Extra Episode:異世界Vtuber
ずっと締め切っていた部屋の窓を、思い切り開けて空気を入れ替えた。
こまめに掃除はしていたが、窓を開けると『あの子』が本当にいなくなってしまう気がして、中々できなかったのだ。
でも、もうすっかり気持ちの整理はついた。
ベッドを運び出し、様々な不用品を処分した。残ったのはあの子が大事にしていた様々なグッズと、常に傍らにあったパソコンと、ヘッドフォンだ。
パスワードは聞いている。あの子のアカウントでパソコンにログインすると、びっくりするくらいデスクトップが散らかっていた。そういえば片付けは上手ではなかったな、と思い出し、少し寂しくなる。
ブラウザを開いて、お気に入りに入っていた動画サイトを開く。有料会員は解約したが、アカウントは残ったままだ。
動画サイトのトップページに並んでいたのは、おそらくあの子が日々見ていたであろう配信者たちのサムネイル。
何度かお気に入りの曲を聞かせてもらったことはあるが、正直良さはあまりわからなかった。――でも、共有しようとしてくれることが、嬉しかった。
部屋の掃除をしながら、あの子が好きだった配信者たちの動画を適当に流す。歌がメインだったので、数分おきに切り替わっていく。
あの子と一緒に聞いた曲も中にはあった。思い出して、泣きそうになる。
掃除が終わり、パソコンを閉じようとしたとき。
――聞き覚えのある声が、聞こえた。
『――異世界から、こんにちは!』
そんな前口上から始まったのは、初めて聞く、でも聞き覚えのある声の、優しい歌。
思わずパソコンに駆け寄り、動画を見た。
画面上で微笑む少女に見覚えはない。――でも、懐かしい声だ。
しばらく前に投稿されたらしいが、どこの誰なのか知る人はいないらしく、コメント欄は歌を褒める感想に加えて、少女の正体を問う声で溢れていた。
「――夢、叶ったんだね。おめでとう」
無関係の他人かもしれない。でも、なんとなく、そうではないと、わかった。
思わず涙が零れる。曲中で歌う少女はとても楽しそうで、歌声はとても素敵で。
「よかったね、月乃」
私は、世界に感謝した。
曲が終わり、最後にアーティスト名が表示される。
そこには、『異世界Vtuber / 天乃月子』と記されていた。
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これにて『異世界Vtuber』は完結となります。
読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
このお話は完結ですが、この世界の物語はまだ続いていきますので、
興味があればまた是非私の作品を読んでみていただけると嬉しいです。
評価や感想などいただけると励みになるので、よろしくお願いします。
2024/11/19 里予木一
異世界Vtuber 里予木一 @shitosama
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