第3話「勇者、ゴブリンに負ける」

 さて翌日。アレからどうなったのかと勇者ちゃんを眺めていた。

 ちゃんと松明を買い、スライムを討伐できるようになったようだ。この世界の魔物は倒すと経験値と魔石が手に入る。魔石を売るとお金になるんだよな。俺も倒そうかな、魔物。


「まぁ、炎で倒せるのは序盤のブルースライムだけですけどね」


 メイドちゃんが水晶玉を覗き込んできて、そんなことを言う。

 仕方ないので一緒に水晶玉を見ることにした。


 とはいえスライムを倒した程度じゃ、大した金にはならない。勇者ちゃんは冒険者ギルドで魔石を換金したが不満のようだ。


 おっと? 依頼を受けに行ったぞ。

 一番簡単そうなゴブリン退治を選んだみたいだね。


「アレはまずいですね。ゴブリン退治は一見簡単なようで亜種が多く、初心者殺しにもなりうる危険な依頼です。一人で行くのは死にに行くようなモノですよ」

「それは大変だ。誰か仲間を集めるといいけど」


 ……と思ったけど、残念ながら一人で行ってしまった。

 ゴブリンの洞窟。その前には見張りがいるみたいだ。

 果たして見つからず、倒すことができるのだろうか。


 ああ! そのままボコリに行って、一匹逃げられた!

 洞窟の中、きっと警戒してるぞ……。


「心配だなぁ、俺ちょっとスタンバってくるよ」

「はい、いってらっしゃいませ」


 少し遠くの茂みに転移。体全体を透明化して……と。

 これで簡単にはバレまい。じゃあ勇者ちゃんの後を追おうっと。

 勇者ちゃんはズンズンと洞窟の奥に進んでいく。


 しかしあの大剣、洞窟内でも振り回せるのかな……?

 ああ、ダメ! 洞窟の天井に引っかかった!

 ああ! ゴブリンに囲まれてボコボコにされている!


 仕方ない……睡眠魔法!!

 これでゴブリンどもとついでに勇者ちゃんも眠ったぞ。


 さて勇者ちゃんを回収して……っと。

 転移! 以前来た教会に戻ってきたぞ。


 透明化を角以外解いて……っと。

 神官さんにご挨拶だ。


「ああ、これはこれは……銅貨ハゲの人」

「ハゲ!?」

「ええ、側頭部が二つ丸く禿げ上がってますよ」


 しまった! 

 ツノがあった部分には髪の毛がないんだ!

 そこまで気が回ってなかった!

 今度からは透明化じゃなくて変身魔法を使ったほうがいいな……。

 あれ、ちょっと面倒なんだけど仕方がない。


 神官さんにくすくすと笑われ、ちょっと恥ずかしく思いながらも勇者ちゃんを送り届け、今度は仲間を集めるようにと、洞窟用の装備をすべきと伝えてほしいと言っておいた。


 ついでにパン屋と惣菜屋で色々夕食を買っておいた。

 メイドちゃん、喜ぶといいなぁ〜。

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