15話 出立、どうやら諸国漫遊の旅になりそうな?


「視察団の準備が整いました」

 夕食の席で神官長がそう言ってきた。

「今回の視察の目的は世界にある41のダンジョンを確認して回るという名目になっております」

 41?えっ?ダンジョンの数少なすぎないか?

 そのことを聞くと、数年前までは200以上あったらしいが、大型魔獣らが入り口に頭を突っ込んでブレスを放ったり天変地異を起こす竜が数日間雨を降らせまくって川を氾濫させて水没させたりしたらしい。

 …人よりも大味なやり方ながら、致命傷与えすぎて笑える。

 どうやら大きなダンジョン等はそういった感じで殲滅され、現在は41程度残っているとのことだった。

 …結構数駆逐済みじゃないか。

 これ、俺を召喚した意味あるのか?と、そう思わんでもない

 厄介なのはこのダンジョンにメリットを感じている一部の人間がいるために完全殲滅出来ないのだとか。

「問答無用で突撃して自爆を行うという手もありますが、神よりそれは禁止とのお達しが出ておりまして」

 ああ、やっぱり考えたんだな…神側もダンジョンに対処されたくないから許可出来ないんだろうな…

「そして神子様の護衛団として選りすぐりの人材をご用意致しました」

 そう言われ法国、皇法国よりそれぞれ人員が紹介されていく。

 ただ、合計19名って多いのか少ないのか分からない。

 打ち分け的には以下の通り。


 法国より

 聖女2名、聖者1名、護衛官2名、武装神官4名、雑務神官3名


 皇法国より

 聖女1名、聖者1名、武装神官3名、雑務神官2名


 報奨金の時に話が出たように法国は聖女含め人員を増やしたようだけど…護衛官?

「法国護衛官…本当に全力ですね」

 神官長の顔が引きつっている。

「あの後連絡が入りまして…神子様の安全を守るためと報奨金で足りない分の補填にと。更に言えば聖女や聖者に次ぐ地位と力を持つ護衛官を派遣するのは当然のことかと思います」

 聖室長はそんな事を言っているが、いや、そもそもそれぞれの役職的なことを知らないから何とも言えないのだが…ただ、話の中で聖女や聖者に次ぐ地位と力って言っている以上内外で確固たる地位と実績を備えているという事だ。

 ……そのはずなんだが、全員若いな。

 若く見えるだけの可能性もあるが、全員美男美女で訓練場にいるような悪人面とか居ないんだが。

 と、その事を伝えると神官長方は神妙な顔で「「協力者には慈愛を。敵対者には鉄槌をと言うのが我々の教義なので」」と一言一句違わず言ってのけた。

 成る程敵対者に差し向けられるのがあの神官達と…いや、絶対此奴らもうまく猫被っているだけで実際は同じなんだろうな…護衛官以外。

 いや、護衛官は服もそうだが軍人みたいな感じだ。

 2人とも女性だが、その佇まいはまさに軍人。

「護衛官を派遣してもらうのにひと月神金貨5枚と聞きましたが…」

「傭兵団を雇うよりも安上がりですから好評ですよ。正確には護衛官1人と武装神官2名のセットですが」

 まあ、障壁ぶん殴って集団制圧を普通にしたり防衛戦に慣れているのであれば下手な傭兵よりは需要はあるか…しかも宗教国が派遣するわけだから裏切る可能性はほぼ無いときた。

 ……いや完全に軍事国家だろこれ。


 翌日早朝、出立の準備が整ったとのことだったのでカバンを手に聖堂へと向かう。

 そこには神官長と聖室長が立っていた。

「神子様にまず向かっていただくのは皇法国です。そこから商国へと向かっていただきます。この島から皇法国の港までは半日。その後走鳥車で2日の場所にある皇法国南部のダンジョン経由で商国へ…というルートを予定しております。皇法国から商国までは合計5日の日程です」

 聖室長がそこまで言うと神官長が話を引き継ぐ。

「皇法国にあるダンジョン数は3つ。こちらはダンジョンの性質等の研究のために残しているに過ぎませんので今回の旅で全て破棄いたします。

 商国には12あると報告が入っていますが、隠されている可能性もあるので滞在予定期間は10~15日を予定しております。

 尚、一行とは別に皇法国でダンジョンを殲滅させるため第2神殿騎士団40名の遠征許可をご安心ください。

 神のご指示の元、相手が何と言っても今回でダンジョンを殲滅いたします」

 神官長、目が怖いですよ…いやホントに。

 あと実はこのお婆さん、皇法国のトップと同等の力持ってないか?

 そう思わずには居られなかった。


 案内されて船着き場へと向かうとそこには地球の中型船クルーザーのような船が停泊していた。

「中型武装艦で足回りと安全性を重視した船をご用意いたしました。この船であれば通常半日の船旅が4時間ほどに短縮されます」

 三分の一に短縮ってどういう事だ?

 俺が首をひねっていると神官長が理解したように頷くと説明してくれた。

「海域は中型から大型のモンスターがおりますので大型船や通常の船は細心の注意を払いつつできる限り波を立てずに進む必要があるのでどうしても時間が掛かってしまうのです。

 しかしこの船だと船に結界壁を張りつつ進むというのもあり、大型モンスターの襲撃があっても撃退もしくは逃走可能となっております」

「ああ、ちょうど沖の方をご覧になっていただければ分かるかと」

 聖室長の声に従って沖を見る。

 沖…かなり離れた場所にそれらは居た。

 触腕だけでも10メートルは超えるダイオウイカ?と全長5メートルを超えるハト?の群が大乱闘していた。

「中型魚賊ゲスと渡り鴿はととの喧嘩ですが、珍しいですね。まあ、触腕が辺りに飛び散っている間に急いで出港した方が良いでしょうね」

 海が魔境過ぎる件について。

 あと、あのダイオウイカ中型なのか。しかも名前ゲスって…

 不安を覚えながらも船に乗り込み、島を出ることになった。


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