第10話「勇者、幽霊屋敷へ行く」

「さっそく光魔法とやらを試しましょうよ!」


 そう言って剣士ちゃんが掲示板から持ってきた依頼書は幽霊屋敷の除霊だった。たしかに光魔法なら出来ると思うが……。


「でもまだ覚えたてだし、効くかわかんないよ……?」


 不安な表情を見せる勇者ちゃん。

 それもそうだろう。何せ覚えたてなのだから。


「そんときゃそんときよ!」

「ご安心ください勇者様。私の銀にも除霊効果はあります」

「……そうなの?」

「多分」

「多分て!!」


 わいのわいのと話す一行。

 ひとまず日が暮れる前に幽霊屋敷へと赴くのだった。

 街の郊外にあるそこはボロボロでいかにも何か出てきそうだ。


 勇者ちゃんはメイドちゃんの背後に隠れて怯えている。

 そんなことで勇者がどうするんだ。


「こら! アンタが倒すのよ!! もっとシャキッとしなさい!」

「うわああああん! 幽霊だけは嫌いなんだよぉおお!」

「そんなこと言ってないで……行くわよ!」


 勇者ちゃんの背中を押して幽霊屋敷へと入る一行。

 突如として扉がゴゥン! と音を立てて閉まる。

 ビクリ、と一行は少しばかり跳ねた。


「メイ? いきなり閉めないでよね」

「残念ながら私ではありません」

「う、ううう……やっぱ帰りたいよぉ……」


 そのまま一塊になって幽霊屋敷を散策する一行。

 別段おかしなところはないけれど……。


 あ、人魂だ。


「きゃああああああああああ!?」


 光魔法を必死に発動しようとする勇者ちゃん。

 しかしテンパっているので何も出てこない。


「うらめしや……」

「おや、なにか言ってますよ」

「屋根裏に……財宝隠した……処分して欲しい……」

「財宝!? 財宝ですって!!」

「そ、そんなことよりおばけがぁああああああ!」


 勇者ちゃんが聖剣で殴りかかると、人魂は霧散して消えてしまった。流石聖剣、除霊効果もちゃんとあるようだ。


「では屋根裏とやらに行ってみましょうか」

「未練を晴らせば、この屋敷の幽霊も成仏するかもですしね」

「今殴ったのはなんなの!?」


 人魂って本体じゃなくてビット的なアレらしい。

 知らないけど。

 しかし今回俺の出る幕はなさそうだな、と思っていたら。


「うわ、うわうわうわ」

「これはいけませんね……」

「二人ともどうしたの!? 早く降りてきてよ!!」

「いえ、勇者様には刺激が強すぎます。私が処分しておきましょう」

「あ、ずるいわよ! 私にも見せなさい!」


 おや、なんだろう。メイドちゃんからこちらに荷物の送信願いだ。言われた通り、転移魔法で懐に閉まったものを転移させる。


 ………………。

 スケベな本が山盛り送られてきた。なるほど。こんなお宝を隠してたんじゃ幽霊も成仏できないわな。


 それからすっぱり幽霊の気配はなくなり、三人は依頼人に報告しに行くことにした。可憐な未亡人だ。エロ本については黙っておくことにしたらしい。うん、賢明だと思う。


 で、どうすんだよこのエロ本。

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