02話 学習(物理)、そして実戦?


 神職・聖職者とは(哲学)

 脳筋だった。思っていた以上に脳筋だった。

 あと、死んでも蘇生魔法があるからってかなり蛮族だった。

 ナニコレメンタル強すぎませんか?


 目の前の結界の張られた一辺が10メートルくらいの正方形の訓練場で二人の聖女が戦っている。

 互いに中心から三歩下がって一礼し、素手での闘いが始まった。

 拳が互いに到達するまで1秒掛かっていない。

 予想以上に蛮族。

 いや、技術はあるようだけどね?それを覆す力がある以上容赦しない感じ?

 殴る音がね、サンドバッグをバットでフルスイングしている感じの音だったり、グジャって音がしたり…

 しかもこの人達聖女らしいんですよ。

 闘いながら自身を回復したり強化しながら戦っているんです。

 服はとっくにボロボロで、ちょっと目の毒…うん。スプラッタな意味も含めて。

「彼女達は先月お勤めの為にこの島に渡ってきた訓練生です。ですのでそこまで力の制御が出来ておらず一撃で倒せないのです」

「敵と分かれば殺して捕縛後に蘇らせるようにと教えているのですが、どうも甘さがでますね」

 申し訳なさそうに言う皇法国の神官長のお婆さんと険しい顔で物騒なことを言う法国の聖室長(神官長)のお姉さん。

「その蘇生術は何度でも可能なのですか?」

「完全に爆発四散した場合は無理ですが、コアが無事であれば神の慈悲で復活は可能です。

 ただ、生命値が極端に低い方や運命力が尽きている方へ蘇生術を行っても復活はしませんね」

「貴方様の場合は…残念ながら蘇生は…」

 お二方が「ううっ」と悲しげな顔をする。

「始めからないものとして行動すればいいだけなのでお気になさらず」

 あっ、片方が耳辺りを殴ってスプラッタな状態に…完全に試合終了ですね?

 ……これで試合続行って言われたら俺が辛いわ。ガチで事件現場だぞ?



 で、現在訓練場にお邪魔しております。

「よっ、よろしくお願いします!聖女イクティスがお相手致します!」

 ガッチガチに緊張した新人聖女?が俺のお試し戦闘相手となった。

「よろしくお願いします。まずは俺の周辺ブロック一マス分位の距離で攻撃を止めて貰っても?」

「えっ?あ、分かりました!」

 イクティスさんはそう言って殴りかかってきた。

 超高速の動きだ。圧も凄い。

 これ、即死レベルの殺気と攻撃速度だなぁ…

 ステップを刻みながらイクティスさんが次々と攻撃を繰り出す。

 蹴りは主体ではない?…いや、多分一撃必殺か膝下への攻撃に使うんだろうな…足が一瞬不自然に止まったりつま先が別を向いたりしている。

 数分間やってもらって少しずつだが見えるようになってきた。

「フェイントを混ぜてもらっても良いですか?」

「えっ?フェイント?」

 動きが止まり、不思議そうな顔をされた。

 ……避けることはあっても、フェイントはなかったが、まさか…いや、流石に牽制はあるだろ。

「相手を牽制する動きは?」

「えっ?そんな事をしたらその腕一瞬で破壊されますよ!?」

 ありはするけど廃れた技術の可能性が高い?



 とりあえず口頭と身振り手振りで簡単に説明し、続いて軽く実践をお願いする。

「例えば左から少し弱めの攻撃が来た時は?」

「その左を外から潰すように攻撃します!そうすれば相手の二段目の攻撃を受けることなくまとめて潰せますから!」

「では軽めにそれを実践してみてください」

「ぅえ!?」

 俺の台詞にイクティスさんは変な声を上げて俺を見、各神官長を見る。

「流石にそれは危険ですよ?」

「もし回復術すら無理だったらどうするのですか!?」

 慌てる神官長達に「軽めに」と言ったんだけどなぁと思いつつも再度説明をする。

「ああ、いえ。そんな潰す速度でやって欲しいというわけではないのですが。軽くですよ?」

「……イクティス。軽く、ですよ。くれぐれも、くれぐれも!」

「はっ、はいいいぃぃ!」

 超強力な殺気という釘刺しをされ、イクティスは半泣きになりながら構える。

「では行きますね」

 俺が左で早めのジャブを打つように攻撃を仕掛ける。

 すると瞬時に戦闘モードとなったイクティスさんは俺の肘目掛けて…と言うよりも肘を撃ち抜きそのまま顔面を捉えるような軌道で拳を向けてきた。

 いや、確実に壊して殺す気ですよね?その速度は。

 そんな事を思いながらも左の腕を瞬時に脱力させ相手の打点からずらす。

「!?」

 直前で腕が消えたように見えたのか慌てるイクティスだが、その時点ではもう遅い。俺の左手は彼女の突き出した右腕を取っており───

 ドシャッ

「───え、っ?」

「短剣などがあれば引き倒すと同時に頸を切って終わりです」

 合戦組み討ち術の法が有効なんて物騒な世界…まあ、合気の理もあるけど。

 済まない香椎の爺様。他家なのに勝手にそちらの家伝武術を使っています…

「イクティス?」

「っはい!えっ?あの、何が何だか分かりません!」

「左腕が僅かに肘から下に落ちたかと思ったら…神子様がクルリと回って…ぇえ?」

 あれ?もしかしてこのスピードでもいける?

 俺、まだ完全には見切れていないし慣れていないんだが?


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