4.ダンジョンとの戦い、組織との闘い

46話 越境、できないっ!


 入国出来なかった。

 まあ、時間外だと思いっきり城門閉じられただけなんだが。

 城門前で閉め出された場合、そこでテントを張って野宿OKらしいので門の脇にテントを張り、城門前で料理を作る事にした。

 俺らの他に数十名のキャラバン等が入れずに野宿との事。

 神官がいる事で安全性が増したと喜んでいたが…結界的な意味で?それとも物理的な意味で?


 いつも通りロティを作り、カレーを温める。

 匂いが周辺に立ち籠め、神官達もソワソワし始めている。

 それ以上にざわついているのが閉め出された人達と…城門の上の監視員。

 この香りからは逃げられまい。

 ロティはいつも以上に作っているので、もし求められても少しなら分ける事が可能だ。

「しかし、聖女すら閉め出す程例外を認めない規則なのか」

「ええ。例え王族であっても緊急であっても門は開けない規則です」

「それで国が滅びたら元も子もないんですけどねぇ…」

「まあ、今の時代はここが首都となっているだけなので。滅びたら別の都市が首都になるだけですよ」

 それで良いのか?

 国自体が曖昧な挙げ句世界にそう多くの国がないからなのか…

「まあ、昔は破れるものなら破ってみろと巫山戯た事を宣言していたらしく法国の行者が城門を粉砕して以降、規則なので破らないようお願いしますとマイルド表記になっています」

 ま た 法 国 か!

 世界中から危険視されている理由、こういう事だからじゃないのか?

 因みに、赤林檎をすりおろしてカレーに入れたのを見た神官達は静かに闘志を滾らせていた。

 ───この城門前での食事が法国の秘技で特殊な食事だという噂が翌日にはこの都市中に広まってしまったが、まあ些細な事だ。

 神官達の圧が凄かったのか誰一人として食べたいと言いに来る猛者はおらず、食事は終了。平穏な一時を過ごす事となった。

「説明を忘れていましたが、ここは商国のサヴェスという都市です。他者に規律を求め自身らは自由に規律を破るので基本武力が上位の都市です」

「その時点で国の敗北な気が…」

「一応法があり守るための武力があり、国として機能しており治安がある程度保たれている…ので国です。

 何よりもこの商国はそういったカタチだけまとまっている国家なので気にしない方が良いです」

 サラッと言うラナに微妙な顔をする俺。

「一応、8種王輪番制なのでそれぞれの種が不満を持っていても3年に一度種王が替わりますので不満を溜め込みすぎる事もありませんし」

 ?

「王制なのですか?」

「ええ。形ばかりの王制ですが」

「形ばかりではないですよ~?確かにちょっと特異ではありますが、王の権限は他国のそれに準じていますし、兵権と拒否権、商税半独占権、医療優先権、種族税の軽減などその時の王の権限は相応に強いですから~」

 アスハロアがラナの説明に待ったを掛けた。

 隣国だけに詳しいらしく、いくつか補足説明をしてくれた。

「兵権は兎も角、拒否権?」

「はい~。他の種王が提案したものに対しての拒否権です~。ただそれを連発した場合は他種5種王が連名で反逆権を行使し、その場合総代だった王は強制的に引き摺り降ろされますが」

 反逆権て…しかしなぁ。

「それって、気に食わない種がいた場合、5種王が結託して反逆権を行使するということは?」

「5種王反逆権行使の際は5種王の中で2種王が次回、もしくは9年間反逆権を使えなくなってしまいますのでそこまで大きな問題は無いかと思いますよ~」

 よくできているとは思うが、反逆権の行使で別の問題が引き起こされそうだな…

「そのペナルティーは自ら被る、もしくは被らされる事ができるのですか?」

「そんな事したら弱い種王が被らされちゃいますよ~?…ただ、それに近い事になってはいますけど~」

 やっぱりなっているんだな。

「どのみち商国は竜種が二大巨頭なので~」

「それらが裏でいいように操られていないという保証は?」

「んー…ないですねぇ。多少はあるかも知れませんが、ガチギレさせたらその国の種が滅びますよ~?」

 ああ、味方にしておくにしてもある程度頭が良くてプライドも高いから後が怖いという事か。

 頭脳明晰だった場合そんないい方はしないだろうし。

 多分大雑把なんだろうな…出会したくないな。

「そしてここで神子様へお伝えしなければならない事があります~」

 突然のお知らせ。これは嫌な予感しかしない。

「…まさかその竜種がトップだとか?」

「いえいえ~現在の種王総代は違いますから。私が言いたいのはですね~…竜種は食に貪欲なのですよ~」

 あっ、話の先が見えた…

「今回の香りで絶対にロックオンされますので気を付けてくださいね~」

「いざとなれば私が始末する」

 パールがドヤ顔で言う。

「あー…そうですね。信仰対象がぶん殴ってくるって言うのは何よりの警告になりますね~」

「ただ、前回行った時変な奴が居た。アレはいやだ」

「と言いますと?」

「殴って欲しいとか、罵って欲しいとか興奮しながら近付いてきた奴が居た。仲間に捕まっていたけど」

「「「……あー……」」」

 ラナ、アスハロア、俺は同時に声を上げた。

 ここにも居たんだな。そういった変人が。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る