、すごいな。もしかしたらボードゲームについての本などもあるかもしれない。
「こっちです」
体育館ほどの大きさがある図書館の奥の部屋、禁書庫と書かれた部屋に通される。
「禁書?」
「禁書っていうのは文字通り読むことを禁じられた書物のこと。大体危険な呪文などが書かれた本が多いわね」
危険な呪文、へ~
鍵がかかり、中身が見えないように扉が閉じられている本の棚を素通りして俺たちは奥の床へとたどり着いた。図書館の床は基本的殺風景だが、そこの床だけ豪勢なドラゴンの装飾が描いてある。ドラゴンの足部分にあった金具をグレゴリー大臣が上に引き上げるとそこには綺麗に整備された階段が現れた。
「「「おお」」」
グレッグ、レゴリーと俺は歓声を上げる。階段には等間隔で照明が置いてあり、足元が暗いところはない。少しかび臭いにおいはするが、地下なんてそんなものだろう。だが、時々現れる血痕がこの先の壮絶さを物語っている。一般生徒なら十分緊張してダンジョンへと向かうのだろう。しかし!俺は知っている。アインズ先生とグレゴリー大臣、そしてアリスはこの国の中ではとんでもなく強いほうだということを。そして、その三人がいたら俺たちがけがをすることなどありえないということを。というわけで俺は大船に乗った気分でこのダンジョンへと来ていた。
「入る前に装備の確認をしましょう」
アインズ先生にそう言われてみな一斉に装備の点検を始めた。俺は主に魔法を使って戦う魔法使いなのでとりあえず杖を磨き、持っておくことで魔力を途中で補充することができる魔鉱石がバックに数個入っているのを確認しておいた。そのほかアリスは剣と鎧の動作確認を、グレッグは彼自身が使うこととなる手榴弾やそのほか武器の確認をレゴリーは盾を持ってイメージトレーニングをしていた。
「では、行こうではないか」
グレゴリー大臣の合図でダンジョンのドアが開かれる。血が混じった水のにおいが辺りに広がった。
一応前衛であるアリスとレゴリーを先頭にして次にアインズ先生、俺、グレッグそしてグレゴリー大臣の順で進んでいく。水が滴るぽたぽたとした音が迷宮内には響き渡っていた。いつもはふざけている俺たちも一応今この時は静かにダンジョンの中を進んでいた。
「このダンジョン、実はあんまり危なくない説ない?」
俺の後ろを進んでいるグレッグが更に後ろのグレゴリー大臣に聞こえないように小さな声で言う。
俺にとっては初めてのダンジョンだが同じようなことを考えていた。あまりに敵がいない。さては学校の地下にある訓練用のダンジョンだからほとんど強い敵がいないのだろう。
「きた!右!!!」
そんな思考はアリスの叫び声にかき消された。グレゴリー大臣、アインズ先生が一斉に武器を構える。俺たちもその人たちにつられるようにして武器を構えた。十字路に十字路になっていた通路の右側からやってきたのはゴブリン達だった。人間たちに最も馴染み深いモンスターであり、学校などでも一番最初に習うモンスターだ。子供たちへのおとぎ話などに多く登場する。緑色の小さな体と手に武器をもって襲い掛かってくる。もちろん、俺は本物を見たのは初めてで。その迫力に少し手が止まった。
「はあっっ!!!」
掛け声とともに剣を持ったアリスが躍動する。剣を鞘から抜いたかと思うと刹那の間に先頭のゴブリンの体が真っ二つになる。緑色の体液が周りへと飛び散った。レゴリーも盾でゴブリン達の攻撃を防いでいる。おれもそろそろ攻撃してみるか。
「水よ、顕現せよ!!!」
俺がそう唱えると杖の周りに拳大ほどの水が集まり、それをゴブリンへと当てる。それだけだとゴブリンが軽くよろめくだけだがその後に……
「水よ、凍れ」
そう唱えることでゴブリン達についた水や、足元の水が固まる。
「ほう、うまい使い方ですね」
俺の魔法によって前方にいたゴブリン達は体のバランスを崩して倒れていった。
「ナイス!!」
その隙をついてアリスが剣でゴブリン達を一掃する。
「これで仕上げだ!」
最後に残った数体に向けてグレッグが爆弾をなげ、ゴブリン達はいなくなった。
「ふー、こんなもんか」
例え、相手がゴブリンといえども初めてのモンスターとの戦闘は緊張感に満ちたものだった。今でも額には脂汗が浮いている。
「そうですね、授業時間的にもあと一グループぐらいのモンスターと戦ったら帰りましょうか」
アインズ先生の合図で一団はダンジョンの先へと動きだす。独特な緊張感が辺りには漂っていた。アリスが先導し、油断のない目つきで回りを見まわしていく。やっぱり頼りになるな、アリスは……ふー。
「「ライト王子!!!」」
「え?」
俺はその瞬間、自分が踏んだダンジョンの床が落ち始めていることに気づいた。急いで助けに入ろうとしているアリスも、目を見開いて驚いているグレッグもレゴリーも、洞窟に落ちる水滴も、死んでいるゴブリンでさえ世界の何もかもがスローモーションに見えた。アリスは自分に対して手を伸ばしていたが、もう自分の体は半分ほど床に沈み込んでいて掴めないことがわかっていた。
そのまま俺は暗闇へと吸い込まれていった。
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