面倒くさがり屋な俺が異世界の国の王族として転生できたので好きなことだけして生きていきます!!
絶対に怯ませたいトゲキッス
第1話目覚め
俺はライト、18歳。中肉中背で黒い髪をしていて、ランカスター王国付属第一学校に通っている学生?である。また一応、ランカスター王国国王の第七皇子でもある。ただ誉れ高き王族の生まれであるのにも関わらず、そこらへんの者からは怠け者の第七皇子だの、究極の自由人だの、皇子でなければのたれ死んでただの、将来が心配だの、王位継承のぶっちぎりの第七番手(ちなみに俺が住んでいるランカスター王国に皇子は七人しかいない)だの好き勝手なことを言われている。王族を馬鹿にする大変不敬な奴らだがそいつらの言うことにも一理はある。王位継承で俺が七番手というのは俺が王位を狙っていないから間違ってはいないし。最近になって俺は気づいたのだが、俺は一日に何時間も集中して机に向かうことが無理な体質らしい。というわけで俺は学校に向いてないことがわかりほとんどの授業をさぼっている。それに加えて魔法の鍛錬などを行っているわけでもない。だからなかなかその噂も間違っているわけではないということだ。
ところで、みんなは前世の記憶というものを思い出したことがあるだろうか。俺はある。ついさっき思い出したところだ。そう、俺が趣味のボードゲームをやっている時だった。
「はい俺の勝ちーーーーー!!!」
「あーはいはい、くそげーくそげー」
「運ゲーで勝っただけだから黙れ」
学校の中の部室でボードゲーム仲間であるグレッグとレゴリーと空前絶後の大型ボードゲーム『ロック』を遊んでいるところだった。四時間にも渡る壮絶な戦いを勝利で終えた後、戦った二人に見せつけるようにガッツポーズをし、勝利の舞を踊り始めた。
「あそれ、よいよい!!」
いじけている二人を横目に俺が更なる煽り芸を繰り出そうかなと思っていたところ、
「えい!!!」
頭を馴染み深い特大の衝撃が襲い、俺はまたかよと思いながら気を失った。
「恭介~お前次いつ学校来るんだよ~」
夢の中で俺は西園寺恭介という日本人の高校生だった。日本?高校生?今までの人生で聞いたことがない言葉だけど一回聞くと不思議と聞き馴染みがあり懐かしさを覚える。そしてその意味でさえもはっきりと分かる。むしろなぜ今まで忘れていたのか不思議なほどだ。
「うーん、とりあえず今やってるrpgゲームが終わってからだな~」
そういうと夢の中の通話相手が爆笑しているのが俺にはわかった。更に俺はそういえば夢の中の俺(=西園寺恭介)は男子校に通っていたなということを思いだす。高校三年生という受験学年にも関わらず西園寺は不登校寸前の堕落した生活を送っていた。ゲームや自分のやりたいことのみを優先しほとんど学校に行っていなかったのだ。
「卒業は?出来んの?」
「出来んじゃない、うちの学校そういうのには甘いし」
ほかの特段とした事情はなく西園寺はただただ自堕落なために学校に通っていなかった。どうせ出席しなくても単位をくれる甘い教師に甘えて。
「明日のテストも受けないってやるなぁ~」
「え?明日テストなのか?」
西園寺恭介、一生の不覚。まさかテストの日付をチェックし忘れるとは。テストを受けないと教師も成績を低くつけざるを得なくなる。なので高校留年だけは何としても回避したい俺としては受けなくてはいけない。
「じゃあ、行くか~」
そうして俺こと西園寺恭介は二週間ぶりに学校へと行く用意をして家を出た。
「行ってきまーす」
雲一つない晴天の空だった。うーん、暑い。こんなんだから外には出たくなくなるんだ。イヤフォンをしてスマホを見ながら歩いていく。綺麗な青空にもかかわらず俺の心は踊ることはない。冷房が効いた室内に戻りたい。これがプロの引きこもりである。
「危ない!!」
そんな声にふと目を上げると目の前にはトラックがいて…
「は?」
その瞬間、俺の視界は真っ赤に染まり自分の体がひしゃげるいやな音がした。
「うん、イタタ」
目を開けると目の前には白く清潔な壁と回っている換気扇があった。見たことが或る天井だ。俺が行っている第一学校の保健室のものである。
「ライト!ライト!」
「はっ!!」
一瞬で頭に送り込まれた情報の量に、俺は一瞬停止していたみたいだ。目の前には少し涙目になっている幼馴染がいた。
「アリス……」
金髪碧眼のその幼馴染はその端正な顔に涙を浮かべて俺を見つめていた。
「大丈夫?」
俺はとりあえずコクコクと頷いた。
「よかったあ~」
そう言うとアリスは俺に抱きついてきた。彼女の大きな胸が俺の胸に当たり、おっこれがラッキーすけべか、と思った直後、彼女と俺の密着度が上がり、俺の骨が締め付けられ折れてしまいそうなほど抱きしめられる。
「痛い痛い痛い、折れる、折れる、肋骨が折れちゃう~」
「あ、抱きしめすぎちゃった」
軽く死にかけた後、俺はどうにか息を整える。相も変わらず凄まじい怪力である。
「よかった、目を覚ましても十分ぐらい虚空を見つめているから何かあったか心配だったんだ」
「そもそも俺がさっき、気を失ったのはお前のせいだけどな」
目の前の幼馴染は照れ臭そうにテヘっと笑った。めちゃくちゃ可愛いけどさっき俺にやったことを考えると少しも可愛くない。
今俺の目の前にいる金髪碧眼の女は俺の幼馴染だ。名前はアリス、年は俺と同じ18歳。代々続いている騎士の名門の家系に生まれた子でもちろん、彼女自身もかなり強い。前述したように力がゴリラみたいに強くて(彼女に対してこれを言うと涙目になるので絶対に言ってはいけない。乙女は繊細なのだ)男を含めても同年代で彼女より強いものはほとんどいないといわれている。背も高く俺と同じぐらいある。そして、その鍛えられた肉体故か女性的なメリハリがついた艶やかな体をしている。
「いい加減俺の頭叩くのやめてくれん?そろそろ死ぬ気がするわ」
顔も大層整っているのにも関わらず彼女が男から人気がないのはそのがさつさが原因である。どこか抜けている所がある彼女はスキンシップをしようとして力加減を間違え人をケガさせることがよくある。俺も学校をさぼった時にはいつも頭を叩かれているのだが三回に一回ほど意識を失っている気がする。
「うーん、でもいつも叩いてたらライトの頭も衝撃に強くなるはずじゃない?なんで強くならないの?」
こういう調子である。俺はもうこういうやり取りを十年以上続けているので慣れたものだが。
「お前の力もその分強くなってるんじゃないか?」
「あー確かに」
それぐらい自分で考えてほしいものである。
「じゃあ、俺はこれからまたボードゲームをしないといけないから。またな」
「明日は学校来なさいよ~」
「気が向いたらな」
そういって俺はアリスと別れた。
自室で俺は少し考えていた。夢で聞き、見た西園寺恭介という人物、そして日本という国。高校生。いままで聞いたことがない単語なのに、今の俺にははっきりとその意味が馴染み深く頭の中へと刻み込まれている。西園寺恭介という奴の生きていた記憶も、物心着く前の曖昧な時から18歳のあの夏の日に死ぬ瞬間まではっきりと覚えている。そして極めつけにはあいつの性格。俺と大変似ている、というかほぼ同一のものであるといっても過言ではない。どうやら、西園寺恭介は俺の前世らしい。
俺はそのような確信をした。
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