第4話「勇者、メイドを仲間に」

 お土産にメイドちゃんは喜んでくれて本日の夕食は豪華なものになった。申し訳ないけど、やっぱり買ったものの方が美味い。多分、メイドちゃんの種族と食の嗜好が合ってないんだろうな……。


 翌日になると、勇者ちゃんは冒険者ギルドで仲間集めを始めた……ばいいんだけど、魔王討伐募集!!なんて看板を大きく掲げている。あれで人が集まるはずないよ……。


 どうしようかな、このまま見守っててもいいけど。あ、そうだ。


「はい? 私が勇者パーティにですか?」

「そう、いわゆるスパイってやつだね」


 メイドちゃんに声をかけて勇者パーティに入ってもらうことにする。この方がハッキリ言って色々安心だ。メイドちゃんは四天王に顔がバレてないはずだし。ていうかあいつら人の顔覚えねぇからな。興味あるやつ以外。俺は当然覚えられてる。


「そもそも魔王様が変装して加わればどうですか」

「う〜〜ん流石に魔力の質でバレちゃうかなって」

「まぁ、魔王様ほどの魔力はそうありませんからね」


 そう、俺が勇者に加担していたなどバレてしまうと、百歩譲ってバレてもいいけど俺が直接四天王をボコったと知らられば後々の治世に不満が残る。そういうのを避けるために直接手を出すわけにはいかないのだ。


「わかりました。では準備してきます」

「お願いね」


 メイドちゃんはさっそく着替えてくると、忍び装束というか格闘家らしい衣装になって戻ってきた。両腕には銀の鎖が巻かれている。何かの武器なのだろうか……?


「荷物も持ちましたし、それでは送ってください」

「では頼むよ〜〜」


 そんなわけでメイドちゃんを転送。

 さっそくどうなるか水晶玉から見ることに。おっ、看板を掲げている勇者ちゃんに近づいていく。


「すいません、お仲間に加わってもよろしいでしょうか?」

「おおー! 君も魔王を倒したいのかい!?」

「いえ、そのような……恐れ多いことは………あ、ありまぁす!!」


 なんかゴニョゴニョ言ってたけど、ちゃんとスパイとして活動してくれそうだ。よかったよかった。二人はさっそくゴブリン退治に行くらしい。昨日のリベンジだな。


 まずは見張り……先日の件もあって、前回よりもひりついてる感じだね。ここはどうするのかな。


 メイドちゃんが鎖を上手く操って……。

 ゴブリンたちに巻きつけて動けなくした!

 そのまま勇者ちゃんが二体を切り裂く。


 うへぇ、ちょっとグロいな……と思ってたら、煙になって消滅しちゃった。魔物は煙になって消えちゃうのか。


「このまま行きましょう……ところで内部でもその剣を振り回すつもりですか?」

「ううん? 神官さんからアドバイスをもらってちゃんと用意してきたんだ!」


 そう言って大きめの短剣を取り出す勇者ちゃん。これならゴブリンたちも倒せそうだ。


「お金はどうしたのです?」

「冒険者ギルドで借りたよ! トイチで!」

「……今回の報酬はすぐさま返済にあてないといけませんね」


 やれやれと肩をすくめるメイドちゃん。

 そのまま洞窟の奥へと進んでいく。

 勇者ちゃんは松明を持っているが、メイドちゃんは暗視が使える。暗い洞窟でも見通すことができるようだ。当然、俺も使える。


 遭遇するゴブリンを倒しつつ、奥に進んでいく二人。奥には成人男性ほどの大きさがあるゴブリンと、杖を持った怪しげなゴブリンがいた。


 あれは確かゴブリンシャーマンとボブゴブリンだったかな……。あ、シャーマンの睡眠魔法で二人とも寝ちゃった!


 しょうがないなぁ……透明化して、転移!

 こっそりと解呪魔法を掛けて……っと。

 ほっ、ホブゴブリンに襲われる前に起き上がった。そのままメイドちゃんとホブゴブリンが殴り合う。


 いや、殴り合うってほどじゃないな。

 メイドちゃんの方が圧倒的に優勢だ。


 そういえば鎖がトゲトゲグローブに変わっている。あれはメイドちゃんの魔法なのかな。銀を操る魔法ってことか。


 ゴブリンシャーマンが再び睡眠魔法をかけようとするけど……その前に勇者ちゃんが短剣を投げてシャーマンを倒した!


 ほぼ同時期に煙となる二体。

 無事、ボス敵を倒したようだ。


 ………あ、そういえばこの奥ってアレなことになってたっけ。二人に見せる前に回収しとこう。


 そう思い、先んじて奥に進むとやはり苗床になっていた女冒険者や村人などがいた。全員に強度の回復魔法と状態異常回復を掛け、近くの村へと転移させる。


 これで大丈夫だろう。一応、メイドちゃんに通信魔法で知らせておこう。


『メイドちゃん、奥の人々は救っておいたからそのまま帰っていいよ』

『おや、助かります魔王様』

『どういたしまして』


 さて、転移で魔王城へと戻って、様子を伺おう。どうやら二人は冒険者ギルドに戻って報告しているようだね。


 たしか虚偽申告出来ない契約がされてるんだよな〜〜俺ならどうとでもできるけど。


 さっそく報酬で借金を返して……。

 ……この金貸し、勇者ちゃんを売り飛ばすつもりだったな。まぁ、金が戻ってきたのでその目論見も失敗したわけだけど。


 でも報酬はわずかしか残ってないね。

 今日のところは勇者ちゃんの家に戻って休むようだ。メイドちゃんも今日は実家に戻るとのこと。


 よし、村から離れたら帰還させてあげよう。ちょっと危うかったけどなんとか上手くいったな!



 

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