虚空

 頭を上げる

 ただ前を見るのではない

 首を限界にまで伸ばして、見上げる

 頭上にただ存在する空は、婉曲していて、そこに何の限界もない

 空はただ高く、高く

 世界を飲み込むよう

 想像してみて

 自分の場所からさらに上へ

 「私」が遠くなって、向こうのビルの頭が見えて、何もかもが小さく小さく

 雲すら下に見えて、さらに上へ地球の丸さが見えて

 その地球すら小さくなって

 私はゴマ粒ほどすら見えやしない

 なんと小さな、ちっぽけな世界に生きているのか

 仕事も、生活も、就活も、愛すらも

 すべてが小さく、どこに立っているのかも分からない

 自分という存在が、溶けていくのを感じる

 虚しさがしのびよる

 それは快感で

 だから恐ろしい

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雑多まとめ @rei_urara

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