第12話 やっぱりポーションってのはファンタジー薬か
正直言って、あの騒ぎが繰り広げられたギルドに入るのは嫌だったけど、集めた薬草を納品しないわけにもいかず、意を決してギルドへと入った。
自分の目でみると、改めてヤバさを実感する。
元クラスメイトが4人来ただけでこれだ。絶対に会いたくなくなった。
『あ、今嫌な予想が浮かんだんだけど、俺にも元クラスメイトみたいな呪いがかかっているなんて無いよな?』
『検証不能。少なくとも同種の呪いはかかっていません』
そうだよな。自分と自分の周りに発動するんなら検証できないよな。少なくとも知能の低下はないっぽいのでそれを喜ぼう。
荒れてはいるが、なんとか稼働している納品窓口とクエスト完了受付で処理をしてもらい、4回分のクエストを完了した。
『はぁ疲れた。ギルドでこれなら、お城の方でも問題になってるんじゃないか?』
『肯定。その可能性が高いです』
4人でこの騒ぎ、それが38人集まったら……。おおぅ、バイオロイドなのに鳥肌が立った。恐ろしい呪いだ。
『ポーションを買って、宿に戻ろう。外にいると安心できない』
『了承。道具屋へのルートを表示』
少しびくびくしながらも買い物を済ませて宿へ戻ってこれた。シオンが監視しているから、ばったり出会うことは無いんだけど、心情というのはどうしようもない。軽いトラウマになってるよ。
今日はもう引きこもることを決めて、予定通りポーションの効果検証を行うことにした。
『成分調査のために、少量を口に含んでください』
『了解。んっ、んへぇ、にっがぁ』
薄い青色をしたポーションの味は、草の苦みを凝縮したようなひどいものだった。苦みがいつまでも舌にまとわりついて、自然と顔がくしゃくしゃになってしまう。
『ダメだ苦すぎる。味覚を遮断する』
『分析完了。効果、消炎鎮痛作用。傷を瞬時に治癒するような未知の成分は検出されませんでした』
『やっぱりポーションってのはファンタジー薬か』
シオンの調査では、ポーションの効果の原因を特定できなかった。ということは、ファンタジー要素の魔力が関係している可能性が高くなったな。
『続いて半量を服用してください』
『んっ、飲んだぞ』
バイオロイドの内臓機能は、性能は違えど基本的には人間と同じだ。心臓もあるし、肺もある。飲み込んだものは消化器官に運ばれて、適切に消化吸収され、排出される。その過程で体内に取り込まれた成分は、血流に乗って全身を巡っていく。
『科学的に予想される効果を超える作用はないようです』
俺も注視していたが、魔力とやらが体に影響を与えることはないっぽい。
『俺の体には魔法的な効果がないのかもしれない。他人へかける補助魔法とかも効果がないのか気になるな』
『推定。体内に魔力が存在しない可能性』
ポーションは、体内の魔力に作用して効果を発揮すると考えられているため、その効果がないということは、俺の体内に魔力がないとも推測できる。
また、お城の図書室で得た情報になるのだが、魔法使いというやつは、魔力の知覚ができるらしい。異世界からの人の拉致などという大事を成した者の中には、魔法使いもいただろう。
そして、俺のアクティブステルスは電磁的・熱的に透明になることはできるが、魔力的にはなんの隠蔽効果もない。それでも脱出に成功したとなると、俺の体内に魔力がないことの状況証拠になるかもしれない。
『魔力がなくて良かったのかもな』
『肯定。魔力がなくともフルスペックで活動可能です』
もし魔力があったなら、お城から脱出できなかったかもしれない。ポーションや魔法が効かないかもしれないことも、バイオロイドであれば問題にならないし、デメリットといえば、自分で魔法が使えないくらい?
いや、これは結構なデメリットかもしれない。異世界に来たなら魔法は使ってみたいだろ。
『他に何かやれることはあるか?』
『現時点でこれ以上の検証は不可能です』
まず第一に魔力の検知。これに成功しない限り、魔法的な事象の検証は不可能だ。現状ではその方法に見当もついていないが、魔法使いは魔力を知覚できるというから、何らかの方法はあるのだろう。それを調査するのが取っ掛かりになる。
『提案。元クラスメイトの遺伝子の採取。魔法使いの遺伝子の採取。魔法使いの生理学的調査』
『元クラスメイトに接触するのは却下だ。呪いが怖すぎる。魔法使いの方は……、冒険者をやってればそういう機会はありそうだな』
遺伝子を採取したとしても、それを解析する設備がないので、優先順位は低くなる。何にしても、まずは冒険者としての生活を安定させることと、ダンジョン都市へ移動することだ。大掛かりな設備を準備するには、拠点も必要になる。
『明日、Fランク冒険者になれたら。すぐにダンジョン都市へ移動を始めるか』
『了承』
『じゃあ今日はもう休む。おやすみ』
『おやすみなさい』
『睡眠剤は注入しなくて良いからな』
『了承』
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