秋の句

男衆おとこしの声猛々たけだけし秋祭り〉


 これは、元々は地元(須賀川)の秋祭りの様子を詠んだ句です。

 ですが、二本松にも代表的な「秋祭り」があります。それが、「二本松の提灯祭り」。

 私の二本松藩関連の作品でも、「直違の紋~」のスピンオフ作品である「父の背中」や「白露」でも会話に出てきますが、それくらい「二本松」を語るうえでは欠かせないお祭りです。


 ……が、俳句として使う場合は一つ問題が。

 何と、「提灯」の季語は「夏」なんです(泣)。そんなわけで、渋々「秋祭り」に句意を集約させた次第です。


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安達太良あだたら仮寝かりね覚ますや添水そうず


 これは、がっつりと「実景句」。昨年の秋に二本松の取材で「龍泉寺」を訪れた際に詠んだ句です。

 丁度この前、俳句ポストで春の季語として「山笑う」が取り上げられたばかりですが、それと対比させるような「山眠る」という季語があります。こちらは冬の季語ですが、その直前(立冬ギリギリでした)に訪れ、「うたた寝(=仮寝)」の安達太良山も、「添水の音=ししおどし」にびっくりしてはっと目を覚ます……なんていう、ちょっとした遊び心を入れてみました。

 安易な擬人化はNGらしいのですが(苦笑)。

 ですがワタシは、結構この手の遊びは好きだったりします。


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戦場いくさばつまを映すや秋の水〉


 拙作、「白露」の一場面からの句です。

 https://kakuyomu.jp/my/works/16817330664784502587


 ネタバレになりますが、これは主人公笠間市之進いちのしんの妻である妙が、運命の7月27日の朝、洗濯をしようと洗濯桶に張った水に夫の顔が映し出され、それで夫の戦死を悟った……というエピソードを、そのまま句にしてみたものです。

 一応これでも郷土史家の端くれ(史談会会員です)なので、史実かどうか……という議論が持ち上がるであろうことは承知しております。ですが、それは私にとっては些末な問題です。本当に伝えなければならないのは、二本松藩士の妻にとって、子孫に語り継がずにはいられなかった悲話である……ということ。

 幼馴染であり、兄とも慕っていたであろう夫を送り出し、そしてその死を悟ったときの妻の心境を思うと、やはり涙せずにはいられません。


 ***


 益荒男ますらお御霊みたま抱けり銀杏黄葉いちょうもみじ


 昨年秋に墓参した、二本松市大隣寺だいりんじの光景からの一コマ。大隣寺は歴代の二本松藩主の菩提寺ですが、同時に、多くの家臣らの菩提寺でもあります。

 そして、ここには二本松少年隊らのお墓があります。

 その大隣寺には、大きな銀杏いちょうと枝垂れ桜の木があります。いずれも、戊辰戦争で傷ついた藩士等の魂を慰めているかのような光景が、印象的でした。




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