2.未知すぎる道中と初めての国
16話 観察、うみのいきもの。そのしゅうへんのいきもの
時間も結構あるので海やその周辺の生き物について聞いてみたところ、かなりロクデモナイ事が分かった。
あのイカの事を船員に聞いたら、
「ああ、アレはダイオウイカではなくゲス。中型のイカだよ。ダイオウイカってのはエルゲスの別名だろ?」
との事。
詳しく聞くと、イカと言ってはいるが違うモノらしい。
小型のものは触腕が6メートルまでのもので触腕を除いた全長が3~4メートルくらい。名称は
中型のものはさっき見た奴で触腕が10~14メートルほどで触腕を除いた全長は7~8メートルはあるらしい。名称は
そして大型のものは触腕が20メートルほどあり、触腕を除いた全長は12~13メートルはあるらしい。あと触腕が4つあるとのこと。名称は
……翻訳よ。後は任せた。
あと、あのハトについても聞いてみたところ、奴等もとんでもなかった。
海の厄介者の一種で3種セットで飛んでいるらしい。3羽ではなく3種。
もうこの時点で聞きたくなくなった。
キジバトと聞こえているのに脳内でオニエサって漢字が浮かぶ恐怖。
鬼餌鴿とは獰猛な肉食。中型モンスターのオーガをよく襲って喰らうらしい。
煽鴿はただ対象と他の種のハトを煽って戦闘を起こさせ、おこぼれを狙う。
殻吸鴿は岩鉱蛇という硬い蛇の卵の殻をくちばしで割って中を吸うために付いた名だが、コイツが一番危険らしい。雑食で金属も食べる超絶悪食とのこと。
───もう、この時点でお腹いっぱいだった。
が、身を守るためには知識が必要で、一応聞いておかないといけない。
「相手から襲いかかってくるような奴は他に居ませんか?」
そう聞いたら「そりゃあ一杯居るさ」と普通に返された。
「今の時期は、ガツだろうなぁ…成魚が群で来た日には結界壁どころか船体に穴が開いて沈んじまう!」
「ガツ、ですか?」
聞くと細長い魚で、顎から先が長く尖っているそうだ。
「ダツではなく、ガツ…」
「ダツ?地域差かな、稚魚のことだろ?ダーツって」
えっ?
「こっち目掛けて一直線に飛んできて突き刺さるんだよなぁ…ダーツは。それが成魚になると回転が加わってくるせいで結界壁すら貫通する奴が出てくるんだよなぁ」
船員はため息を吐く。
「身もそんなに美味くねぇのに土手っ腹に穴開けられた日には…」
それは船に?それとも体に?…とは流石に聞かなかった。
どっちもと答えられたらなんも言えん。
「神子様、こちらでしたか」
護衛官の一人、ラナがやってきた。
どうやら俺を捜し回っていたらしい。
「お手を煩わせてしまい申し訳ありません。この海上に出る危険なモンスターについて聞いていました」
「危険なモンスター…海鳴り婆等ですか?」
「いえ、それは聞いていませんね…どのようなモンスターなんですか?」
「髪を振り乱した老婆の姿をしたモンスターで海上を走りながら移動し、動く物全てを襲います」
山姥の海バージョンか?
「もし身動き1つせずジッとしていても「今目が動いた」「今絶対に髪が動いた」「心臓動いてるから駄目」などと何をどうやっても難癖を付けてきて襲いかかってくるので全力で逃げるか、倒しましょう」
ただの海賊小姑だった…
「ただ、手に持っている包丁は水竜の鱗をも斬り裂く代物で、技量も相当なので惹き付けての自爆攻撃かガツの群れにぶち当たる事を願うくらいです」
「絶望しかなかった」
ただの海賊小姑どころの話ではなかったぞ?
と、鐘の音が響いた。
「ガツの群れだ!結構な規模だ!」
「ぅおい!?ガツの群れを海鳴り婆が追いかけているぞ!」
「「………」」
これ、詰んでませんかね?
こちらに向かってくる何百もの魚の群。
そしてそれを追いかけるように海の上を走るお婆さん。
あ、チラッとこっち見た。
とりあえず会釈しておこう。
「!?」
なんか、お婆さん驚いた顔して…いや無茶苦茶近所のお婆さんスマイルしてるぞ?
「神官方も結界壁重ねてくれ!ガツの群れに海鳴り婆だ!確実に消耗戦だぞ!?」
背後では阿鼻叫喚だが、俺とラナは確信した。
「…神子様。海鳴り婆と面識でも?」
「ないですよ。ただ、あちらに攻撃の意思がなかったようなので普通に挨拶しただけです」
「……もしかすると我々は誤解していた?」
「かも知れませんね。無視をするか敵対行動。これがトリガーの可能性が高いかと思います」
そんな話をしている中、ガツの群の後ろをもの凄い速さで斬り進んでいく海鳴り婆をみて慌てている船員達。
「護衛官ラナ・ルシルが宣言する。今回の海鳴り婆は敵ではない!彼女に対する一切の敵対行動を禁じる!繰り返す!彼女に対する一切の敵対行動を禁じる!防衛だけに専念するように!」
大音声と共にそう言うと船員達は一瞬こちらを見たが、護衛官という役職名の権威故か文句を言わずに障壁展開のみに集中していた。
数分後、ガツはすべて海鳴り婆に斬り裂かれ消えて無くなり、お婆さんは…俺の頭を撫でて去っていった。
「挨拶出来て偉いねぇ」
そう言っていた。
───あれだな。昔ながらの雷爺さんならぬ雷婆さん。
本来守り神ポジションなんじゃないか?あのお婆さん…
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