40話 別班、本気の偵察を見せてやる


広場にテント一式を設営しのんびりと食事の準備を始める。

「念のため聖域展開してモンスターを近づけないようにしておきます~」

アスハロアが結界とは違った結界を広場に展開する。

「法国の人が来た際、入れなくなるという事は?」

「あちらにも聖者と聖女がいますので問題ありませんよ~それにこの聖域はこちらに危害を加えようとするモノを弾く結界なので基本問題はありませんので~」

結界亜種か?それとも自領域?…分からん。


暫くしてボロボロだが元気に法国部隊が帰ってきた。

「ただ今帰還しました!」

「偵察の序でにダンジョン内も少し入ったが、大扉が邪魔でその奥までは行ってはいない」

「いやそれ最奥ですからぁぁぁッ!」

「「えっ?」」

あかん…この法国聖女2人、完全に脳筋軍人だ…

「それで、目当てのモノは手に入れる事ができましたか?」

「それはもう!6つほど!他にも色々ありますが…」

「では2つこちらで買い取ります」

俺はそう言って神金貨を取り出そうと…

「神子様、皇法国より先の様々な件における謝罪、報奨金がございますのでそちらから支払わせていただきます」

皇法国の雑務神官がスッと神金貨10枚を差し出してきた。

「神子様用にと一つは確保してありますが?」

そう言いながらも俺に”解毒の極み”を3つ渡してきた。

「弟たちの分と思いまして」

もし再び会えるのなら、だけど。

とりあえず2つはストレージにしまい、1つを口に含む。

口に含んだ瞬間に霧散し、体内で白金達の力が強まった。

「───成る程。体内の全属性強化と防衛用予備エネルギーバックパック拡張ということか。外は兎も角、ダンジョン内や力の妨害が発生したときにはありがたいな」

なかなかどうして凄いモノじゃないか。

俺は納得し、顔を上げると───全員がこっちを見ていた。

「どうかしましたか?」

「いえ、あの…今のは解毒の極みの感想?解説でしょうか」

「自身の中に出ている影響を口にしただけですよ」

「ちょっと細かな説明をお願いしたいのですがっ!?」

ああ、ルイが超反応している…

「こちらの状況からの推測ですが、体表や関係する全面に薄い膜を張り、人体に対するダメージ等を弾いたり、到達する時間を一瞬でも遅くしてその間に体内の3素が判断・回復及び解毒等解除作業を行います」

「……確かに。言われてみれば」

「回復や解毒の時と同じだったが…そうか、そういう事だったのか!」

「しかし体内の全属性強化は魅力的すぎる」

「もう一周して、全員分を確保する…と言うのは?」

「良いですねぇ…神子様にもう一つ追加したときの感想も伺いたいですし」

「では、行きますかぁ!」

嘘だろ此奴ら…本気で2週目行くつもりだよ。

俺と雑務神官以外全員が遺跡ダンジョンへと行ってしまった。



戻って来たのは翌日の夜明け前だった。

皆がやりきった顔をしており、どうしたのかと聞くと…40個は集めたという。

レアという話はどこへ行った?

そう思ったが、複数グループが数時間掛けて得られたと考えれば…いややっぱりおかしいぞ?

あまり現れない敵のレアドロップ品だったはずだ。

「出現乱数を調整すれば容易いという事が分かっただけでも意味がありました~」

何の話をしているんだ?

「では皆さんどうぞ~私達は…ちょっと寝かせてください。起きてから服用します」

色々限界なんだな…ただ疲れ切っているのは皇法国メンバーであり、法国メンバーは試したそうな顔をしている。

「待つ必要は無いのでは?」

そう言うと法国メンバーは全員同時に服用した。

「…確かに、意識を集中していると薄い膜が張られているような感覚があります」

「違和感も一切ありませんね…凄いです」

「これを技術で応用出来ないか?ランクは落ちると思うができそうな気がするんだ」

それぞれワイワイ話し合っているが…寝ている奴等の側でそれは…

「少し寝かせて貰っても良いですかぁ~?」

ほら、アスハロアが半ギレ声してるぞ…

「神子様、どうぞ!」

ああ、興奮しすぎて周り見えてないパターンか?

「ルイ…まずは皆を静かにして欲しい。皇法国のメンバーが可哀相だ」

「あっ…」

今気付いたぞ…

とりあえず2個目を服用してみる。

どうやら追加で作用するようだ。

更に力が増した気がする。

「どうですか?」

「力が更に追加されたようですね」

「っし!…法国メンバーの半数はもう一度行くぞ!」

いや、マジで行くのか…



3時間後、食事を作り終え全員が起きた頃に法国のおかわり部隊が戻って来た。

「追加で8個収穫しました!」

「此奴らマジか…」

「こんな簡単に…?」

ドヤ顔のタチカに皇法国メンバーはどん引きだった。

恐らくだが、毒無効と言う事で聖女・護衛官組は1人で、武装神官は2人一組で散らばって捜したんだろうなぁ…

最大の問題だった毒は問題無いわけだからあとは狼に気を付ければ良いわけだし。

「1人2つ食べればかなり強化される事が分かったので是非!」

是非じゃないだろ…

「それは食後にお願いします」

とりあえず朝食を食べてからにしてくれ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る