第11話 出立ち
「すごい盛り上がったね」
「異国の物語りは最大の娯楽ですからね。イチカ様の歌も大変興味深いものばかりでした」
「疲れた……」
良いものを聴かせて貰ったお礼として、住民達から大量の海産物を貰った。
「乾物系は正直有り難いね!スープとかちょっとしたおやつとか……」
「スルメ!とば!」
海産物は日本のソウルフード。嫌いなはずもなく。
宿に戻ると受付に一人の少女が立っていた。
「ライラ!?」
数時間意識の無かった少女が目を覚ましていたのだ。
「良かった、起きたんだね!」
「はい。皆さま方、大変ご迷惑をお掛けしました」
ライラは申し訳無さそうに三人に深く頭を下げた。
「ライラ。もう無茶はしないでください。もしあなたの身に何かあったら、フローレンになんと言われるか……」
「はい……。そうですね。もう無茶はしません」
「しかし驚いたよ。君の魔力は殆ど尽きていたから、一日中は起きないんじゃないかと思っていたんだ」
「えぇ…実はわたしも、たった数時間で起きれるとは思ってもいませんでした」
いくらなんでも魔力の回復速度の速さにアリアンとライラが首を傾げつつも、これからの予定を彼女にも話したところで彼らは次の場所へ向かうための準備を始めた。
*
翌朝、彼らはココット村を発った。
イチカの歌のお陰か村の人達から盛大に見送られながら、瘴気が発生してるという領主の街を目指した。
「馬車欲しい〜!」
「それ僕のセリフだしそもそもイチカちゃん歩いてないじゃん」
あれから数時間。ずっと同じ景色が続いてるせいか、最初に音を挙げたのはイツキの頭の上に居座るイチカだった。
「そういえばイツキ、休まず歩いてるけど足大丈夫なの?」
インドア派のイツキが長距離も歩けるはずがないとイチカは分かっているので、疲労の色もそんなに見せていないイツキに少し驚いていた。
「うん。不思議と疲労感は無いし足も全然痛くないんだ」
「それは恐らく、疲労軽減の付与魔法を施したブーツのお陰でしょう」
「至れり尽くせりだな!?」
「旅慣れしてない人用のための初心者セットはひと通り身につけさせていますのでご安心ください」
「あとは幾らか自衛が出来れば完璧なんだけど……」
イツキの膝ぐらいしか無いゴブリンでさえ、剣を抜く勇気が無くて逃げ出してしまった始末だ。イツキは己の不甲斐なさに溜め息を溢した。
道中は思ったよりもスムーズだった。途中何回か魔物に襲われたが、アリアンとライラが瞬殺してくれる。
特にアリアンのアクションゲームさながらのスタイリッシュな動きに、後ろで見守っていたイツキとイチカは大変盛り上がったのであった。
竜の唄〜剣使いの兄とドラゴンの妹〜 @mimi_PPP
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