第2話「魔王、夕食にする」

「お疲れ様です、魔王様。パンを買ってきてましたか」

「うん、幸いにもお金があったしね」

「今度から外に出るなら金銭を増やしておいたほうがいいかもしれませんね」


 転移門をくぐってきた俺をメイドさんが出迎えてくれた。

 耳と尻尾がピコピコしているので、おそらくお土産が嬉しいのだろう。

 俺はお土産を渡し、再び王座に座った。


「金銭を増やすってどうすればいいわけ?」

「城の宝物を売るのがいいかもしれませんね」

「まぁ、あったって何にも使えないしねぇ……」


 転移させてジャラジャラと蔵から金銀財宝を取り出す。

 結構便利だな、転移魔法。

 その一部をメイドさんに渡しておく。


「じゃあ明日にでも売ってきてくれないかい」

「了解しました。夕食はお食べになりますか?」


 う~~ん、俺はちょっとばかり迷う。

 別に食事しなくたって問題なく生きていけるんだが。

 でもたまには食事をしてもいいかもしれないな。


「そうだね、たまには食べようかな」

「珍しい。魔王様が食事をなさるなんて。久しぶりのお出かけで腹が減りましたか」

「別にそういうわけじゃないけど……」


 でも確かにちょっと魔法を使ったから、消費した分はあるかもしれない。

 まぁ、俺は生きてるだけで周囲の魔力を取り込んでいくんだけど。


「では準備してきます。なにか要望はございますか」

「いや、なんでもいいよ。あるやつで」

「それはまたつまらないことをおっしゃいますね」

「じゃあ肉で」

「肉!! 肉はいいですねぇ……。それでは近隣の魔物の肉にしましょうか」

「近隣の魔物か……」


 俺はちょっと嫌そうな顔をしそうになったけど、こらえた。

 本当はちゃんと売っている家畜とかの肉が良いんだけどね。


 魔物の肉は……癖があるし……。


 まぁ、そうも言っていられない。

 宝物を換金しなきゃ、ろくに買い物も出来ないんだから。


 さて、勇者ちゃんはどうなったのかなとしばらく水晶玉を眺めていたけれど、気絶した状態で教会で寝込んでいて特に変化はなかった。他の四本の聖剣は誰も抜かないままだし……いっそ、ちゃんとした国々とかに期待してみるかな?


 でも国々も押され気味で、正直勝てるかどうかわかんないんだよねぇ。

 我が魔王軍、優秀すぎるだろ。魔王の言うこと聞かないくせして。

 年貢とかちゃんと収めてほしいよ、まったく。


 のんびりと色々水晶玉で人間たちを眺めていると、メイドさんに呼ばれた。

 食堂に行くと、料理がポンと置かれていた。


 漫画みたいなでかい肉。あとパン。

 薄々思ってたけど、メイドさん。料理苦手だよなぁ、うん。


 だけど文句は言うまい。

 俺は骨付き肉の骨を掴んで豪快に食べた。

 味付けもなんか……味付けされてないな、これ。

 まぁいいや。腹一杯になれば何でも。


「どうです? お気に召しましたか?」


 メイドさんの尻尾がブンブンと揺れている。

 俺は無言で頷いて肉を食い漁るしかなかった。

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