36話 出撃、本気を出した結果が酷すぎた


 翌日、昨日と同じ部隊構成でダンジョンへと入る。

 今日は中で1泊~2泊する覚悟でダンジョンへと臨んだ。が、

「…居ませんね、モンスター」

 突入して1時間。初めに数十体出て来ただけで以降モンスターの姿は無い。

「神子様?」

「…ダンジョンによって、モンスターに特徴があるんでしょうか」

「ええっと、あると言えばあります。大陸差が一番分かりやすいですが…」

 モンスターを出し尽くしたか、余力全てで最深部を固めているのかそれとも…

「ダンジョンが崩壊した場合、モンスターはどうなりますか?」

「基本崩壊に巻き込まれますが…階層跨ぎは出ることもあるらしいです。ただ、それは女神の結界が機能していれば外界に出られず消滅します」

 …おかしい。

 だったらどうしてアレは女神の結界を抜け出せた?

 取り憑いていた?そもそも何を基準に女神の結界は敵を外に出さないようにしているんだ?

「…すみません、考察は1度保留にします。このダンジョンを踏破してから改めて考えます」

 1度思考を戻し、目の前のことに注力することにする。


「……まさか、7時間で踏破出来るなんて…」

「踏破2日という情報はなんだったんだ…」

 いやそれはモンスター込みであって警戒して歩きながら、かつ早めに休んだときの日数でしょうが。

 俺ら普通に走ってきたぞ?

 その道中でも出遭ったモンスターは二桁。

 これ、絶対ダンジョン側想定外だったろうなぁ…

 目の前の壁には巨大なクリスタルが埋め込まれている。

「これが、ダンジョンのコアですか」

「はい。コアの形は様々で人の形をしている場合もありますが…今回はクリスタルのようですね」

調

 アスハロアがそう宣言すると皇法国武装神官達がそのクリスタルに駆け寄り、何やら調べる素振りをし…クリスタルを全力で砕いた。

「!?」

 えっ!?調査って…

 直後、ダンジョンが震動をはじめる。

「全員全力で脱出を!」

 そう叫び一斉に撤退を始めた。

 いや壊しておいて何事!?

 確かに踏破予定だったけど…アレはコードとかか?

 より一層速度を上げ走っていたが、パールに抱き上げられ一気に加速された。

「この規模のダンジョンが崩れるまでは4時間。その早さだと足りない」

「行きよりもだいぶ短い!?」

「多分踏破した者を始末するのも目的」

 でしょうねぇ!ここまで殺意高いとそうとしか考えられないぞ!

 その後およそ3時間半でなんとかダンジョンから脱出し、消滅の様を見届けた。


「階層消滅式のダンジョンが主流なんですか?」

「どうですかねぇ…私が経験したのはボロボロと中心から崩れ落ちていくタイプばかりでしたので」

 どうやら崩壊にもタイプがあるらしい。

 そしてあのコアについては…破壊しようと近付けば攻撃を仕掛けてくるらしい。なので周辺の調査をしつつコア破壊がパターンとしてあるらしく、他にも「索敵」「捕獲」「実験開始」などのキーワードがあるとのこと。

「それもそろそろ通用しなさそうですけどね~先程のコアは気付いて光線を出そうとしていましたし」

 物騒だった。とんでもなく物騒だった。

「予定の半分程度で踏破したわけですが…事前調査をあわせれば予定通りですね」

「であれば皇法国内の別のダンジョンへ向かいますか?」

 雑務神官から提案が出た。

「少し戻る…と言うよりもこの森を更に1日進んだ所に少し特殊なダンジョンがあります」

「遺跡融合型ダンジョンです~」

「遺跡融合型…」

 名前の通りなんだろうが、どんな風に特殊なのだろうか。

 聞いてみたら、結構とんでもなかった。

 動く金属騎士やら石造りの獣やら…トドメがこのダンジョンには無かったトラップの数々があるらしい。

「元が滅びた部族長の墳墓でしたので…対処し辛いモンスターやトラップがあるのですよ~」

 なるほど、そこが「あるといえばある」といった例外のダンジョンなのか。

「では明日我々が商国へ物資調達に向かい、午後から出れば…中間野営地へは到着可能です」

 雑務神官がそう言いながら何故かこちらへとやってきた。

「それで神子様、何を多めに買っておきましょうか」

 こやつ…

 とりあえずワインと水、そして穀物類と調理器具をお願いした。

 調味料は大丈夫。あと、女神様分は女神様に出させる。

 簡単な打ち合わせを終え、その日は撤収準備をせずに寝ることにした。


 深夜、剣戟音がした。

「っげぇっ!神官の部隊じゃねーか!」

「我等皇法国及び法国の調査団に挑むとはイイ度胸だ…ヤレ」

 夜番の武装神官3人とラナが相手を殲滅していた。

「神子様、お目覚めで「それは良いから、此奴ら夜盗ではないみたいだから徹底的に調べて」…なんと?」

 ラナの反応が変わった。

「パール、逃げた奴を捕獲お願い」

「承知」

 パールが姿を消す。

「神子様、どういう事ですか?」

「ちょうど死角で見えなかったと思うけど、相手の一人がダンジョンのあった所を見ながら後ろにハンドサインを送っていたから」

「成る程。21名に逃げていった1名…尋問のしがいがあるな。神子様、情報提供ありがとうございました」

 そう言ってお礼を言うラナだが、あれは半分分かっていたな?

 分かっていてわざと口上を述べていたっぽい。

 朝になったら聞いてみよう。


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