05話 鑑定、しかし内容に不満あり


「…ふむ」

 黒紫の球体と白金の球体を交互に見る。

 どうやら微妙に反発しているようであまり近づけることが出来ない。

 今ここにあるものを更に凝縮したらどうなるのだろうか。固体化するのか?

 いや、ちょっと待て。これ、表面に薄らと気を纏っている?

 基本単体では外界で存在しきれない?

 試しに二つともそれぞれ握り込んでみる。

 と、それらは体内に格納され、手の内に入った状態で待機している。

「うわ、違和感が凄いな」

 そうとしか言いようがない。

 痛みは全くないが、掌の皮一枚下に異物感がある。

 しかもそれは回転しているのだ。

「神子様?大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません」

 立ち上がり礼を言う。

「いえ、それよりもさっきのものは…」

「大気中にあるものですのでお気になさらず」

「いえあの…片方からは我々のよく知る気配を感じたので」

「よく知る、ですか?」

「はい。儀式法を行った際に必ずある気配で、我々は奇跡の残り香と呼んでいます」

「それは白金の方ですか?」

「はい。あの白く光る物の方です」

 術を使った際の余剰分が大気中に漂っている感じか?

 いや、呼吸をして取り込んで出た2つは同じ量。と言うことは常に大気中には一定数しかない?

 こんなに儀式法を使いまくっている場所で?

 いや待て、前提条件が間違っているんじゃないか?

 一つ一つをエネルギーの粒と認識しているが、もしかしてこの粒一つ一つが生命体でありそれらが力を貸し与えているのだとすれば?

 これは少し確認する必要がありそうだ。

「分からない事が増えました。学びの時間が必要ですね」

「今の光るものに関しては私達も分かりませんが…」

「その事だけでは無く、儀式法、自然法、魔技法についての違いなどです」

「「……」」

 神官長方に「うわ、神子様小難しいこと考えるなぁ」って思われてる…

「関係を知ることでもしかすると面白いことが分かるかも知れません」

「面白いこと、ですか?」

「ええ。確信が持てない状態なのでまだ話せませんが…ああ、もしかすると後ほど行うステータスの確認でその理屈の一端が分かるかも知れません」

 俺がそう言うと神官長方は顔を見合わせた。



 朝食を終え学習の時間の前に俺のステータスを調べることになった。

 宿坊を抜け礼拝堂も通り過ぎ、そこに到着する。

 それは質素ではあるが外敵から守るための工夫が施された建物で、恐らくここが最後の砦なのだろうと直感的に思わせた。

 神殿騎士が2人掛かりで扉を開け、中に入ると5~60人程度が入れる程度の広さがあり、前に祭壇があった。

「あれが、神授玉ですか」

 祭壇には直径40センチ程の白金色をしたオーブが浮かび上がっていた。

「そんな…起動している!?」

「起動には3人の神官が必要なのにどうして」

 あー…うん。ごめんなさい。多分俺の手の内にいる白金のせいです(責任転嫁)。

 絶対とは言わない。言ったら俺が悪いのが確定するから(推定自白)。

 俺は真っ直ぐ祭壇へと向かう。

「これはどこかに手を当てるとかでしょうか」

 神官長方はハッとした表情で慌ててこちらへ駆け寄ってきた。

「その石板に手を置いて戴ければ神授玉が神子様の現在の状態を表示致します」

 石板というか、水晶板に手を置こうとして僅かに躊躇う。

 ───手の内にあれらがあるんだけど、問題無いのか?

 逡巡したがまあ、その時はその時という事で両手を水晶板に置いた。

 と、神授玉が3画面モニターに変化した。


【岩崎結羽人】 年齢:12歳(神前自己申告)出生地:地球・日本(神前自己申告)

 運命力:529/580(200)  生命値:77/130(340)(現在体内調整中)

 筋力:42(160)  敏捷:61(120)  精神力:180(120)

 気力:177(60)  神性:100(60)  魔技:100(60)


 ※( )内はこの世界の平均値


 称号

 神子(ダンジョン対応者)  看破せし者  神に年齢を疑われた者

 境界を越えし者(適応力増)  武神の素養(生命値に左右されない)

 弟妹溺愛者  求道者(スキル獲得に+補正) 適応能力(極)


 スキル

 精神統一(全属性増強)  気功(概念不明。現在確認中)

 香椎合戦組討術・我流体術(敏捷・筋力に+補正。他)


 備考

 上からのお達しがあったら問答無用で神域ここに戻すからね!


 うーん。俺のステータス低すぎ…とまではいかないか。

 あと、こんな重要なステータス鑑定で私信を入れないで欲しいんですがね?

 ふと反応が気になり振り返る。

 半数が唖然としており、半数が祈っていた。

「…ナニカ、問題がありましたでしょうか」

「神子様はやはり神から指令を受けてこられたのですね」

 神官長がそう言い、膝を突く。

 それに合わせて聖室長も同じように膝を突いた。

「改めて我等皇法国法国は神子様に全面協力を致します」

「あっ、はい。ご協力感謝致します」

 神官長方はそんな感じなんだけど、後ろに控えている方々が「あれでは瀕死の状態では…どうして動けるの!?」等深刻な話をしているのがもの凄く気になるんだが?

 アレか?生命値77はそこまで危ない状態なのか?

 ───この温度差、何とかしてくれ…

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