第2話授業強制参加イベント

王族に転生した俺、もとい西園寺恭介(=ライト)はこの現状に狂喜乱舞していた。元々日本の中流家庭に生まれたが故に、高校生の時のような引きこもりニートを大人になっても続けるわけにはいかず、どんな形であれ働かなければいけないと覚悟していたが王族に転生したことで自分は一生働かずに寝ていたとしても生きていけることが確定したのだ!人生においてこれほど喜ばしいことがあろうか。などと。

が、そんな喜びは一瞬だった。ライトの記憶によると別にそんなことはないらしい。まあ、当たり前である。そこらへんの貴族ならまだしも俺ことライト・プランネットは直系の王族である。直系の王族として最低限出るべきパーティーなどもあるし彼の過ごしていた日々は俺が思い描いていた理想の日常とはかけ離れていたものだったのだ。俺の中の西園寺恭介の人格は落胆していた。






翌朝になって俺は学校を休校とすることを決定した。学校が休校となっている訳ではないが俺が決定したのだ。学校が従ってほしい。いや、従うべきだ。俺はこの国の皇太子だぞ!!これに従わないのは王族に対する不敬である!!というわけで俺はいつものボードゲーム溜まり場に向かっていた。ブラボー!ボードゲーム!今日も今日とて遊びに明け暮れようとしていた。

「おっと」

俺たちのいつものたまり場には禿げ頭のこの国の重鎮がいた。俺は見つからないようにそばの物陰にすっと隠れる。あの大男はグレゴリー大臣、俺がいつも遊んでいるグレッグの父親である。今はランカスター王国の軍事をつかさどる官庁の大臣を務めていて、この国にいるのにこいつを知らないやつはもぐりだと言われるほどに有名な人物でありもう二十年ほど、この国のどこかの大臣を務めあげつつけている。頭はスキンヘッドで厳つい顔をしていて背丈も高くとても怖い。自分の子供の友達ということで俺も小さい頃からよくあの人に叱られてきた。あの人が怒るとそれはもう人生の終わりのような心地がしたものだ。そんな人がなぜここにいるのだろう。そろそろ自分の子供を学校に行かせなくてはいけないと思ったのか。

「《お久しぶりですね》ライト皇子」

「ゲッッッッアインズ……先生」

目の前の男に夢中になっていた俺は背後から近づいていた学校の教師に気づかなった。

「なぜここに?」

「グレゴリー大臣が学校にいらっしゃった時に、こそこそと隠れてここに入るご子息を見つけたようで。それで担任であるわたくしも呼ばれたというわけです」

その老教師は厚い縦縁眼鏡をくいっと上げた。グレッグ~何やってるんだ、といいたいところだがグレゴリー大臣の言いようがないほど凄まじい怒鳴り声がこちらにも聞こえてきて彼に対しての恨みよりも憐みの感情がまさる。よかった~まだアインズで。

「その様子だとグレゴリー大臣じゃなくてよかった~などと思っていそうですね」

ぎくり。

はー、とアインズは俺の前で大きなため息を吐いた。

「授業を休みたい気持ちもわからない訳ではありませんが……このままでは学校を卒業していない初めての皇太子になってしまいますよ」

大変恥だが、俺はもうそれでいいぞ。そういう生き方をして生きていられるのであれば俺はずっと怠けて生きていたい。だが、

「学校にまったく行かずに卒業できる方法などは?ない、ですか?」

「そんな都合がいいものはありません。諦めてください」

じゃあ、行くしかないのか。

アインズはそんな俺を見るとにやりと笑った。

「そういえばこのボードゲーム達は預かっておきます」

それは俺たちが数少ないお小遣いで苦心して集めたボードゲーム達だった。

「そんな、殺生な」

あれがなければ生きている意味がない。

「返してほしければ、明日の実習に出てください。そうすれば返して差し上げますよ」

「くっ、卑怯な!!俺たちの大事な宝物を盾にするなんて」

「人聞きが悪いことを言わないでください、授業に出るのは当たり前のことですよ」

授業に出たくて出れない奴もいるんだぞ!

「では明日来なかったらあなたたちまとめてグレゴリー大臣に叱ってもらいますからね」

あ、行かせていただきます。




翌日、俺はいつものたまり場へと向かおうとする体の抵抗を感じながら学校へと向かった。途中、おでこにカットバンを付けたグレッグを見つける。

「おい、大丈夫か?」

「あ、ああ。ライトか。どうにか」

グレッグとは昨日会わなかっただけだが、大変憔悴しているようだった。この様子だと、グレゴリー大臣からこってり絞られたのだろう。おそろしや。

「うわ、ひでえ顔だな」

いつの間にか横にはレゴリーもいた。

「おやじもあんなに殴ることねえと思うんだけどなあ」

そんなグレッグの横顔を見ながら、今日学校に来てよかった~と俺は思った。

「よく来ましたね」

俺たちはいつもの学校、に来たはずだったが学校の門の前にはアインズ、そしてアリスとグレゴリー大臣がいた。

「「「ゲッッッッッ」」」

俺たち三人の天敵が揃い踏みをしていた。

「ゲッとは失礼ね、あなたたち!」

「こんなことを言うのはあなたたちに対してだけなんですが、よく学校に来ましたね。てっきり来ないものと思っていましたよ」

「……久しぶりですね。ライト様」

ただ、奇妙なことが一つ。アリス、アインズ先生、グレゴリー大臣、三人がそこに並んで立っていたのだが彼らは全員武装していたのだ。それこそ他国との戦争やモンスターと戦う前のように。

「なんでそんな完全武装を……まさか俺たち処刑されるのか?」

「落ち着けレゴリー、王位継承争いがあるライトはともかく俺たちは殺される理由がない……はずだ」

王位継承争いはあるけども俺は処刑されねえよ。全くもって候補にすらなってないからな。ははははは!!

「処刑ではありません、授業です」

「授業?」

「じゃあ、なんでクラスメートじゃなくて父ちゃんが一緒なんだよ!」

もっともな指摘だという風に俺とレゴリーはうなずいた。

「実習の補助役として入ってもらいました。並の教師ではあなたたちを抑えられる気がしないものなので」

「私もそう思うわ」

実習?

「ええ、今日は授業内の実習としてダンジョンに潜ります」

「「「ダンジョン?」」」

「ええ、ダンジョンです。この学校にいる生徒たちはみな将来この国を背負って立つ大人達に成長すr……」

ここでアインズは言葉を切り俺たちのほうを冷ややかに見た。

「るはずですね。はずです。そしていま、ランカスター王国は周辺国と緊張状態にあります」

急にまじめな話になってきた。

「大人になったみなさんをどこかの国の刺客が襲う。または皆さん自身が戦地に赴き戦う。これは十分にありえることです。それに備えるための戦闘経験を積むのです」

「戦闘経験……」

「特にライト皇子、あなたは。あなたがどれだけ嫌がったとしても、だらけようとしても怠けたとしても周りはそれを許さないでしょう。あなたこそ戦闘経験を積むべきなのです」

「だから、ダンジョンに行くわよ!!私達と」

というわけで6人でのダンジョン実習が決まったのだった。
























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